「もうアラサーなんで」、「私なんて…」普段何げなく、謙遜しすぎたり、自虐的なフレーズを口にしていませんか?言葉選びを少し変えるだけで、気持ちも生活ももっとポジティブに幸せになれるはず。CLASSY.世代の自己肯定感を高める言葉について、「子どもが幸せになることば」の著者、田中茂樹先生にお聞きしました。
case❶「彼氏いないの?理想が高いんでしょ」に対して
話の流れで彼氏いないんです、と言った時に「きっと理想が高いんでしょ~」などと言われることが多く、「いやいや!もうもらってくれるなら誰でもいいです!」と返してしまいます。
K.Nさん(36歳・教育関連勤務)
理想があるのはいいこと。それをまずは自覚しよう
あまりにその思いが強いからこそ、その逆を言ってしまう「反動形成」という心理学の用語があります。すごく気に入っているからこそ嫌っているように振る舞ってしまう。例えば、小さい男の子が好きな女の子にわざと意地悪してしまったりする行為もそう。「理想が高そう」という相手の言葉を真っ向から否定するということは、それだけ自分の中でパートナーに求める理想が高い、ということを認めましょう。そもそも理想が高いことはいいことであるはず。特に結婚相手ともなると、誰でもいい、というわけにはいかないでしょう。これから末長く一緒に暮らしていくパートナーに対しての理想は自分の中で色々あって当然だと思います。一般的に言われる収入の高さや学歴、現在の仕事などそういったスペック的なものだけではなく、ものの考え方や価値観、心地いいと思うことなど、理想と一口に言ってもその内容は人によって様々で、それぞれにここだけは!という譲れないポイントがあるはず。理想はあることを認めつつ、なかなか難しいという現実をやんわり共有する。自分の気持ちをフラットに、素直に言葉にしてみるといいでしょう。
case❷インスタ投稿「可愛い!」に対して
インスタを見てくれている友達が、この写真可愛いねなど褒めてくれたとき、ついアプリのおかげにして謙遜してしまいます。M.Rさん(29歳・マスコミ勤務)
自虐は、返された相手も困っているかも
海外だと、褒められることは日常的なこと。例えば面と向かって「可愛いね」や「素敵!」といった褒め言葉をかけられても「Thank you」や「You,too」など自然に受け入れられてその返しもとてもスマートです。それに対して、日本人は褒められることに慣れていない。「アプリのおかげです」と言われても、オチのつかないボケと同じで相手もどう返すのがベストかわからず、コミュニケーション自体がよくわからない不思議な感じで終わってしまいます。奥ゆかしい、控えめであることが美徳とされてきた時代があって、それは一つの日本文化ではあるけれど、謙遜しすぎることも問題。だからといって真正面から「ありがとう」と返すのはちょっと…、ならここは関西のノリで返すのもあり。「みんなそういうねん!」だと、相手もそれにツッコミやすく、会話も楽しいものに発展しそうです。褒められて「アプリのおかげ」と返してしまうことにモヤモヤするということは、謙遜することが当たり前ということを疑問に思う、違和感を持ち始めているということ。ちょうど社会的な価値観が変わってきている世代、過渡期の世代なのかもしれませんね。
田中茂樹さん
医師・臨床心理士・文学博士(心理学)。京都大学医学部卒業。共働きで4人の男の子を育てる父親。現在、奈良市の佐保川診療所でプライマリケ ア医として地域医療に従事。これまで5000件以上の面接を通して悩める人の心に寄り添ってきた。著書『子どもが幸せになることば』(ダイヤモンド社)は現在6刷の大ヒット、韓国でも月間売り上げランキング1位など国境を超えて支持されている。
イラスト/ほりゆりこ 取材・文/北山えいみ