あなたは普段、自分で使っている言葉について、どのくらい意識しているでしょうか? たとえば会話でよく使う言い回しであっても、それが漢字表記になると、意外と読めないということがあります。
何気なく使っている言葉が漢字表記であっても正しく読めるか? 普段からそうしたことを意識している人は、そう多くはないでしょう。
そこで今回は、“よく使う言い回しなのに漢字にすると読めない言葉”をご紹介します。何問正解できるか、ぜひ試してみてください。
1.「動もすると」
「夏は、動もすると寝不足になりがちだ」など「どうかすると、そうなりがちだ」という意味を持つ「動もすると」。
「動もすると」をそのまま「どうもすると」と読んでしまうのは誤りです。
また「動もすれば」という言葉もありますが、「動もすると」と同じ意味で、かつ「動」の読み方も同じです。「どう」以外に「動」を何と読むでしょうか?
正しくは……
「ややもすると」と読みます。
ちなみに「やや」には「物事がその状態に進んでいく様子」という意味があります。
2.「頗る」
「頗る」という漢字だけ見ても、いったい何のことを表しているのか分かりづらいですよね。「頗る」には「甚だ(はなはだ)」、「大いに」「たいそう」といった意味があります。よく「今日は頗る調子が良い」「頗るご機嫌な様子」といったように、人の様子を表す時に使われる言葉です。
そんな「頗る」の正しい読み方は……
「すこぶる」です。
「すこぶる」は、「少し」の語根である「すこ」と「大物ぶる」「大人ぶる」など「そのように振る舞う」という意味の「ぶる」が組み合わされてできた言葉だそう。
そのため、元々「ある程度」「少し」という意味で使われていましたが、いつしか現在のように「甚だ」「非常に」といった意味で使われるようになったようです。
3.「疎ら」
「間隔が空きすぎて密でない状態のこと」を「疎ら」と言います。
たとえば「家が疎らに建っている」「開店直後なので、まだ人が疎らな状態だ」といったように、その場の状態を表す時に用いられる言葉です。
ヒントは「疎」という漢字の意味。「疎」には「間が空いていること」という意味があります。漢字の意味から、ある程度読み方をイメージできるかもしれませんね。
そんな「疎ら」の正しい読み方は……
「まばら」です。よく「もっぱら」などと読み間違えがちですが、「もっぱら」は漢字で「専ら」と書きます。せっかくなので「専ら(もっぱら)」の読み方も覚えておくと良いでしょう。
4.「鬩ぎあう」
「鬩ぎあう」とは「対立して争うこと」を意味する言葉です。
「争い」というと「戦い」のような印象があるかもしれませんが、「鬩ぎあう」は仕事でもたびたび見聞きすることがあるでしょう。たとえば「新規プロジェクトの立ち上げをめぐって、賛成派と反対派が鬩ぎあう」という用いられ方をします。
おそらく「鬩」という漢字自体、初めて見たという人もいるのではないでしょうか。とはいえ、きっとあなたも一度は聞いたことがあるはず。
そんな「鬩ぎあう」の正しい読み方は……
「せめぎあう」です。
「鬩ぎあう」のほかに「鬩」を使った熟語には「鬩牆(げきしょう/内輪で揉めること)」などがあります。普段はひらがな表記されることが多いため、「鬩」という漢字自体、見る機会が少ないかもしれませんね。
5.「微睡む」
暖かな陽気に、思わずうとうと。眠るつもりはなくても、あまりの心地良さについ眠くなってしまうという経験は誰しもしたことがあるはず。
このように「少しうとうとと眠ること」を「微睡む」と言います。
「微かな睡眠」と書いて「微睡む」。決して熟睡ではなく「ちょっとの間眠る」という意味の言葉です。
そんな「微睡む」の正しい読み方は……
「まどろむ」です。
ちなみに「微睡む」の「む」がなければ「びすい」と読みます。「微睡」と書く場合も、意味は「微睡む」と同じですよ。
いかがでしたか? 慣れ親しんでいる言葉であっても、漢字表記になり、言葉の印象がガラリと変わったものもあったことでしょう。言葉にするのと文字として見るのとでは、また違った印象になりますよね。
とはいえ、普段からよく使う言葉であれば、その漢字表記も知っておきたいもの。ぜひこの機会に、漢字表記と正しい読み方、そして言葉の意味も併せて覚えていってくださいね。
参考文献
日本語倶楽部〔編〕『読めたらスゴイ!漢字1000』河出書房新社
文/大内千明 画像/Shutterstock(Roman Samborskyi、WAYHOME studio、stockcreations、Roman Samborskyi、fizkes)