俳優として着実にキャリアを重ねる西野七瀬さん。新作映画『90メートル』で演じるのは、難病を抱える母とその息子を支える介護施設のケアマネジャーです。家族のあいだに生まれる複雑な感情やすれ違いに寄り添いながら、“距離感”という繊細なテーマを体現する役どころ。役づくりや作品を通して感じた家族との関わり、そして共演者との現場でのエピソードを聞きました。
Profile
1994年5月25日生まれ、大阪府出身。2011年に乃木坂46に第1期メンバーとして加入し、翌年CDデビュー。2018年末にグループを卒業。同年、日本テレビ系ドラマ『あなたの番です』で演じた女子大生役が話題に。2021年、映画『孤狼の血 LEVEL2』の演技で日本アカデミー賞の優秀助演女優賞および新人俳優賞を受賞。近年の主な出演作に映画『52ヘルツのクジラたち』『シン・仮面ライダー』『帰ってきた あぶない刑事』『君の忘れ方』などがある。
これまでの人生でほとんど触れてこなかったテーマ
――この作品の出演の経緯と、中川駿監督の作品の印象について教えてください。
以前、映画『少年と犬』でご一緒したプロデューサーさんから、「この役をぜひやってほしい」と声をかけていただきました。私のこれまでの人生ではほとんど触れてこなかったテーマだったので、純粋に知りたいという気持ちがありました。
中川監督の作品では『少女は卒業しない』(2023年公開)を拝見していて、もし自分が10代だったら出演してみたかったと思うほど、素敵な作品だと感じていました。
――シングルマザーで難病の美咲を支えるケアマネジャー役ですが、どのように役を作っていきましたか。
資料をいただいたり、YouTubeでケアマネジャーの仕事を紹介する動画を見たりして勉強しました。「ケアマネジャーの1日」といった動画も多くて、それも参考にしました。
ただ、私の役は物語の中でずっと登場するわけではなく、要所で家族に関わっていく存在なんです。現場では監督と相談しながらシーンごとに作っていくことが多かったですね。
――ケアマネジャーという仕事で、特に印象に残ったことはありますか。
正直、それまでケアマネジャーという仕事自体を知らなかったんです。ヘルパーさんは知っていましたが、利用者さんとヘルパーさんをつなぐ役割があることを今回初めて知りました。
一人で何人もの利用者さんを担当しながら、訪問だけでなく事務作業も多い。この仕事がなければ介護の現場は回らないのでは、と思うほど大変で、尊敬できる仕事だと感じました。
踏み込みすぎてもいけないし、離れすぎても信頼は生まれない
――下村香織という人物を演じるうえで大切にしていたことは?
ケアマネジャーの方って、たとえ本心があっても、それを利用者さんの前で出さない仕事なのかなと思ったんです。香織にも、もし本音が言えるなら、「こうしてほしい」と思うことがあったはずですが、それを表に出さず、あくまで寄り添う姿勢を保っている。
美咲との関係が中心ではありますが、家族である佑くんとの距離の取り方も含めて、この役は “距離感”がすべてだと感じました。踏み込みすぎてもいけないし、離れすぎても信頼は生まれない。香織はそのバランスを常に考えている人物だと思います。
――香織は感情を前に出しすぎない人物です。表現の難しさはありましたか。
感情を飲み込む人物なので、「この人は今何を考えているんだろう」と考えながら演じていました。ただ、それがカメラを通すとどう見えるのかは、正直いまだに難しいところで。自分では感情を抑えたつもりでも表現が足りなかったり、逆にやりすぎていたり。
今回は特に繊細な作品ですし、映画はスクリーンで大きく映るので、細かいニュアンスはかなり意識しました。最終的には監督の判断に委ねる形で、「OK」と言っていただければそれを信じるようにしていました。
親子の距離感は、ずっと向き合い続けるものだと思う
――この作品が描く親子の距離感やすれ違いについて、どんなことを感じましたか。
親子って、言葉にしない独特の関係がありますよね。家族だからこそ、つい言い方が雑になってしまうこともある。私自身も思い当たることがあって、改めて考え直すきっかけになりました。
今回描かれている病気は誰にでも突然起こり得ると聞いて、「もし自分だったら」「もし家族だったら」と想像してしまって。決して他人事ではないと感じました。
――ご自身の経験と重なる部分はありましたか。
私自身も、親との距離感で悩むことはありました。うちは少し過保護だったので、中高生のころは「やめてよ」と思うことも多くて(笑)。17歳で上京して親元を離れてからは、私にとってちょうどいい距離になった気がします。
親子の距離感って、大きな問題ではなくても、ずっと向き合い続けるものだと思うんです。この作品とは状況は違いますが、親との関係について考えることは今でもあります。きっと誰にでもあるテーマですよね。
菅野美穂さんとはリアルなお話もしました
――美咲役の菅野美穂さんとの共演はいかがでしたか。
病気の症状の表現が本当に繊細でした。撮影の空き時間になると、とても明るくて気さくな方で。先輩としていろいろお仕事のお話を聞けてうれしかったです。シーンによっては、自分が演技をしていることを忘れるくらい、目の前の美咲さんに引き込まれました。
――空き時間にはどんなお話をされていたんですか?
相談というより、わりとリアルなお話をしていました。「その年齢で結婚を決断したんだね」と言ってくださったり。世代によって結婚のタイミングの感覚も違うと思うので、「菅野さんの頃はどうだったんですか?」と聞かせていただいたりもしました。なれそめのお話なども少し聞かせていただいたんですが、そこはちょっと秘密です(笑)。
Information

映画『90メートル』
3月27日公開。難病を抱える母・美咲(菅野美穂)と二人で暮らす高校生の佑(山時聡真)。佑は東京の大学へ進学したい想いと、母のそばを離れられない現実の間で揺れながら、人生の選択を迫られていく。愛するがゆえにすれ違う親子の葛藤と本音を丁寧に描いたヒューマンドラマ。監督自身の体験をもとにした半自伝的作品。
https://movie90m.com/
©2026 映画『90 メートル』製作委員会 配給:クロックワークス
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撮影/茉那実 ヘアメイク/野口由佳(ROI) スタイリング/鬼束香奈子 取材/服部広子 編集/越知恭子
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