【宝塚】ネタバレあり!再開した星組『眩耀の谷』と『Ray』を観てきました|ヅカオタ編集Mがアツく語る⑥

少しずつエンタメ業界も活気を取

少しずつエンタメ業界も活気を取り戻しつつある今日この頃。『宝塚歌劇』もその影響を受けつつ、先日とうとう公演が再開されました。この機会に宝塚デビューしたい!というCLASSY.読者の方に、ヅカファン歴20年の編集Mがその魅力を好き勝手にご紹介。

今回はとうとう再開した本公演(宝塚の専用劇場での公演のこと)、星組の東京公演をついに観劇したので、その感想を。ネタバレありでどんどん進んでいくので、未見の方はご注意ください!

お芝居:『眩耀(げんよう)の谷〜舞い降りた新星〜』

【簡単なあらすじ紹介】
舞台は紀元前800年頃の中国・周の国。周王は汶(ブン)族という少数民族を攻略し統治下に置くが、その聖地と呼ばれる“眩耀の谷”を見つけられずにいた。実は“眩耀の谷”には黄金が眠っているとされ、周王は密かにそれを狙っていた。そうとは知らず、周の若い軍人・丹礼真(タンレイシン)は上官の管武(カンブ)将軍の命により谷を探そうとするが、そこで盲目の汶族の舞姫・瞳花(トウカ)と出会い…。

【感想】
もう劇場に足を踏み入れた途端、懐かしの赤絨毯!赤座席!!ただいま宝塚~!!と抱きしめて頬ずりしたくなる衝動を抑え、何事もなかったかのようにクールに座って観てきました。マスクをしながらでもオペラグラスを使う妨げにはならず、ちょっと興奮しすぎると途中息が苦しくなるのと、泣いてるときにマスクの中の涙を拭くのが面倒くさいくらいで、新しい観劇スタイルは特に不便でもありませんでした。

幕が開いたらそこは有楽町の桃源郷。冒頭から泣きました。95期のひろ香祐(ひろかゆう)さんが群衆の真ん中でまた泣きました。なぜならこれは95期が誇る男役スター、礼真琴(れいまこと)さんのトップスターお披露目公演だから。その幕開けに、ずっと星組でともに過ごしてきた同期のひろ香さんが真ん中で踊っている。素晴らしい配置。

そうこうしているうちに、礼さんが登場します。その圧倒的、主人公感。冗談抜きで発光して見える。マンガなら『週刊少年ジャンプ』。新しい若いトップスター誕生、というお披露目らしいキャラクターです。でも剣さばきとか誰よりも上手すぎて、「この人本当はすごい強いし身分も上なのでは??」感が拭えない。次回はぜひ初めからそういう設定で観たいとも思いました。今回は自分の忠誠に途中から疑念を抱く設定だったけど、本当は始めから「ちょっとおかしいな」と気づいてるような、聡明な役もハマると思います。ただ上手いだけではない、周囲の空気を敏感に読み取ることに長けた方だと思うので、そういうのを全部ひっくるめた役もいつか観たいです。神様仏様劇団様。

二番手男役は宙組から専科を経て組替えしてきた愛月ひかる(あいづきひかる)さん。会社でいうなら中間管理職、みたいなポジションの将軍役。つまり一番ストレスがたまる立場です。実際に作中では女性から見てひどいこともしているのですが、でもここで「二番手の将軍、なんかやな感じだったね」ではなく、「あの人もきっと色々あってこうなってしまったんだ」と思わせてくれる。描かれてない物語に思いを馳せたくなる。それはひとえに、演じた愛月さんのお芝居の力の賜物だと思います。そんな将軍を演じる愛月さんの、瞳花(=娘役トップスター・舞空瞳さん)の話を持ち出されたときの、あの少し困ったような、苦悩するような眉の動き方。苦い経験を噛み殺すような、なんともいえない大人の男性の表情が素晴らしい。足が揃うことも、美しいビブラートが響くことも素晴らしいけれど、レッスンや演出家からの直接的なダメだしだけでは手に入らないであろう、あの絶妙な表情の動きを、見逃さず受け取りたい。そういうファンでありたい、と、愛月さんのお芝居を観て改めて思いました。あとは宙組出身ならではの超絶スタイル。賛否両論あるかと思いますが、私は管武将軍とも結婚したい。ただ側室だと政権の状況によって雑に扱われるかもしれないから、正室がいいです。

悪い権力者、周王を演じた華形ひかるさん。いわゆる「路線」を経験した男役にとって、老け役、しかも悪役になりきることはとても難しいのではないかと個人的に思うのですが、そこが『鎌足』蘇我入鹿でみた突き抜けた悪人っぷり、「役を全うする力」なのではないかと思いました。同じく専科の大ベテラン男役が演じたら、また全然違う周王になっていたと思います。これが退団公演なのがとても寂しいです。ちなみに華形さんのファンの間での呼び名は「世界の彼氏」。失うなんて宝塚の損失です。

全体的に、ダンスシーンや、反抗する若者の群衆演技が素晴らしい謝先生らしい話でした。銀橋から本舞台の大セリを使って「大移動」を表現したのは瞠目。ヒロインが子供を産んでいる、というのも女性演出家らしい設定だったのではと思います。宝塚は意外とそのへんが前時代的になりがちですが、本当はその設定をもっと掘り下げてもよかったのかも。ですがとりあえず汶族に注目の若手男役さんが集結しているので異常にビジュアル偏差値が高かったり、幻想的なダンスシーンで踊る娘役さんがリアル9頭身だったり、「宝塚はどんな状況でも尊いものなんだな…」という思いのまま、お芝居の幕は降りました。

