kemioら12名が語る、多様性時代の“新しい生き方”とは?国際女性デートークセッション【東京エディション虎ノ門・東京エディション銀座】
2026年3月、東京エディション虎ノ門にて国際女性デーを記念したトークセッションが開催。ファッション、音楽、アートなど各分野の第一線で活躍する12名が集い、「Give to Gain(与えてこそ得られる)」をテーマに、多様性やジェンダー観について語り合いました。カルチャーが社会に与える影響や、“声を上げること”の意味とは——。kemio、エリーローズら12名が語る、“自分らしく生きる”ためのヒントをチェックしてみて。
カルチャーが“社会の常識”を更新していく
2026年3月7日(土)、東京エディション虎ノ門にて、国際女性デーを記念したトークセッションが開催されました。テーマは「Give to Gain ― 与えてこそ得られる」。
本セッションには、kemio(デジタルクリエイター/モデル)やエリーローズ(モデル/DJ/コラムニスト)、キム・ギュテ(ビューティークリエイター)、緒形龍(俳優/モデル)、沙羅・ジューストー(プロデューサー)、Niina(アーティスト)、植野有砂(コンテンツクリエーター/DJ)、ミエ・アントン(ブランドディレクター)、アンジェラ・レイノルズ(ギャラリーディレクター/モデル)、小野美智代(国際協力NGOジョイセフ PGディレクター)、白川麻美(エディション カルチャー&エンターテイメント ディレクター)、ローズ麻里子(エディション カルチャー&エンターテイメント マネージャー)ら、カルチャーの最前線で活躍する総勢12名が登壇しました。
トークの冒頭では、音楽やファッションといったカルチャーが、どのように社会の価値観を変えてきたのかに焦点が当てられました。登壇者たちは、自身の経験を通して「教育では得られなかった価値観をカルチャーから学んだ」という共通点を語り、個人の発信やコミュニティの存在が社会規範に影響を与えていると指摘。
kemio
「僕はゲイで、21歳のときに本でカミングアウトしました。祖母に育てられて、周りも女性が多い環境だったんですが、当時は性について知るための教育や情報がほとんどなかった。保健体育の授業でもそういう話はなかったので、自分が何者なのかを知る手がかりがなかったんです。でもアメリカのカルチャーが好きで、マライア・キャリーやレディー・ガガの存在を知る中で『自分ってなんなんだろう』と考えるようになった。音楽やカルチャーに触れることで、自分の道標になるものを見つけられた気がします。教育では得られなかったものを、カルチャーが教えてくれたと思っています」
アンジェラ・レイノルズ
「デジタル化されたことはすごく大きいですよね。今は世界中の情報に瞬時にアクセスできるので、さまざまな生き方や価値観を知ることができて、自分を肯定できるきっかけにもなる。今はボトムアップで個人同士が認め合う動きが広がっていると思いますし、アーティストの発信もその一つ。政府の動きとは真逆の部分もあるけれど、何より大事なのはコミュニティの力が確実に強くなっているということです」
インターネットやストリーミングサービスの普及によって、多様な生き方に触れられる時代となり、「これが正解」という価値観は確実に変化しています。カルチャーは単なる“表現”ではなく、人の意識を動かし、社会そのものを更新していく力を持っている——そんなメッセージが印象的なセッションとなりました。
“声を上げる勇気”が未来を変える
続いて語られたのは、「可視化すること」「声を上げること」の重要性。性別によるラベリングや、子育てとキャリアの両立に対する偏見など、日常に潜む違和感について率直な意見が交わされました。
植野有砂
「活動する中で『フィメールDJ』という呼称に違和感を抱くようになりました。なぜわざわざ性別を冠して紹介されるのか、と。声を上げれば賛否両論が返ってきますが、たとえ全員と意見を共有できずとも、自分の信念を貫き発信し続けることが重要だと考えています。現在、母となって10カ月。キャリアを諦めるつもりはありません。夫と協力して育児に励んでいますが、男性の出張は当然視される一方で、女性が海外出張へ行くと批判にさらされる現状があります。当初はSNSへの投稿すら躊躇しましたが、『子どもかキャリアか』という二択で悩む若い世代に向け、『どちらも楽しく両立できる』という姿を自ら体現し、伝えていきたいです」
ミエ・アントン
「何を言っても反対する人は必ずいます。でも、勇気づけられる人の方が多いと思う。最近は若い世代から“子どもも欲しいけど仕事もしたい”という相談を受けることがあります。そうやって考えてくれる人が増えているのはすごく嬉しい」
Niina
