宮沢りえさん(52)「このままではスカスカな40代になる」30歳で抱いた危機感【パルコ・プロデュース2026『メアリー・ステュアート』主演】
パルコ・プロデュース2026『メアリー・ステュアート』で主演を務める宮沢りえさん。時代に翻弄されながらも、自ら選び、生き抜こうとするスコットランド女王・メアリー。イングランド女王・エリザベス1世と宿命の対峙を繰り広げるその姿は、いまの彼女自身にどんな問いを投げかけているのでしょうか。長く第一線で表現を続けてきた宮沢さんが、役と向き合うなかで感じたこと、そしてこれまでの人生で大切にしてきた“選択の軸”を、等身大の言葉で語ってくれました。
Profile
1973年東京都生まれ。映画・舞台・テレビドラマなど幅広く活躍。映画『たそがれ清兵衛』をはじめ数々の作品で高い評価を受け、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞などを受賞。舞台作品にも精力的に取り組み、表現の幅をさらに広げている。俳優としての活動に加え、新事務所「MOSS」を立ち上げ、新たなステージにも挑戦している。
翻弄されるだけじゃなく、自分の手で掴み取っていく人
――今回、主演を務める『メアリー・ステュアート』の台本を読まれて、まずどんな印象を受けましたか?
これまで、上演され続けている作品と聞いて、「なぜ今も演じ継がれているんだろう?」という純粋な興味がありました。さらにロバート・アイクさん(現代演劇を代表する英国の劇作家であり演出家)が新たに翻案したと知って、「今の時代にどう響くんだろう」と思いながら台本を開いたんです。読んでみると、権力の頂点に立つ人が、何を選び、何を背負って生き抜いていくのか。その問いが、想像以上に今の自分にも近く感じられました。「生ききる」ということは、きれいごとではなく、決断の連続なんだな、と。
エリザベスとメアリーの対比もとても鮮やかで、物語はメアリーの死で終わらない。むしろ、“残されたエリザベスの時間”に、強烈な余韻が残る作品です。特に最後のエリザベスの場面は、読んでいて思わず息を止めてしまいました。観終わったあとも、しばらく心のどこかに残り続ける──そんな舞台になると思います。
――メアリー・ステュアートという女王を演じるにあたって、どんな女性として捉えていますか?
今まさに台本を覚え始めたところなので(編集部注:取材は稽古前)、「こういう女性です」と一言で言い切るのは難しいですね。ただ、強烈な運命のもとに生まれながらも、翻弄されるだけではなく、自分の手で掴み取っていく力を持った人だと感じています。理不尽な状況の中でも、自分の正義を貫こうとする。その強さが印象的です。
「女王である」という人生は、想像だけではわからない
――ご自身と重なる部分はありますか?
似ているというより、「わかる」と思ったのは、思ったことを言葉にしていくところかもしれません。メアリーはとても理論的で、自分の言葉にきちんと決着をつけられる人。私はそこまで理論的ではないですけど(笑)、言葉にしなければ相手には伝わらない、という感覚は共通している気がします。特に、エリザベスと対峙する場面で放たれる言葉の強さには、圧倒されました。台本に書かれている言葉だけでなく、その裏にある感情や思考まで自分の中で満たしたうえで、本番では「演じる」というより、役を“生きる”ところまで辿り着けたらと思っています。
――生まれながらに女王である人物を演じるうえで、どんなアプローチを意識していますか?
普段の役であれば、「どんな食べ物が好きなのか」とか、「どんな道を通ってここに来たのか」といった、日常の細かな部分まで想像します。必ずやらなければいけないことではありませんが、私にとってはとても大切なプロセスです。ただ、生まれながらにして“王である”人の人生は、想像だけでは掴みきれない部分も多い。だからこそ、その人がどんなふうに扱われ、どんな言葉を受け取りながら生きてきたのか。周囲との関係性の積み重ねから、人物像を立ち上げていきたいと思っています。
もうひとつ考えているのは、生まれながらに女王だった人と、努力して女王になった人の違い。女性として政治のトップに立ち、国を治め、人を惹きつけていく。その強さの源がどこにあるのかを、今回の役を通して探り続けていきたいです。
若さだけでやっていけるわけじゃない、と悟った瞬間
――メアリーは、与えられた立場の中で“選ぶこと”を手放さなかった女性だと感じました。
宮沢さんご自身が、これまでの人生で大切にしてきた選択の軸は何でしょうか。
30歳で初めてNODA・MAPに出演したとき、ひとつの感覚がはっきり芽生えたんです。
「このままだと、自分はスカスカな40代になるな」って。その舞台には、本当にすごい俳優さんたちがいて。その中に立った瞬間、自分に足りないものを、いい意味で突きつけられた気がしました。若さだけで、この先もやっていけるわけじゃないな、と。
40代、50代になったときに何が残るかを考えたら、やっぱり経験だと思ったんです。だから当時は、正直自信がなくても、舞台の仕事はできるだけ引き受けようと決めました。大変でしたけど、いい作品に出会えて、その分だけ確かな経験が積み重なっていった。40歳になって振り返ったとき、「楽じゃないほうの道を選んでよかった」と、心から思えたんです。
──その“選択”を、特に強く意識されたのが30代だった、ということですね。
そうですね。楽な道と、楽じゃない道があるなら、私は楽じゃないほうを選びたい。
5年後、10年後に残るものが、まったく違うことは、もう体験済みですから。その感覚は、50代になった今も変わりません。だからこそ、今回『メアリー・ステュアート』を受けたんだと思います。これほどプレッシャーの大きい役は、正直そう多くない。でも、逃げ出したくなるほど大変なことを乗り越えた先にしか、得られないものがある。その連続が、今の自分をつくっている気がしています。
Information
パルコ・プロデュース2026『メアリー・ステュアート』
時代に翻弄されながらも自らの人生を生き抜こうとしたメアリー・ステュアートと、君主として生きることを選んだエリザベスⅠ世。相反する選択をした二人の女王の対峙を通して、「何を選び、どう生きるのか」という普遍的な問いが浮かび上がる。演出は 栗山民也。メアリー役に 宮沢りえ、エリザベスⅠ世役に 若村麻由美。実力派キャストが描く王室悲劇。
東京公演 2026年4月8日(水)~5月1日(金)@PARCO劇場
福岡公演 2026年5月9日(土)~5月10日(日)@J:COM北九州芸術劇場
兵庫公演 2026年5月14日(木)~5月17日(日)@兵庫県立芸術文化センター
愛知公演 2026年5月21日(木)~5月23日(土)@穂の国とよはし芸術劇場PLAT
北海道公演 2026年5月30日(土)~5月31日(日)@カナモトホール(札幌市民ホール)
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撮影/HAL KUZUYA ヘアメーク/菊地美香子 ( TRON ) スタイリング/佐々木敬子(AGENCE HRATA) 取材/池田鉄平 編集/越知恭子
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