言葉の意味は同じであっても、言い回しが違えば相手に与える印象も変わるでしょう。
たとえば普段の言い回しを少し工夫するだけでも、相手に「知的な人だな」と思わせることができるはず。
今回は、そんな“意味とともに覚えたい知的な言い回し”をピックアップ。
ぜひ読み方と意味を覚えて、使ってみてくださいね。
1.「額ずく」
「額(ひたい)が地面につくほど丁寧にお辞儀をすること」、また「礼拝」を強めた表現でもある「額ずく」。
「ひたいずく」や「がくずく」では誤りです。ヒントは「額(ひたい)」を古い読み方で読むこと。かつては平仮名二文字で読んでいたそうですよ。
そんな「額ずく」の正しい読み方は……
「ぬかずく」です。ちなみに「額ずく」という言葉は、元々「額突く(ぬかづく(ずく)/額を地面に突き当てて礼をすること」からきているそうです。
2.「脂下がる」
思わず「あぶらさがる」などと読んでしまいがちな「脂下がる」。「脂下がる」とは「気取り、構えること」、また「得意がること」を意味する言葉です。
「脂下がる」の由来は「煙管(キセル)の雁首(がんくび)を上に向けて気取ると、煙草の脂が下ること」から。「脂」の読み方がポイントです。
そんな「脂下がる」の正しい読み方は……
「やにさがる」です。「脂下がる」という言葉の意味と読み方はもちろん、「脂」一文字で「やに」と読むこともしっかり覚えておきましょう。
3.「能う限り」
「能う限り協力したい」など「できる限り」「可能な限り」といった意味で用いられている「能う限り」。
「能う限り」という言い回しにおいて、ポイントになるのが「能う」の読み方です。
「のううかぎり」ではなく、正しくは……?
「あたうかぎり」と読むのが正解です。「能う限り」の語源は「あた(当)あう(合)」で、「それをする能力にふさわしい」という意味があります。
ちなみに「不能」の漢文読みは「あたわず」だそう。なかなか初見で読むのは難しい言い回しですよね。もし「能う限り」をさらりと読めたら、知的な印象を持たれること間違いなし!?
4.「黙し難い」
「黙って見過ごせないこと」を意味する言い回しの一つに「黙し難い」があります。
たとえば「君命は黙し難い(君主の命令は無視するわけにはいかない)」などと用いられていますが、問題なのが「黙し難い」の読み方。
「もくしがたい」? それとも「だましがたい」?
実は、そのどちらも誤りなんです。正しくは……
「もだしがたい」と読みます。この「黙す(もだす)」という言葉には「沈黙する」「黙って見過ごす」といった意味があり、「黙し難い」とともに「黙す」の意味と読み方も覚えておくと良いでしょう。
5.「物怪の幸い」
「物怪の幸い」とは「予想外の幸運」を意味する言葉です。元々「思い設けない(想定外の)」の「設けぬ」がなまったことから生まれた言葉だとされています。
思わず「もののけのさいわい」と読んでしまう人もいるかもしれませんが、正しくは……
「もっけのさいわい」です。ちなみに「物怪の幸い」は「勿怪の幸い」と表記されることもあり、「物怪」も「勿怪」も、どちらも当て字だそうですよ。
いかがでしたか? 普段はあまり見聞きしないような難しい言い回しも登場しましたね。そうした難しい言い回しというのは、言葉だけ覚えようとしてもなかなか厳しいかもしれません。
そんな時は言葉と読み方、そして意味も併せて覚えることをオススメします。意味とともに覚えることでより理解が深まり、知識としてきちんと身に着くことでしょう。
参考文献
加納喜光『読めそうで読めない漢字Q&A―もう間違わない!実例集 』講談社
文/大内千明 画像/Shutterstock(Marat Bairamgulov、WAYHOME studio、Flamingo Images、Emily frost、Dragana Jokmanovic)