「私は声を上げることがあまり得意ではありません。過去に強い批判を受けた経験があって、発信することが怖くなってしまった時期がありました。でも自分で調べて知識を増やしていくうちに、少しずつ自信がついてきた。今は再び発信することにも挑戦していきたいと思っています。その一つとしてトレーニングを続けていて、数年で14キロ体重を増やしました。舐められたくないという気持ちが強かったんです。体を鍛えることでメンタルもタフになってきたと感じています」
「発信には勇気がいる。でもその声が誰かの選択肢を広げる」そんな言葉の通り、登壇者たちは批判や不安を抱えながらも、自分の考えを言葉にすることが社会の変化につながると語ります。特に印象的だったのは、“キャリアか家庭か”という二択ではなく、「どちらも選べる社会」をつくる必要性。一人ひとりの声が積み重なることで、新しい価値観が生まれていくことが示されました。
見た目や性別にとらわれない“本来の自分”
トークはさらに、外見やジェンダーによる無意識の偏見へ。「見た目によって評価が変わる」「女性らしさ・男性らしさを求められる」——そんな現実に対し、登壇者たちは自身の経験を交えて語りました。
エリーローズ
「モデルをしながらDJをしていると、“ただのモデルでしょ”と言われたりして下に見られていると感じることがよくありました。だからこそDJのときは絶対にミスをしないようにしていたし、常に最大限のパフォーマンスを出さなければいけないという意識が強かったと思います。ストリーミングの現場ではネイルを外したり、あえて大きめのTシャツを着たりして、“ギャルっぽい”イメージで見られないようにしてました。男性中心の環境の中で舐められないように、話し方を少し男性的に変えていた時期もあります。そういう経験を通して、自分の立ち方を探してきた時期は辛かったですね」
緒形龍
「役者の世界でも似たようなことがあります。アメリカでアートスクールに通っていたときは多様な価値観に触れることができたんですが、日本に帰ってきて自分のセクシュアリティについて話したとき、大人たちから“声が気持ち悪い”、“容姿が気持ち悪い”と言われたことがありました。でもその後、理解のある大人たちと出会えたことで自分自身を受け入れてもらえ、世界が広がった。やっぱり環境が人を大きく変えるんだと感じました」
ファッションやスタイルは本来“自由な自己表現”であるはず。しかし現実には、そこに無意識に生まれる社会的な期待や固定観念・偏見が存在しており、そうした社会の枠組みが個人の能力や可能性とは必ずしも一致していない現実が浮かび上がりました。同時に、環境や出会いによって人は変わるという視点も共有され、“どんな場所に身を置くか”の重要性が改めて示されました。
コミュニティが生む新しい価値観
個人の発信はやがて共感を生み、コミュニティへと広がっていきます。メイク、ファッション、音楽など、それぞれのフィールドでの自己表現は、同じ価値観を持つ人々をつなぎ、新しい文化を形成。一方で、急速に進化するテクノロジーや情報社会と、政治や制度とのギャップについても言及されました。
キム・ギュテ
「僕は14歳からメイクを始めました。コンプレックスがたくさんあったので、それを解決したいと思ったのがきっかけです。当時は東方神起がすごく好きで、ジュンスさんがソロデビューしたときのビジュアルに衝撃を受けたんです。もともと親しみのあるメイクだったのに、白髪で白いコンタクトレンズ、ブラックのアイメイクで、誰だか分からないくらい変わっていて。“男性でもこんなに変われるんだ”と思いました。大きく変わったのは、広島のSPINNSで働き始めた頃です。きゃりーぱみゅぱみゅさんが全盛期で、顔中にピアスをつけたり真っ白なメイクをしたりしている人たちがたくさんいて。そこから自分の個性が爆発しました(笑)。当時は欲求を最大限に誇張したメイクをしていて大変なことになっていたんですが、母から“どうせメイクするなら綺麗にして”と言われて、今のスタイルにたどり着きました。
母子家庭で育ったこともあって、昔から女性へのリスペクトが強かったんです。今の僕の活動も、国籍や性別に関係なく、男性にも女性にもなれるようなメイクの楽しさを発信していて。この小さな世界はすごく平和だなと感じています。僕はノンバイナリーなんですが、それをカミングアウトしたとき、ファンが減るかなと思ったんです。でも逆に増えたんです。“そんなギュテくんも大好きだよ”と言ってくれて。すごく寛容なコミュニティだなと思いました」
kemio
