まもなく最終回を迎える連続テレビ小説『ばけばけ』で、天国遊郭の遊女・なみ役を好演している、さとうほなみさん。恵まれない境遇ながらも、明るくたくましく生きる姿が、多くの人々の心をとらえてきました。そんなさとうさんは、公開中の映画『東京逃避行』で、歌舞伎町の児童相談所で働く正義感あふれる女性を演じています。さまざまな作品で存在感を発揮するさとうさんが、俳優を志したきっかけは何だったのでしょうか。
Profile
1989年8月22日生まれ、東京都出身。21年、Netflix映画『彼女』で映画初主演を務め、23年には映画『花腐し』で、第33回日本映画プロフェッショナル大賞新進女優賞を受賞。その他、近年の主な出演作に映画『愛なのに』、『i ai』、『水深ゼロメートルから』、『天使の集まる島』。現在はNHK連続ドラマ小説『ばけばけ』に出演している。また、バンド「ゲスの極み乙女」では“ほな・いこか”名義でドラマーとしても活動している。
才能あふれる若手監督の長編デビュー作に出演
――まず、映画『東京逃避行』について、オファーを受けたときのお気持ちや、出演を決めた理由について教えてください。
監督の秋葉恋さんは、まだ24歳という若い方なんですけど、この作品で長編デビューすると聞いて。すごくいい挑戦だと思ったし、彼がふだん感じている世界が、映像化されるとどうなるのか、純粋に興味を引かれたんです。最初にお話をいただいたとき、私が演じる役柄は、まだはっきりとキャラクターが決まっていなかったんですけど、それでも「とにかく、この作品に何か関わらせてもらいたい」と感じました。
――本作は、そんな秋葉監督の実体験に基づいているとのことですが、脚本を読んだときの印象はいかがでしたか?
すぐに引き込まれてしまって、作品として強く惹かれる部分が大きかったです。私自身、「トー横」という言葉や、そこで彷徨っている子どもたちがいることは、メディアを通した情報でしか知らなくて。この作品をきっかけに、もっと深く掘り下げていけたらと思いました。
――実際に完成版をご覧になった感想はいかがでしたか?
想像の上をいく仕上がりというか、秋葉監督の感性には“底知れない”ものがあるなと感じました。彼の目を通して見た世界が、いろいろな角度で表現されていて。映画としても面白かったし、やっぱりこの作品に参加できてよかったなと思います。
役作りのため実際の保護現場を見学。「言葉にならない気持ちになった」
――さとうさんが演じられたレイカは、トー横の児童相談所で働く女性ですが、どのように役作りをされたのでしょうか?
実際に、歌舞伎町で少年少女たちの“駆け込み寺”のような施設を運営している女性がいらっしゃって。その方の活動を、少し離れたところから見学させていただきました。なんとなく知ってはいたものの、目の前で繰り広げられる光景があまりに衝撃的で。言葉にならない、複雑な気持ちになりました。
――レイカの性格やキャラクターについては、どんなことを意識して演じられましたか?
この物語のなかでは、レイカのような大人は、本当の意味で子どもたちの苦しみを理解できない存在なんじゃないかと思って。トー横に流れ着くしかなかった少年少女たちとは相容れない、“育ちのよさ”みたいなものを意識して演じていました。レイカも、主人公の飛鳥と日和に一生懸命寄り添おうとはするんですけど、それは大人としての正義感で。彼女たちが「どうせ本当の意味ではわかってくれないんでしょ」と思えば思うほど、2人の「自分たちには、お互いしか理解者がいない」という気持ちが強くなるんじゃないかなと。もしかしたら現実でも、子どもたちは同じような葛藤を抱えているのかもしれないなと思います。
俳優を志したきっかけは、子どものころに見ていたテレビドラマ
――本作には、さまざまな苦悩を抱えた少年少女たちが登場します。さとうさんご自身も、過去に同じような悩みや迷いを感じていた時期はありますか?
私が10代のころは、どちらかというと真逆だったような気がします。小学生のころから、「お芝居やってみたい!」という目標に一直線だったので、あまり悩んだり迷ったりしたことがなかったです。やりたいことがあると、それに向かって無我夢中で走り続けてしまう性格なんだと思います。
――実際、小学生のころから舞台や映画に出演されていたんですよね。最初に、お芝居に興味を持ったきっかけは何だったんでしょうか?
きっかけは、テレビドラマですね。自由な家庭だったので、どんな作品も好きに見ることができて。少し大人向けのものもかじりつくように見ていました。すぐに「俳優になりたい」と思ったわけではないんですが、とにかく「自分もこの世界にいきたい!」と強く感じたんです。一つひとつの作品の世界観にのめり込むようにして見ていました。
――ということは、小学生のころからずっと、同じ目標を目指し続けてきたということですよね。
そうですね。俳優を志してから、自分の将来について迷うこともなかったし、なかなか芽が出なくても、投げ出したいと思ったことはありませんでした。芝居をやり続けることは、当時も今も、私にとってすごく自然なことなんだろうなと思います。
「ゲスの極み乙女」のメンバーは“友達以上、家族未満”の関係
――さとうさんは、俳優だけでなくドラマーとしての顔もお持ちですよね。音楽との出会いについても教えてください。
高校生のとき、自然といろいろなアーティストのCDを聞き漁るようになって。ライブやフェスに足を運んだりするうちに、「なんて自由で広い世界なんだ!」と衝撃を受けたんです。そこからどんどんハマっていって、初めてバンドを組んだんですけど、それもまた面白くて。それまでは、舞台の作品ごとに期間限定のチームに所属する機会はあったんですけど、バンドって誰かが「辞める」とか「解散する」とか言い出さない限り、ズルズルと続いていくんですよね。そんな関係性を経験するのが初めてだったので、「何だこれは!」と驚いたのをよく覚えています。
――たしかに、“友達”とも違うし、“同僚”という言い方もしっくりきませんよね。
そうなんですよ。私が所属している「ゲスの極み乙女」のメンバーたちは、“友達以上、家族未満”みたいな存在なんですけど、それを表現する言葉はやっぱり“バンドメンバー”で。いまだに、不思議な関係だよなと思いますね。こうやって振り返ってみると、大好きな音楽はもちろん、子どものころから目指していたお芝居も、どちらもやらせていただいている今の状態って、すごくありがたいことだなと改めて思います。
Information
映画『東京逃避行』
絶賛公開中。家や学校に居場所がない女子高生・飛鳥(寺本莉緒)は、“トー横”で暮らす少女が綴った自伝的ネット小説「東京逃避行」に憧れ、新宿・歌舞伎町を訪れる。偶然、作者の日和(池田朱那)と出会いすぐに意気投合。ある“集まり”に参加するも、そこで目にしたのは衝撃的な現実だった。飛鳥は日和の手を取りその場を逃げ出すが、半グレ集団の怒りを買い、歌舞伎町中を逃げ回ることになる。
ジャケット¥33,000パンツ¥24,200(ともにMAISON SPECIAL/MAISON SPECIAL AOYAMA)トップス¥5,500(MURUA)シューズ¥30,800(Dr.Martens)
【SHOP LIST】
MAISON SPECIAL AOYAMA 03-6451-1660 / MURUA 03-5447-6545 / Dr.Martens AirWair Japan 0120-66-1460
撮影/山村祐太郎 ヘアメイク/ASUKA スタイリング/高木かなえ 取材/近藤世菜 編集/越知恭子
Magazine