柿澤勇人さん「今でも“役者をやめた方がいいんじゃないか”と考えることがある」その理由は——?

とっておきのジュエリーこそ、大切な人と共有したい——“シェアジュエリー”を提案する不定期連載に登場してくれた俳優の柿澤勇人さん。最新舞台出演作『ジキルとハイド』の“柿澤ジキル”が大きな話題を呼んでいる柿澤さんに、お芝居についての思いや転機となった出来事、お仕事に向き合う価値観について、今の等身大の気持ちを教えてもらいました。

三谷さんとの出会いが転機に。「芝居を楽しんでもいい」と改めて思えた理由とは?

——俳優人生15周年を迎え、キ

——俳優人生15周年を迎え、キャリアを重ねる中で、転機になった出来事はありますか?
いっぱいありますが、ここ最近では三谷幸喜さんとの出会いです。2019年の舞台『愛と哀しみのシャーロック・ホームズ』で初めてご一緒したのですが、役者の特性や個性を生かして脚本が書かれていくあて書きでの作品づくりも初めてで。それを三谷さんにやっていただいたことは転機になりました。この出会いが大河(NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』)にも繋がったと思っています。芝居をすることが僕の仕事ですが、この15年間は楽しいよりも苦難の方が比重として大きかった。劇団に入りたての頃は、何もかもが初めてでキラキラしていて楽しかったけれど、それ以外は全部苦しかったかな。それはキャリアや年齢を重ねるにつれて責任も増えるから当然なのですが、場数を踏めば踏むほど色々考えちゃうし、不安にもなる。そんな中で三谷さんとの作品づくりは、久々に苦しいよりも楽しい要素が上回った経験でした。もちろん苦しさもあるし、楽しければなんでもいいわけじゃないけれど、「芝居を楽しんでもいい」ということを改めて教えてもらったような気がします。

今でも「役者をやめた方がいいんじゃないか」と考えることが…

——苦しかった時期は、どのよう

——苦しかった時期は、どのように向き合っていたのですか?
どう向き合ってたのかなぁ、難しいですね……。今っていろんなチャンスもあるし、情報も溢れていて、周りを見渡すとみんな楽しそうで成功しているように見える。そういう姿に触れて「僕がするのは、この仕事じゃない方がいいんじゃないか」って今でも考えます。でも最近は、続けることが大事かな、と思っていて。全力でやり続けていたら本当にパンクするから、どこかで力を抜くことも意識するようにしています。僕自身、完璧主義者で自分に対して減点法をしてしまいがちなんです。1日が100点からスタートして、少しでもダメだったら90、80点と下がっていき、終わる頃には20点になっていて、「今日は最悪だ」みたいに思うことも多くて。毎日高得点を目指すのではなくて、「30、40点でもいいかな」と力を抜いて続けてきたら、周りにも恵まれて、なんとかここまで辿り着くことができた。本当にダメだと思ったら止まってもいいし、休んでもいいと思うんですよね。自分に適度に余白を与えつつ、エネルギーを下げてでも続けることを大事にしたいです。

——完璧主義者の柿澤さんが、「30点でもいい」と思えるようになったのは、何がきっかけだったのでしょうか?
2016年、主演ミュージカルの公演中に右足のアキレス腱を断裂したのは大きかったですね。あと2日で東京公演千秋楽というタイミングで怪我をしてしまい、僕のせいで大阪公演が中止になり……。「こんなに頑張っているのに、なんで怪我なんて」と自分を責めたし、あのときのショックは半端じゃなかった。人生で1番と言っていいくらい大きな挫折でした。その一方で、満員御礼とはいかなかったので怪我をする前から「こんなに命がけでやってるのに、どうして観にきてくれないんだ」ということにも悩んでいて。ああしなきゃ、こうしなきゃって常に緊張していたのが、怪我をきっかけにふっと抜けた瞬間があったんですよね。どれだけ頑張っても100点はないし、どこかで力を抜かないと本当に潰れてしまうかもしれない。そういうことを教えてくれた経験だったのかな、と思っています。

年齢に捉われず、後輩にもフラットに接することを意識しています

——現場では後輩も増えていると

——現場では後輩も増えていると思いますが、年下と接する中で意識していることはありますか?
結構話しかけるようにはしていますが、彼らは彼らで自立しているので、あまり意識することはないですね。「悩みある?」とか聞いたり、説教したりもしないです。むしろ僕から「あの芝居、どう見えた?」と聞くことの方が多いかな。年齢を重ねても現場での立ち居振る舞いに変化はなくて、あえて言うなら現場に入る時間が少し遅くなったことくらい(笑)。先輩に対する礼儀は当然ありますが、あまり年齢を気にしていないのかもしれないですね。後輩だろうと、素晴らしい俳優はたくさんいるので、負けちゃダメだって感じるし。僕自身は、すぐ先輩に相談するタイプ。先輩に恵まれているので、嫌なこととか悩むことがあったら割とすぐに電話して自分から「空いてる日ありませんか?」って飛びついて話を聞いてもらいます。

PROFILE

1987年生まれ。神奈川県出身。幼少期からサッカーに打ち込み、名門・都立駒場高校に推薦で入学するほどの実力の持ち主。高校1年で観劇した劇団四季「ライオンキング」をきっかけに俳優を志し、高校卒業後、劇団四季の養成所に入所。同年デビューをたし、立て続けに主演を務めた。2009年退団後は、数多くのミュージカルや映画、ドラマで活躍。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、源実朝役を演じ、注目を集めた。現在は、石丸幹二とW主演を務めるミュージカル『ジキル&ハイド』が公演中。【東京】3月11日(土)~28日(火)東京国際フォーラム ホールC。以降、愛知、山形、大阪にて公演。https://horipro-stage.jp/stage/jekyllandhyde2023/

スーツ¥64,900(ムッシュ ニコル/ニコル)シャツ¥33,000(サバイ/HEMT PR)

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ニコル(プレスルーム) 03-5778-5445
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撮影/永峰拓也(SIGNO) ヘアメーク/松田蓉子 スタイリング/杉浦優 取材/坂本結香 編集/宮島彰子(CLASSY.ONLINE編集室)

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表紙モデル:山本美月

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