「人間って面白くて、結局見た目でしか判断できない部分があると思うんですよ。“女性ってこうだよね”って思っているから男性が女性に強く出れるとか、自分が見たことのないタイプの人が現れるとどうしていいか分からないとか。でも、知らないものや知らない人に出会ったときに、“知りたい”って思うワクワク感って本来すごく大事なものだと思うんです。まさに“Give to Gain”で、人間同士のコラボレーションみたいなものだと思っていて。みんながそれぞれのバックストーリーを聞いて、“自分も何かやってみようかな”って思うきっかけになったらいいですよね」
小野美智代
「最近は中東で戦争が起きるなど、世界情勢が不安定な状況が続いています。でも今日ここに来て“みんな仲間なんだな”と感じ少し、安堵しています。カルチャーや音楽、スポーツ、ファッションには、社会を変える力があると私は思っています。
ただ、今回の日本の衆議院選挙を見ていると、政策のハンドリングが偏ってしまったのが政治的な観点から課題を感じます。本来、政治は多くの人が議論を重ね、意見を交わしながら決めていくものです。しかし、それが十分に機能していないように見えます。その結果、社会の議論や思想が一方向に偏ってしまう状況も生まれています。例えば選択的夫婦別姓についても、29年も前(1996年から)から議論を重ね、実現に向けて進んでいたのに、首相が変わった瞬間に状況が一転してしまいました。今の日本の政治は、多様性の流れから逆行しているような動きも見られ、アメリカで広がっている反DEI(多様性・公平性・包括性の縮小)の波が日本企業にも影響しているのではと不安を感じることがあります。でも、環境が人をつくるのだとしたら、私たちは新しい環境を自分たちでつくっていくことができる。だからこそ、国際女性デーをきっかけに、全国の地域から女性や権利のアイコンとなるアクションを生み出すような取り組みを続けてきました。実際に今年の国際女性デーに向けてジョイセフが開催したホワイトリボンランでは、全国に62のコミュニティが生まれ、5,000人がエントリーしました。参加者は「Run to Empower」のTシャツを着て走り、それぞれの場所でチャリティアクションを起こしてくれました。カルチャーやコミュニティには、人と人をつなぎ、社会の空気を変えていく力があります。だからこそ私たちはその力を信じて、多様性を守り、さらに広げていく必要があると思います」
沙羅・ジューストー
「時代の変化があまりにも速すぎて、社会や政治が追いついていない部分もあると思います。政府もそうですが、世界の状況が一週間で変わっていくような時代に、それに合ったルールや憲法をつくるのは簡単ではないですよね。特に高齢化している日本の政治ではなおさらだと思います。人はなかなか変わらないですし、同じ環境の中だけで議論していると視点も広がらない。一人の人間がその国のすべてを見渡すことは難しい。でも、AIのようなテクノロジーがあれば、その視野を広げる可能性もあると思っています。私はテクノロジー自体にはとても肯定的なんです。ただ、人間の社会のルールがそのスピードに追いついていない。ルールが整っていない中で技術だけが先に進んでしまっているから、フェイクニュースのような問題に怯える状況になっているのかなと思います。
ルールは、いつかはできるとは思います。ただ、今の制度のスピードでは追いつくのが難しいかもしれません。来週には世界が変わっているような時代ですから。100〜200年前の人が一生の中で触れていた情報量を、私たちは今もっと短い期間で得ていますし、これからの世代はさらにそのスピードが速くなると思います。人間のDNA自体は変わっていないのに、情報量だけが増えている。そうなると、人間がサイボーグのように拡張されるか、情報の方がダウンするか、どちらかしかないのかもしれないですよね。ただ、社会を変えるための資金や権力が、まだ女性に十分回っていないという現実もある。もし女性がもっと上の立場にいたら、今とは違う社会になっているんじゃないかなと思いますし、私はそういう未来にも興味があります」
フェイクニュースや多様性の後退といった課題がある中で、「だからこそ、自分たちで環境をつくる必要がある」という前向きなメッセージが印象的でした。
未来をつくる女性の“ロールモデル”の存在と、想像力を育てる教育
セッションの終盤では、女性のロールモデル不足や教育のあり方についても議論が展開。現代の教育やキャリア形成の中で、女性が自身の可能性を実感し、挑戦できる環境はまだ十分とは言えない。また、想像力を育む教育の重要性も語られ、「見たことがないものは、想像できない」この言葉が象徴するように、多様なロールモデルの存在が、次世代の可能性を広げる鍵となることが挙げられました。
沙羅・ジューストー
