「あると信じたい」菅田将暉さんの運命感とは?

若手俳優トップの名にふさわしい活躍を続ける菅田将暉さん。
今回は菅田さんが考える運命と、あの名曲をモチーフに描かれた主演映画について語ってもらいました。

「あると信じたい」菅田将暉さんの運命感とは?

運命ってあると思います。信じたいですね。偶然だって何度も重なれば、それは必然じゃないかって――。

18 歳で初主演した映画『王様とボク』で演じたのが、6 歳の頃にブランコの事故で意識を失い、12 年後に奇跡的に目覚めるっていう役だったんですが、僕、実際に6 歳の時にブランコから落ちて怪我をして、救急車で運ばれる経験をしていて――。その時の怪我の痕がそのまま役に使えたんですよ。「あの時の怪我はこのためだったんだな」って(笑)。そう思わないと気持ちが悪い。芸能界ってそんな話がけっこうあって。運命めいたものを感じます。

出会いで言えば、映画『共喰い』の青山真治監督や『あゝ、荒野』の岸善幸監督、ドラマ『3年A組- 今から皆さんは、人質です-』の福井雄太プロデューサー、舞台なら『カリギュラ』の演出家·栗山民也さんと、僕には公私ともに哲学を語れる人が何人かいて――。音楽なら米津玄師がそうですね。制作陣と演者というのは実は結びつきがデカいんです。なかでも福井雄太とラジオ『オールナイトニッポン』構成の福田卓也には運命を感じます。初めて会ったその日に何時間でもしゃべれる人ってけっこうレアですから。その日のうちに「この人とは一生仕事をするんだな、手放さねぇからな」って思いました。

最近では山田洋次監督かな。毎日のように、小津安二郎さんはどうだったとか原節子さんはどうだとか、最初に寅さんを撮った時はこうだったとか、戦後の映画界の話をしてくださるんです。これ僕が聞き逃したら、もう誰も聞き出せないんじゃないかと思って――。託されている感じがしています。10 年後なら出会えていたかどうかわからない、運命の出会いのような気がしていますね。

縁あって隣にいる人を大事にしたいと思える作品です

中島みゆきさんの『糸』って年以上前の楽曲なのに、なんで知ってるんだろうって思いました。世代関係なく誰もが知っていて、不思議な引力があって、神のお告げみたいな歌詞で――。「どう映画にするんだろう、難しいぞ」って思いましたが、脚本を読んで納得しました。愛の話だけど単なるラブストーリーじゃない。漣と葵を軸に、いろんな人との縁と出会いの日々が絡まって〝糸〞ができるんだなと思いました。

今回、僕が演じた漣は北海道のチーズ工房に勤める普通の男。「特別な人にしない」というのが一番の目標でした。基本的に受け身でしたね。本格的な父親役も初めてでしたが、いやあ食らいましたね(笑)。娘って可愛すぎて。子役の女の子の破壊力というか、愛おしすぎた。僕が泣きながら抱きしめたシーンでは苦しかったんでしょうね、離れたとたん「ハァ」って息を吐いたり。かと思えばカットがかかった瞬間に「あと何回?」ってケロッと言ったり。振り回されました(苦笑)。

完成作を観たときは泣きました。僕もそうでしたが、今作を観ればみんな、幼い頃から今までの自分の人生を回想するんじゃないかな。縁あって隣にいる人を大事にしたいと思える作品だと思います。観た方が日々を見つめ直すような、今を大切にしたいと思えるような作品になれれば嬉しいですね。

映画『糸』 中島みゆきの名曲『

映画『糸』
中島みゆきの名曲『糸』の映画化。平成元年に生まれた漣(菅田将暉)と葵(小松菜奈)。それぞれの人生を歩んできた二人が、奇跡の糸を手繰り寄せながら平成の終わりに再会を果たす。「めぐり逢い」をテーマに、男女の人生を平成という時代の変遷とともに描く愛の物語。
他の出演/榮倉奈々、斎藤工ほか。監督/瀬々敬久
●近日公開
©2020映画「糸」製作委員会

Masaki Suda

’93年2月21日生まれ大阪府出身血液型A型●’09年『仮面ライダーW』でデビュー。以降、映画、ドラマ、舞台に多数出演。’17年、映画『あゝ荒野』で第41回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞ほか、数多くの映画賞を受賞。最近の主な出演作は映画『銀魂』シリーズ、『火花』『アルキメデスの大戦』、ドラマ『dele』『3年A組-今から皆さんは、人質です』、舞台『カリギュラ』など。歌手としても活動し、2作のアルバムをリリース。映画『キネマの神様』『花束みたいな恋をした』が公開待機中。

撮影/樽木優美子(TRON management) ヘアメーク/AZUMA(M-rep by MOND artist) スタイリング/二宮ちえ 取材·文/駿河良美 撮影協力/BACKGROUNDS FACTORY、AWABEES

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表紙モデル:山本美月

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