CLASSY.ONLINEでも大好評のBL企画。ついにジャニーズのグループメンバーどうしがBL作品に⁉とファンを騒然とさせたのがKis-My-Ft2の玉森裕太さんと宮田俊哉さん主演の配信ドラマ「BE LOVE」。キラキラBLに留まらず、「宮玉」という独自のジャンルを世に知らしめたドラマ「BE LOVE」、そして「宮玉」について辛酸さんにじっくり考察して頂きました。
日本が誇るジャニーズがついにBLに進出……と感涙にむせんでいたら、ジャニーズの宮玉カップルのほうがアジアのBLブームより先を行ってました。不勉強で失礼いたしました。「Kis-My-Ft2」の宮田俊哉と玉森裕太の2人は以前から仲の良さで有名だったのですが、なんと2015年 のライブツアーで結婚式を挙げ、「BE LOVE」というユニット曲を披露。2人のシャワーシーンまで入ったコンサートツアーDVD を発売しました。2015年の日本といえば、ウィリアム英王子が初来日とか、東京五輪のエンブレム取り下げとかいろいろありましたが、そんなことよりも重要な宮田と玉森の挙式が行われていたとは! しかもこの夫婦は結婚生活3年で死別してしまい、2018年には星になってしまった玉森を想う宮田が悲嘆にくれ、玉森は空から宮田を見守るというエモーショナルな曲「星に願いを」を発表。感動の余韻が続く2020年に登場した「運命」という曲は衝撃の内容でした。玉森の死後、玉森と似た人と夜の街で深い関係になった宮田。そのことに玉森が怒り狂うという……。成仏せずに宮田の周りに漂っていたのでしょうか。
「結婚」「死別」「嫉妬」をテーマにした3つの名曲、「BE LOVE」「星に願いを」「運命」。この世界観をドラマとして再現したのがdTVで絶賛配信中のドラマです。「BE LOVE」略して「BL」ですが、もはやBLのカテゴリーにおさまりきらず、「宮玉」というジャンルといってもいいくらいのスペクタクルな展開でした。初心者ながらここ数カ月、BLドラマを立て続けに拝見し、いくつかのドラマに共通するBLの法則的なものが存在することがわかってきました。例えば「受けが最初その気がないのを攻めが落とす」「ケガや病気に見舞われ、看病で距離を縮める」「2人の仲が結ばれそうになると元カノが出てきて一波乱」「最終的にはハッピーエンドでキス」など……。でも宮玉の「BE LOVE」は、ありがちな法則が当てはまらない、オリジナリティあふれるドラマであることに驚嘆しました。そもそもどちらが受けでどちらが攻めかわからず、2人とも受けでもあり攻めでもあるように見えます。かねてから玉森のことが世界一好きだと公言していた宮田と、そんな彼の思いをツンデレな感じで受け止めつつ、愛の三部作のプランを構想した玉森。エンドロールのクレジットには脚本協力として2人の名前が出ています。
ドラマは1話20分弱×全4話。キスシーンやシャワーシーン、バックハグシーンほか、いちゃつくシーンが充実していて期待を裏切りません。「anan」(2020年11月11日号)のインタビューでは、宮田がこう語っています。「俺の初めてのキスシーン、初めてのベッドシーンを全部タマに奪われました(笑)。台本に何回もキスするって書いてあって、『まじか!』って思ったけど、結局これって、俺とタマがふたりで蒔いた種なんだよね(笑)。だから責任持って演じきりましたよ!」このドラマの演出は、誰かにやらされているのではなく、2人がやりたくてやっていることなのです。そんな思いを胸に作品を観賞すると、感動と萌えが高まります(※以下、ネタバレを含んでいるので、これからドラマをご覧になる方は読まないようにしていただいたほうが良いかもしれません)。
第1話は、絵本作家の玉森と編集者の宮田が、制作のため海辺の別荘を訪れるところから始まります。絵本関係の出版社は当たるとすごい儲かると聞いたことがあるで、宮田の別荘が豪邸なのもなんとなく納得させられます。白い光が満ちた映像が美しく、どこか儚げです。ベッドの上でくすぐったり、キスしたりじゃれ合う2人。「あ~まじダルいダルい本当にやめて」「その感じ出すのズルいわ」と、くすぐられて疲れた宮田と玉森のやりとりを見て、日本のBLドラマの空気を読むコミュニケーションも素晴らしいと実感。絵本作家・玉森の新作は「吸血鬼ユッタの冒険」。もし実際に玉森が出せば爆売れまちがいなし、と妄想させられます。