「私は、友達に『なんでそんなに色々なことにチャレンジできるの?』と言われてきて、私自身も20代は『自力でやるでしょ!』と挑戦してきました。でも、それは単純に『教わったからできた』わけではなく、その分野に関する『想像力があったから』だと思っています。逆にたとえば『宇宙飛行士になるには』という話だと、まったくわからない。環境にいないから想像できないんです。教育の観点で言うと、女性のロールモデルが少ないことが課題です。今は平等だから何でもできると言われますが、実際に女性大統領や女性経営者は少ない。なりたいものになろうとしても、ロールモデルが少なく、想像力が働かないから、摩擦が生じやすいのが現実です。だからこそ、多様な女性のロールモデルを増やすことが、結果的に教育に繋がっていくと思っています」
キム・ギュテ
「自分は母がシングルマザーでとても働き者だったことを尊敬して育ちました。海外旅行に行ったことがない環境だったので、最初は『海外=怖い』という感覚がありました。仕事で海外に行く時も、スタッフと一緒でないと行けなかったんです。想像力だけで自分を導くのは今でも大変で、でも摩擦を乗り越えながら挑戦することが重要だと思います」
kemio
「僕は祖母に育てられたので、とても厳しい躾で育ちました。その影響で、初めて海外に行くときも、心配して反対されるだろうと思っていたので、行く一週間前に言いました(笑)。実際にニューヨークに行ってみると、いろいろな人がそれぞれの思いやエネルギーを持ってぶつかり合っています。質問もしてくれないし、待ってもくれない。だから、嫌なら嫌だと伝えるし、好きなら好きだと表現しないと伝わらないんです。自分の感情や目標に素直でいること、ぶつかり合うことで関係を築くことが求められる。生活のしやすさは日本かもしれませんが、生きやすさはニューヨークにあると感じます。ニューヨークは好きなときもあれば、嫌いなときもあります。嫌なことにブチギレている自分も好きだし、そういう人間らしさや目標、パッションに素直に生きられるのがいいんです。毎日が冒険のような感覚ですね。そういう社会でなくてはダメだと思います。伝えること自体が、人間にとって大事なことなんですよ」
自分らしい生き方を発信すること自体が、誰かの未来の選択肢になる。そんな循環が、これからの社会を形づくっていくのかもしれません。
対話から生まれる、新しい気づき
セッションの締めくくりでは、「対話すること」の価値を改めて共有。異なるバックグラウンドを持つ人たちが集まり、それぞれの視点を持ち寄ることで、日常では得られない気づきが生まれると話されました。議論を通じて生まれた気づきや共感、学びを振り返り、女性の可能性や社会の多様性について改めて考える場となりました。
エリーローズ
「今回の集まりで特に良かったのは、ウィメンズデーを祝うだけでなく、男性も含めて社会をみんなで作る意識を共有できたことです。偏りがあるとハーモニーにはならない。今回、私の中でモヤモヤしていた思いもクリアになりました。話すこと自体がセラピーのようで、共感を得られたことも大きかったです。自分にとって、とても意味のある時間でした」
小野美智代
「今回のトークで、改めてエディションだからこそ出会えたロールモデルたちとの交流の機会、2023年から続くその積み重ねの意義を感じました。ここに集うロールモデルの存在を、若い世代に知ってもらう機会を作る大切さを再確認しました。国際女性デーを通じて、こうしたロールモデルがつながり、その時々のテーマで語り合える場があり、その内容をメディアや個々の発信し続けていく試みが、毎年続くことはとても意味があると思います。今回の内容も含めて、少しずつ社会に伝え形で広がっていくことを期待しています」
kemio
「日本では女性の権利や意見はまだ大きく取り上げられないことが多いですが、今回の場で、女性が日常で感じている環境を知ることができました。男性としても、自分の特権を自覚し、周囲の女性への感謝を改めて考える機会になりました。こうした話を通じて、社会全体の意識を少しでも変えていくことが大切だと思います」
沙羅・ジューストー
「世の中では、主婦や女性が下に見られがちですが、今回のトークを通して、女性の強さや価値は平面的なものではないと改めて感じました。見えやすい情報だけでなく、多面的に女性の力を理解することの大切さを実感しました」
今回のトークは、単なる議論の場にとどまらず、“自分の価値観を見つめ直す時間”となった参加者も多かったようです。多様性を認め合い、声を届けること。その一歩が、未来のスタンダードをつくっていく——そんな希望を感じさせるセッションとなりました。このトークから受け取った想いが、あなた自身の一歩を踏み出すきっかけになりますように。
お問い合わせ:東京エディション虎ノ門https://www.editionhotels.com/ja-JP/tokyo-toranomon/
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