NHK連続テレビ小説『スカーレット』でヒロインの相手役・十代田八郎を演じ、一躍、注目されている松下洸平さん。舞台を中心に活躍し、次々に演劇賞を受賞、10年のキャリアを重ねてきた実力派俳優です。独特の優しい佇まいが魅力の松下さん。知れば知るほど“洸平沼”にハマりそう!
シンガーソングライターから俳優へ
――’08年よりシンガーソングライター“洸平”として活動していた松下さん。俳優を志した理由は?
理由は一つで単純に楽しかったんです。初舞台のミュージカル「GLORY DAYS」の現場がとにかく楽しかった。音楽や絵、ダンスなど様々なことに挑戦してきましたが、こんなに楽しい仕事がまだあったのかと。お芝居という楽しさを知ってしまって、新しい自分としてもう一度チャレンジしたいという思いで名前も本名の“松下洸平”に変えました。
――その後は舞台を中心に活躍。18年に読売演劇大賞など次々と賞を受賞します。
驚きました。賞を取るためにお芝居をしているわけではないけれど、演劇人なら誰しも憧れる賞ですから。その前年、ノミネートはされなかったんですが、読売新聞の演劇評の端っこに“松下洸平が一歩及ばずだった”と書いてあって。一生懸命やっていれば見ていてくださる人がいるんだなって、その時に実感できました。
――憧れの演劇賞を受賞しても、映像の仕事がしたかった理由はなんでしょう?
舞台俳優が活躍するにはいろんな道があると思いますが、僕はドラマや映画にも出たい、一人でも多くの人に見てもらいたいという夢を捨てきれなかった。それには自分としては朝ドラしかないと思ってました。朝ドラや大河など国民的な作品で勝負したいという思いは、ずっと持っていました。
夢が叶い『スカーレット』に抜擢、八郎役で全国区の人気者に
――SNSでは“八郎沼”というタグが話題なほど。周りの状況も変わりましたか?
そうですね。僕自身は何一つ変わってないので戸惑いはあります。どこへ行っても“八郎さん”と言っていただけるので(笑)。嬉しいんですよ。ただ、いろんな人が僕を知っているという状況に慣れてなくて。この間も大阪で乗ったタクシーの運転手さんが女性の方で、『そやけど八郎さん、あの言い方は喜美ちゃん(ヒロインの名)傷つくわ〜』って言われて。僕に言われてもって思いながら(笑)、本当にたくさんの方が見てくれているんだなと驚いています。ただ僕は僕のペースを変えないようにしたいですね。
――俳優・松下洸平として『スカーレット』はどんな作品になりましたか?
夢が一つ叶ったと思いましたし、その実感はありますが、俳優としてのこれからを考えたら、むしろここからがスタートなんだと今すごく感じています。
――どんな俳優でありたいと思っていますか? 俳優という仕事の魅力は?
どんな色にも染まれる俳優でいたいです。役を掘り下げることが俳優の醍醐味だと思うんです。なぜこんなことを言うんだろう、どんな人生だったんだろうと考えるとワクワクします。大変な作業ですが、これからも役を掘り下げて、役に寄り添える俳優でいたいと思います。
――音楽活動も再開するそうですね。
今年から徐々に動き始めていて、今の僕が表現したい音楽を一から作り直して皆さんに届けたい。今、絶賛準備中です。
――音楽を続ける魅力はなんでしょう。
俳優としては、たとえば『スカーレット』なら八郎として作品の中で生きているから、自分自身を表現することはないけれど、
音楽は松下洸平として自分を表現できる場所。僕は音楽が大好きでずっと続けてきたので、そこが素の自分を応援してもらえる場所になればいいなあと思っています。
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撮影/樽木優美子(TRON management)ヘアメーク/五十嵐将寿 スタイリング/渡邉圭祐 取材・文/駿河良美 撮影協力/ AWABEES