前田敦子さん(34)「大人として、社会人として、一歩踏み出す覚悟ができた」きっかけをくれた言葉とは【舞台『ポルノ』インタビュー】
30代に入り、少しずつ自身の変化とも向き合えるようになったという前田敦子さん。アラサーで独立に踏み出し、自分の居場所や働き方を見つめ直してきた今、出演舞台『ポルノ』で惹かれているのは、人の不器用さや弱さ、そしてどこか愛おしさを感じる感情たちだそう。前田さんの言葉をたどると、今のまなざしが見えてきました。
Profile
1991年7月10日生まれ、千葉県出身。俳優として映画や舞台、ドラマなど幅広い作品で活躍。2021年に独立し、子育てをしながら俳優活動を続けている。芸能活動20周年を迎え、今年2月に写真集『前田敦子写真集 Beste』が発売。
みんなかなりクセが強いのに、すごく愛おしいんです
――24年ぶりに上演される舞台『ポルノ』。エンターテインメントとしての面白さの奥に、人間の奥深さや不器用さも描かれています。前田さんは、この作品の魅力をどのように感じていますか?
登場人物はみんなかなりクセが強いんですけど、不思議とすごく愛おしいんです。みんな必死に生きていて、そのまっすぐさに思わず笑ってしまう瞬間もあるし、こんなに個性がバラバラなのに、一人ひとりにちゃんと惹かれる戯曲ってなかなかないなと思いました。最初はタイトルの印象もあって、「今の時代にはなかなか描けないものを扱っている作品だな」と感じたんです。
きっと観る方も、最初は衝撃的な部分に目を奪われると思うんですけど、そのあとに「こういう人、意外といるよね」とか、「もしかしたら自分にも重なるかも」と感じる瞬間があるはずで。そういう余韻も、この作品の大きな魅力だなと。知れば知るほど、人って簡単じゃないし、だからこそ面白いんだなと思わされる、とても深い作品です。
思い描いた未来に、人は少しずつ近づいていく気がする
――『ポルノ』には、現実と妄想が入り混じるような瞬間が描かれますが、前田さんご自身も、普段から空想することはありますか?
あります。私は、ずっと頭の中で会話しているタイプなんです。
――どんな瞬間に多いですか?
やっぱり寝る前が多いですね。その日にあったことを思い返したり、これからのことを想像したりしているうちに、自然といろんな世界が頭の中に広がっていくんです。でも私は、想像することって、ただの空想では終わらないと思っていて。人って、思い描いた方向に少しずつ引っ張られていくところがあるじゃないですか。だからこそ、なるべく自分をネガティブなほうには連れていかないように意識しています。
――それが、自分を奮い立たせることにもつながっている?
そうですね。何も考えずにいると、不安とか余計なことに気持ちが引っ張られてしまうこともあると思うんです。だから私は、そこで止まらないように、「これをやってみたい」とか、「こんな未来になったら素敵だな」とか、気持ちが少し前を向くようなことをあえて思い描くようにしています。そうやって、頭の中で自分の未来を明るいほうへ連れていくというか。前向きなイメージに包まれたまま眠りにつけると、それだけで明日の自分が少し変わる気がするんです。
夫婦って、こういう距離感なのかもしれない
――今回は玉置玲央さんと夫婦役を演じられますが、パートナーとの関係を舞台上で表現するにあたって、意識していることはありますか?
今回演じる夫婦は、長い時間を一緒に過ごしてきた二人なので、もうお互いを探り合う段階ではないんです。「言葉にしなくても、ある程度わかっているよね」という空気感は、すごく大事にしたいなと思っています。稽古をしていても、全部を言葉で説明しないほうが、かえって二人の関係性が自然に見える瞬間があって。そういうときに、夫婦ってこういう距離感なのかもしれないなと感じます。そのためにも、稽古場ではなるべく自然に会話を重ねることを意識しています。お芝居の話だけではなくて、日常のちょっとしたことまでざっくばらんに話せる関係でいたいんです。そういう積み重ねが、舞台の上での二人の距離感にもちゃんと出る気がしていて。玉置さんも、同じ感覚でいてくれているんじゃないかなと思います。
――今は、演劇に身を置くこと自体が楽しい時期ですか?
実は、苦手意識もあるんです。でも、簡単にはつかめないからこそ、逆に惹かれてしまうのかもしれません。思い通りにならないし、毎回ちゃんと緊張もする。だからこそ、向き合うたびに新しく知ることがあって、その難しさも含めて面白いなと思っています。今は、そういう緊張感ごと受け止めながら、演劇と向き合っている気がします。
『何者でもない』と思っていた私が、もう一度前を向けた理由
――20代後半、お仕事や生き方を見つめ直す中で、「ここが大きな転機だった」と感じる出来事や、背中を押してくれた言葉はありましたか?
AKB48で衣装デザイナーをされていた茅野しのぶさんに、「もったいない。前田敦子なら何にでもなれるんだよ」と言っていただいたことです。その言葉に、はっとしたんです。「私、何を諦めようとしていたんだろう」って。そこから気持ちが切り替わって、自分の足で立ってみようと決めることができました。私にとって大きな転機は、あのタイミングだったと思います。大人として、社会人として、一歩踏み出す覚悟ができた瞬間でもありました。
独立というと特別なことに聞こえるかもしれませんが、自分の居場所や働き方を見直したくなる感覚は、きっと多くの方が経験するものだと思うんです。私にとってもあの時期は、“何者かにならなきゃ”と焦るのではなく、自分の人生は自分で選び直していいんだと気づけた時間でした。そう思えたことで、やっともう一度前を向けるようになった気がします。
Information
舞台『ポルノ』は、坂の多い町・坂上町を舞台に描かれる、美しくも醜悪な恋と欲望の群像劇。議員選に立候補した国旗耕二は、「高齢者や歩行に障害のある人のため、町にあるすべての坂をエスカレーターにする」という大胆な公約を掲げる。しかし支持率は思うように伸びず、妻・美和子とともに思いもよらぬ行動へ。7人の男女を演じるのは、玉置玲央、前田敦子、鳥越裕貴、藤谷理子、小野寺ずる、岩本晟夢、うぇるとん東。実力派キャストがぶつかり合うスリリングな物語。
東京公演 2026年4月2日(木)~12日(日)@下北沢・本多劇場
福岡公演 2026年4月15日(水)・16日(木)@西鉄ホール
大阪公演 2026年4月25日(土)・26日(日)@サンケイホールブリーゼ
トップス/Cygne パンツ/Sov シューズ/銀座かねまつ アクセサリー/BELLESIORA
撮影/加治屋圭斗 ヘアメイク/髙橋里帆(HappyStar) スタイリング/南まりい 取材/池田鉄平 編集/越知恭子
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