新型コロナウイルスの感染拡大により、政府や厚生労働省からは2020年2月末より外出自粛の要請や、テレワーク促進等の感染拡大防止策が発表されました。また、4月7日に発令された緊急事態宣言は5月末まで延長され、収束の目途はまだ立ちません。
このような感染拡大防止策による人々のライフスタイルの変化を受け、コロナ流行下での『食事の変化』を分析した調査が公開されました。株式会社リンクアンドコミュニケーションがAI健康アプリ「カロリーママ」「カラダかわるNavi」「カラダかわるNavi for スポーツクラブ」のユーザーを対象に、食事メニューの変化を分析しました。
キーワードは『家族で取り分け』!?
コロナによる自粛要請・緊急事態宣言下での、主食の変化を調査。1月に比べて4月に10%以上増加したメニューは、炊き込みごはん(39%増)、焼きそば(36%増)、ピザ(25%増)、チャーハン(18%増)、お好み焼き・たこ焼き(17%増)の5メニュー。
増加したメニューに共通するのが、以下の3点です。
①一度にたくさん作れて、取り分けて食べることができる
②子供が好きで、家族一緒に食べられる
③短時間で作ることができる
特にお好み焼き・たこ焼きや焼きそばは、ホットプレートで子どもと楽しく作って食べているシーンが想定されます。一方、1月に比べて4月に10%減少したメニューは、おにぎり(20%減)、お寿司(28%減)の2メニューで、個食で食べられがちなメニューが減少していました。
朝食の「お好み焼き・たこ焼き」が4.7倍!昼食は「ピザ」「焼きそば」「チャーハン」が増加
1月に比べて4月で10%以上増加している炊き込みごはん、焼きそば、ピザ、チャーハン、お好み焼き・たこ焼きの5メニューと、10%以上減少しているおにぎり、お寿司の2メニューを増減の大きいメニューとして、朝・昼・夕食のどこで変化が大きいのか分析しました。
増加している5メニューでは、朝食と昼食でよく食べられるようになりました。これは臨時休校・休園や在宅勤務(テレワーク)で、今までよりも朝・昼食を家族と一緒に食べる機会が増えているためと推察されます。一方、減少している2メニューは、特に昼・夕食で食べる機会が減っています。
お酒を飲む男性が減少、お菓子は男女ともに微増
嗜好品(お酒、お菓子)の摂取状況を分析しました。お酒は、1日あたりの純アルコール摂取量(g)の推移を示しています。男性は1月の摂取量が約14gでしたが、2月以上徐々に減少し、4月には約12gと2g減少しました。自粛要請で接待や仕事仲間との会食が減少しているため、飲酒機会が減り、飲酒量にも影響が出ているのかもしれません。女性は4g前後で推移し、増減はほぼ見られませんでした。
お菓子は、1日あたりのお菓子の摂取エネルギー(kcal)の推移を示しています。男性は1月の約125kcalから2月にわずかに増加し、4月まで約130kcal付近で推移しています。女性は1月の約195kcalから2月に約205kcalに増加しましたが、3月下旬からは減少し1月と同水準に戻っています。
お酒の減少は40~60代、お菓子の微増は20~30代が牽引
お酒は、各年代わずかに減少しています。とくに、もともとの摂取量が他の年代と比べて多い40~60歳代は、1月に比べて4月では1g以上減少しています。
お菓子は、減少している年代はありませんでした。もともと摂取量が多い20~40歳代では、1月に比べて4月で約5kcal分の微増がみられました。
■専門家からの意見
●女子栄養大学 教授 武見 ゆかり先生(管理栄養士・栄養学博士)
<中食(テイクアウトやコンビニなどで買う食事)では食塩相当量に注意!>
STAY HOMEの生活を余儀なくされる中で、人々の食事内容がどのように変化したかを示す興味深い結果です。図1より、3月から緊急事態宣言が出た4月にかけての変化が大きいことがわかります。摂取割合が増えた主食のトップ5、すなわち、炊き込みごはん、焼きそば、ピザ、チャーハン、お好み焼き・たこ焼きは、いずれも複合的な料理(穀類の主食に、肉や卵など主菜の材料と、野菜などが一緒に入った料理)で、とくに朝食と昼食で増えています(表1)。
一方、白米と食パンの摂取状況は、ほとんど変化が見られません。白米や食パンは、主菜や副菜などのおかずの料理と一緒に、組み合せて食べる主食です。今回の分析は、主食のみに限定しているので、それ以外の料理との組み合わせはわかりませんが、上記の複合的な主食の食事では、他のおかずがなく、それだけで食事を済ませている場合があると推察されます。その場合、十分な野菜やたんぱく質源の食品がとれているのか、気になります。また、これらの複合的な主食が、家庭で作ったものか、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等で買った中食なのかは不明ですが、買った中食の場合は、食塩摂取量の問題も懸念されます。
日本人における食塩摂取量の供給源は、若年者では自宅調理品よりも、加工食品や外食からの摂取割合が多いことが報告されています(Asakura K他. Public Health Nutr. 2016)。また、私たちが神奈川県のある町で、特定健診受診者を対象に食塩摂取量の供給源を検討した結果、男性において、循環器疾患有りの人は無い人に比べ、家庭調理品以外、特に中食からの食塩摂取割合が高い結果でした(小岩井馨他. 日本健康教育学会誌. 2019)。
中食の焼きそば、ピザ、チャーハン等は、既に調味されていて、そこから食塩を減らすことはできません。中食を利用する際は、カロリー表示と共に、食塩相当量の表示を見る癖をつけましょう。1日の食塩相当量の目標量(上限)は、男性7.5g、女性6.5gです。中食でやや食塩相当量の多い食事を食べたら、次の食事では減塩を心がける等、1日の中でバランスをとるようにしていただきたいと思います。
◆女子栄養大学 教授 武見 ゆかり先生(管理栄養士・栄養学博士)
・女子栄養大学教授、女子栄養大学大学院研究科長
・農林水産省 食育推進会議 委員
・厚生労働省 厚生科学審議会 委員
・日本健康教育学会 理事長
・日本栄養改善学会 理事(学術担当)
調査を行った、株式会社リンクアンドコミュニケーションとは?
「社会の健康課題を解決し、自然に健康になる世界を創る」をミッションとし、IT×専門家ネットワークで「専門家がもっと身近にいて健康をサポートするシステムの構築」を目指しているヘルステック企業。全国で約1万人の管理栄養士・栄養士のネットワークをもとに、食と健康、栄養分野のリーディングカンパニーとして、食を中心とした健康アドバイス事業、健康情報の発信事業に取り組んでいます。<提供サービス>健康アプリ「カロリーママ」、健康経営支援アプリ「カラダかわるNavi」など。
構成/CLASSY.ONLINE編集室