第2話は、海辺で戯れる2人の姿が最高でした。やはりイケメンは濡らさないと……。Tシャツがビショビショになったのでシャツ1枚になってはだけているセクシーショットまで。玉森の鎖骨が白くて細いです。吸血鬼の絵本を描いているだけあって「日光が苦手」と言っていた玉森ですが、宮田と水をかけ合う姿は楽しそうでした。お互い指輪をはめたり、ラブラブの回想シーンも交錯。しかし、ふとした時に、昨夜玉森が見た不吉な夢がよぎります。何かの予感を感じて玉森を抱きしめる宮田。その日、出かけた宮田のもとに一本の電話が……。玉森の急死を告げるショッキングな電話でした。
第3話は、ひとり別荘に戻ってきて悲しみに浸る宮田の姿が胸を打ちます。玉森は宮田の誕生日を祝う準備をしていて、ケーキを取りに行った時に事故に遭ったのでしょうか。「これはあいつ号泣だな」と、部屋を飾り付けていた玉森でしたが、別の種類の涙になってしまうとは……。「大好きだよ…」「あいつどこ行っちゃったんだよ」と泣きながら、玉森を回想する宮田。その中で、玉森が以前、宮田の別荘に創作のために来たときの思い出シーンが。ベッドではしゃいだ後、宮田の腕を取って腕枕させる玉森の姿にたぶん多くの視聴者は萌え死んだことでしょう。「嫌だったら突き放してもらって大丈夫なので」と言う玉森の頭を抱き、キスで応える宮田……。BLドラマにありがちな、酔った勢いとか病気やケガの看病からのスキンシップとは違う、自分から仕掛けている感じがリアルでときめきます。
そんな愛にあふれた日々を思い出し、ひとり沈んでいる宮田の横には、まだ成仏していない玉森の姿が。ここからだんだんホラーな展開に……。
第4話では、玉森が途中まで描いた絵本を完成させなければ、という使命感にかられた宮田。そこで新人の絵本作家で玉森の絵に少しタッチが似ている女性を呼んで、続きを描いてもらうことにします。その様子を見て、怒りの念をたぎらせる玉森霊。編集者として、他の人に続きを描かせるなんて両方に失礼だしひどいのでは……と思わされます。絵の中には、これからの展開を予兆しているかのように、倒れている男性の姿が。この絵に足りないものは、マリーゴールドの花だと気づいた宮田。別荘の花壇にも植えられている思い出の花です。女性の絵本作家がマリーゴールドを描き入れると、玉森が吸血鬼となって召還され、怒りをぶちまけます。そして宮田の首筋に歯を立てたのでした……。マリーゴールドの花言葉は「悲しみ」「変わらぬ愛」です。
見終わった後、2人の深い絆だけでなく、シュールなストーリーを具現化した才能にも感動させられました。そして何より美しいキスシーンが心に残っています。
「TVガイド」(2020年10/17号)のインタビュー記事によると、宮田はベッドシーンで「監督が『カット!』って言わなかったら、どこまでしたか分かんないぐらい気持ち入ってた」というくらい感情移入していたようです。それに対し「俺はもう女性になったような気持ちで宮田に身をゆだねてたので(笑)。」と語る玉森。確かに眼差しが女の子のようでかわいかったです。一方で玉森は「マジで、イチャイチャするシーンは鳥肌立った(笑)。」と語っているのは、いつもの宮田へのツンデレ対応でしょうか。インタビューも含めて2人のやりとりは何かのプレイに思えてきます。
ちなみに2人は仕事以外でキスをしていたのか調べてみたら、2020年9月9日の文化放送「レコメン!」内「 Kis-My-Ft2キスマイRadio」に出演した宮田が、キスエピソードを語っていました。玉森とのキスについては、「プライベートでは、なんかふざけて楽屋でキャッキャしてる流れで、ダチョウ倶楽部さんのネタの流れでとかはありますよ」だそうです。えっ……ダチョウ倶楽部のネタの流れでキス? 「聞いてないよ~」、それとも「ヤー」「くるりんぱ」のどこにキスのムードになる余地が? もしくは上島竜兵のキス芸を再現していたのでしょうか。やっぱり宮玉、プレイが高度すぎます。2人の関係は前人未到の域に達しつつあるようです。
辛酸なめ子
イケメンや海外セレブから政治ネタ、スピリチュアル系まで、幅広いジャンルについてのユニークな批評とイラストが支持を集め、著書も多数。近著は「スピリチュアル系のトリセツ」(平凡社)、「辛酸なめ子の世界恋愛文学全集」(祥伝社文庫)、「女子校礼賛」(中公新書ラクレ)など。
撮影(辛酸さん)/村山元一(SIGNO) 構成/CLASSY.編集部