ショー:『Ray―星の光線―』

うっすらお気づきの方もいらっしゃると思いますが、タイトルの『Ray』は、主演が「礼」真琴さんだからです。さっきのお芝居のキャラクターの名前も同じく。宝塚はこういう「え、ダジャレ?」みたいなことをよくやります。

そんなショー『Ray―星の光線―』を観た感想ですが、出汁から伊勢海老しか使ってないおせちを食べてるみたいな気持ちになりました。

さっきまでの純朴な青年はどこへ?という、礼さんのショーのオラオラぶり。熱血・星組の代名詞!みたいなプロローグに痺れます。ダークトーンに紫のファーがついた衣装も最高のギラつきっぷり。その横で愛月さんのヒヤッとするような美しさ、からのいつもの天真爛漫さを少し抑えた黒髪の瀬央ゆりあ(せおゆりあ)さんのちょっとレトロな色気…プロローグでもう泣きました

相手役の舞空(まいそら)さんはもう上手すぎるから、一回くらい礼さんのカッコよさに見とれて振りを三つくらい飛ばしても許されると思います。むしろそんな彼女が観たい。

こんな感じであれよあれよという間に場面が進んでいき、そろそろお腹いっぱい…と思った頃に中詰(ショー中盤の盛り上がり場面のこと)。まだ中詰。後半戦、かわるがわる中堅~下級生(若い出演者たちのこと)3人が出てきて銀橋で歌う。どうしよう、好きなタイプの男役しかいない…。編集Mは「ちょっと丸顔or女顔+長身」という組合せの男役さんに弱いのですが、今の星組下級生、みんなそのタイプだった(ちなみに綺城ひか理さん、天華えまさん、極美慎さん。詳細はググってほしい)。目が2つじゃ足りない苦しみに陥りました。

途中、興奮で記憶があまりないのですが、フィナーレの大階段での黒燕尾は、やはりこちらも襟を正して拝見しました。礼さんが、技術がある人ならではの表情は変えずシンプルに振りだけをつきつめる躍りをしている隣で、愛月さんが完璧なスタイルで黒燕尾の造形美を体現しながら、やりすぎない表情の変化で男役として積み重ねてきたものをこれでもかと投げ掛けてくる。もう本当にお腹いっぱいです…と視線を横にしたら黒髪の瀬央さんがいたときの衝撃。色んなものが大渋滞。これ以上何を見てもフルコースの最後にもう一回メイン出てきた、みたいな気持ちにしかならない…と最終的に何を観たらいいかわからなくなってオペラが宙をさ迷って終わる、ヅカオタあるあるな最後でした。

しかしここでも私は愛月さんの場面を特筆させてください。その昔、大空祐飛(おおぞらゆうひ)さんにハマった身として、大空さんの新人公演(本公演と同じ演目を下級生だけで行う一度きりの公演のこと)をしていた愛月さんがすっかりスーツの似合う素晴らしい男役さんになったことに、感動をぬぐいきれないのです。ヅカオタあるある、下級生時代を知っている生徒の親戚みたいな気持ちに勝手になるやつ。

震えたのは第四章。その名も「霊歌 スピリチュアル」の「スピリチュアル男A」。ふざけているのではなく本当にプログラムにこう書いてあります。「ニューヨーク。今もこの街に伝わる霊歌・スピリチュアル。スピリチュアル男Aを中心に、スピリチュアル男女がジャズの音楽に乗りエネルギッシュに歌い踊る。」(公演プログラムより)…ちょっと何言ってるのか全然わからない。
だけど、これだけはわかる。

愛月さんのスーツ姿は、神。

神すぎて舞台写真買っちゃったもんね!(画像参照)あのダークトーンのスーツはこれまた大空さんが現役時代に超似合っていたようなタイプのもので、それをバリバリにかっこよく着こなす愛月さんは、控えめに言って最高でした。ああいうシンプルな衣装にちゃんとスターオーラを纏える男役さんって、そうそういないと思うんですよね。演出の中村一徳先生、本当にありがとうございました。

フィナーレのパレードでトップスターの証である大羽根を背負った礼さんを涙目で見送りながら、楽しい時間は終わりました。幸せすぎて3歳くらい若返った気がします。星組の皆様が無事に千秋楽を迎えられますように。ちなみに私はあともう一回観る予定。噛みしめて堪能しようと思います!

以上、ヅカオタ編集Mによる、星組公演『眩耀(げんよう)の谷〜舞い降りた新星〜』『Ray―星の光線―』観劇感想でした。「生の星組が観たい!」という方へ、チケットの取り方や公演日程は、ぜひ宝塚歌劇団公式サイトをチェックしてみてください!

そもそも宝塚歌劇団とは?

花、月、雪、星、宙(そら)組と、専科から成る女性だけによる歌劇団。男性役を演じる「男役」と女性役を演じる「娘役」がおり、各組のトップスターが毎公演の主役を務める。兵庫県宝塚市と千代田区有楽町にそれぞれ劇場があるほか、小劇場や地方都市の劇場でも年に数回公演をおこなう。
公式サイト:https://kageki.hankyu.co.jp/
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