4歳の柴犬が、預けられた田舎を脱走して、都会の飼い主の元に、730日をかけて戻ってきた奇跡の話『帰ってきたジロー〈新装改訂版〉』刊行
犬には「帰巣本能」があり、遠く離れた場所から、わが家に帰ってきた話は世界中でみられる。本書は「ワンちゃん70キロ里帰り」と新聞に載ったジローが、一途に走り続けた物語と、テレビに出たりもした一生を描く。
『名犬ラッシー』は世界一有名な犬の物語だが、1923~24年に、アメリカ大陸を横断、4000キロ以上もの道程を帰ってきた、コリー犬ボビーの実話が元になっている。
『帰ってきたジロー』は滋賀県大津市から兵庫県西宮市まで、直線距離にして70キロを、2年がかりで帰ってきた話である。
飼い主の武内さん一家は、借家を出なければならず、マンションへと引っ越すことになり、規則でジローを飼えなくなる。ジローはお母さんの実家に預けられることになり、クルマに乗せられて高速道路を西宮から大津まで連れていかれた。
犬の記憶力は人間が想像する以上で、においで覚えていると思われるが、ジローはクルマで運ばれたので、それは不可能だった。しかし、移動するあいだ風景を目に焼き付けていたのかもしれない。
「帰りたい」というジローの思いが、おかあさん・おとうさんに会いたいという気持ちが、2年間のノラ生活を生きる強さにつながっていたのだろうか。
自分の飼い犬が1日でも行方不明になったらと想像するだけで悲しみ、涙がこみあげる飼い主もいることだろう。犬は単なる犬ではなく、自分の子供のひとりなのだから。
武内さん一家の喜びたるやいかばかりか。かかりつけの獣医も驚いた奇跡の帰巣を果たしたジローの元には、新聞で知った犬好きの人から喜びの手紙が届いた。
書籍が刊行されてからは、ビートたけしさんが司会の『奇跡体験! アンビリバボー』で再現ドラマ化されたり、西田敏行さんが局長の『探偵! ナイトスクープ』でテレビ出演もした。
犬は2年で人の24歳くらいになり、その後は1年で人の4~5歳の計算で年を取るとされる。ジローは阪神・淡路大震災も乗り越え、22歳まで長生きし、人間でいえば百歳を超える長寿を全う。
大好きなおかあさん・おとうさんと、ずっとず~っと、一緒に暮らし続けた、親孝行の息子だった。
カラー口絵のジローのかわいい顔を見ていると、「よくぞ帰って来たな、ジロー。ありがとう」と、つぶやかずにはいられない。
※本書は平成元年に刊行した『帰ってきたジロー』と平成十七年に刊行した『帰ってきたジローもうひとつの旅』を合本・改訂の上、新装したものです。
・著者プロフィール
綾野まさる(あやの・まさる)
1944年、富山県生まれ。
5年間のサラリーマン生活後、フリーのライターに。特にいのちの尊厳に焦点をあてたノンフィクション分野で執筆。
94年、第2回盲導犬サーブ記念文学賞受賞。
主な作品に「ハチ公物語〈新装版〉」「南極犬物語〈新装改訂版〉」「いのちのあさがお」「いのちの作文」「マザーテレサ」(いずれもハート出版)、「900回のありがとう」(ポプラ社)、「君をわすれない」(小学館)ほか多数。

・書籍情報
書名:帰ってきたジロー〈新装改訂版〉
著者:綾野まさる
仕様:A5判上製・160ページ
ISBN:978-4-8024-0253-8
発売:2025.12.20
本体:1,600円(税別)
発行:ハート出版
書籍URL:https://www.810.co.jp/hon/ISBN978-4-8024-0253-8.html