「二次元男子」――それは現実には存在しなくとも、誰かの心をつかんで離さない魅力的なキャラクター。その勢いは漫画やアニメの枠を超え、2.5次元舞台や実写映画などでも話題を呼んでいます。気になるあの人の”推し”への思いを、本人書き下ろしのエッセイとともにお届けします。第二回目は趣味が漫画・アニメということでも有名な、フリーアナウンサー【宇垣美里さん】の好きな二次元男子をご紹介。
ダメなやつなのに、悔しいけど…好き
彼への気持ちをシンプルに表現することはとても難しい。彼について説明しようとすればするほどダメなところばかり浮いてきて……こんな男、女友達の彼氏として紹介されたら全力でとめる。それでも、やっぱり悔しいけど好きなのだ。あ、坂田銀時のことです。
週刊少年ジャンプ(集英社)にて2004年から連載されたマンガ『銀魂』。中学生の頃出会ったこの作品は、何度となく終わる終わる詐欺を繰り返しつつ媒体を移し、2019年に最終回が掲載された。全77巻、私の本棚のかなりのスペースを占領しているにも関わらず、手放すことなどできやしない。マニアックなパロディや執拗なまでにボケにボケを重ねる手法、ギリギリの社会風刺や独特のテンポのセリフ回し。笑いの好みやワードチョイス、まさに私の私らしさを語る上で欠かせない作品だ。
本当に苦しい時、手を差し伸べてくれる男
その物語の主人公である坂田銀時は、銀髪の天然パーマに死んだ魚のような目をしただめ侍。普段は「万事屋銀ちゃん」という何でも屋を営んではいるが、まあだらしのないことこの上ない。ギャンブルにはまったり、度を超えた甘党だったり、ああ、トイレ終わりに手を洗ってないことが発覚したこともあった。不潔。
だからこそ、誰かと契った約束や、自分の大切な人や場所のためなら命を賭して守り抜こうとするその姿のギャップに落ちてしまった。偽悪的な言動では隠しきれていない仲間への想い、面倒くさそうにしながらも繋げた一本一本の絆が多くの人の拠り所となり、血みどろになって叶えてきた人々の願いが、掬い取ってきた思いが、護ってきた命が、そのままに彼の愛される所以。絶体絶命の場面でも何一つ諦めず、敵も味方も、清濁併せのんで強欲に全てを救わんとする姿勢に、どれだけ勇気づけられたことか。銀時は本当に苦しい時に手を差し伸べてくれる人だ。愛する人に求める物なんて、それ以上にありはしない。
「馬鹿だなあ」と笑える距離で見守っていたい
「女を幸せにできる類ではありんせん
どんな敵を前にしても
どんな状況にあっても
けっして誰のものにもなりんせん
そのくせ誰の心にもいつの間にかいる
そういう最低な男さ」
と、彼を表した女がいた。その通りなんだと思う。大切にしてくれているようで、誰かの大切になることをひどく怖がる彼とは、世間の思うような幸せになんてなれやしない。だから、「馬鹿だなあ」と呆れて笑ってみていようと思う。やきもきなんてしない。そういう人だから。そうすればいつか、ふらりと帰ってくるような気がしている。
宇垣美里さん・1991年4月16日生まれ。兵庫県出身。2019年3月にTBSを退社し、現在はオスカープロモーションに所属。フリーアナウンサーとして、テレビ、ラジオ、雑誌、多数のCM出演のほか、執筆活動も行うなど幅広く活躍中。11月18日に自身初の美容本「宇垣美里のコスメ愛 BEAUTY BOOK」(小学館) を発売。
イラスト/はらだ有彩 構成/CLASSY.ONLINE編集室
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