柄本佑さん(39)夫婦の家事分担は「“ちゃんとやる”より、“回す”くらいの感覚で」

家事も仕事も、毎日を回すだけで精一杯。そんな日々の中で、ふっと心が軽くなる言葉に出会いました。柄本佑さんが語ってくれたのは、家事を“分担”ではなく、生活の延長として捉える感覚。できない日があっても、無理に埋め合わせなくていいという考え方。話題は夫婦のかたちから、パートナーの選び方、40代をどう迎えるかへと広がっていきます。柔らかくて、芯のある言葉を伺いました。

Profile

2001年、映画『美しい夏キリシマ』(03)で主人公の少年役に抜擢され、俳優デビュー。『きみの鳥はうたえる』などで第92回キネマ旬報ベスト・テン主演男優賞等を受賞。近作に映画『火口の二人』、『痛くない死に方』、『先生、私の隣に座っていただけませんか?』、『ハケンアニメ!』、『シン・仮面ライダー』、『春画先生』、ドラマ「空白を満たしなさい」、「光る君へ」など。公開待機作に『メモリィズ』『黒牢城』『最後の遊戯 LAST DANCE 』がある。

家事は“分担”じゃなく、生活の延長

――CLASSY.読者は共働き夫婦も多い世代です。家事や役割分担について、夫として意識していることはありますか?

僕は家事を“分担するもの”というより、生活の延長として自然にやる感覚が強いかもしれないです。できるほうが、できるときにやる。それくらいの距離感が、自分には合っている気がしています。一人暮らしを始めたのは19歳の頃。専門学校を卒業してこの仕事一本になったばかりの時期で、正直、足元が定まらない感覚がありました。久しぶりに同級生に会うと、みんなスーツ姿で社会人として働いている。一方で僕は、Tシャツに短パン、下駄みたいな格好で「今日は映画でも観に行こうかな」って生活をしていて(笑)。

今振り返ると、「自分って何者なんだろう」と落ち込んでいた時期だったと思います。学生という立場がなくなって、社会と自分をつないでくれていたものが外れた感覚があった。そこで本能的に始めたのが、生活をちゃんと整えることでした。万年床にしない。洗濯物は畳む。食器はすぐ洗って、シンクをきれいにしておく。そんな小さなことを続けるうちに、気持ちが少しずつ楽になっていったんです。「生活者として生きている自分」が、もう一度社会に戻してくれたような感覚がありました。

――それって、家事というより「自分を立て直す時間」だったんですね。

そうですね。だから今でも、洗濯物を畳むのも洗い物も全然苦じゃないです。むしろ好きなくらいで。家事を“分担する”というより、生活の流れの中で自然にやっている、という感覚ですね。

「ちゃんとやる」より、“ちゃんと回す”

――その感覚は、今の夫婦生活にもつながっているんですね。忙しい時期ほど、家庭の空気を整えるために意識していることはありますか?

うちはお互い働いているので、昔から「できないときは、できなくていい」って思っているかもしれないです。できるときにやればいいし、無理な日は無理でいい。ちゃんと毎日完璧にやろうとすると、どこかで息切れしちゃう気がして。

――頑張りすぎない、ということですね。

そうですね。ただ、だからといって家のことを全部「まあいいか」で放っておくのも、少し違うなと思うんです。家庭って仕事とは違うけど、踏ん張らなきゃいけない瞬間はありますよね。空気が重くなりそうなときとか、どちらかが余裕をなくしているときとか。そういう場面では、できるほうがやる。ただし、必要以上に背負い込まない。「ちゃんとやる」よりも、「ちゃんと回す」くらいの感覚で、最低限の無理で済ませるようにしています。

迷ったときほど、自分の感覚を信じていい

――柄本さんから見て、パートナー選びに迷う女性に、「ここは大事にしてほしい」と思うポイントはありますか?

難しいですね(笑)。でも僕、パートナー選びに限らず、仕事でも人生の選択でも、最後に頼りになるのって“勘とノリ”だと思っているんです。「なんかいいかも」と思えるか、「なんか違うかも」と引っかかるか。そういう自分の肌感覚は、けっこう信頼しています。もちろん、頭で考えることも大事だと思います。でも、最後まで理屈をこねくり回したところで、やってみないと分からないことって多いじゃないですか。だったら最終的には、「よし、こっちに行ってみよう」って自然に思えるかどうか。その感覚を大事にしたい。

実際、僕自身も妻と最初に話したとき、どこかで「この人と結婚するかもな」って思ったんですよね。理由をきちんと説明できる感じでもなくて、ただふっと、そう思った。逆に、「うーん…」ってどこか引っかかる感覚があるなら、一度立ち止まってみてもいいと思います。無理に答えを出そうとしなくていいし、決断できない自分を責めなくていい。
「今の自分がどう感じているか」にちゃんと耳を傾けていれば、次に進むタイミングは、自然とやってくる気がしています。

40代は、地に足をつけて面白がれる大人でいたい

――今年は40代に突入しますが、これからどんなふうに歳を重ねていきたいですか?

生活も仕事も、ちゃんと地に足をつけたまま歳を重ねていきたいですね。そのうえで、「楽しそうだな」と感じたものには、素直に手を伸ばせる自分でいたい。面白そうなほうに、自然と惹かれていく感覚は、これからも大事にしていきたいと思っています。

実は、小学校の卒業文集に「将来の夢は映画監督」って書いていたんです。だから今年に限らず、できるだけ早いうちに、長編映画を一本つくれたらという思いはずっとあります。
年齢を重ねるほど、いろんなものを柔らかく受け止められるようになる。そして、ちゃんと面白がれる余白を持っていたい。40代は、そんな大人でいられたらいいなと思っています。

Information

映画『木挽町のあだ討ち』2月27日公開
直木賞・山本周五郎賞をW受賞した永井紗耶子による同名小説を映画化。芝居小屋の囃子が響く江戸・木挽町を舞台に、雪の夜に起きた“見事な仇討ち”の裏側から、誰も知らなかったもう一つの真実が静かに立ち上がっていきます。江戸の空気感と映像美が溶け合う、余韻の残る上質なエンターテインメント作品です。

【衣装協力(ジャケット)】HERILL その他は私物
【SHOPLIST】NISHINOYA  03-6434-0983

撮影/You Ishii ヘアメイク/星野加奈子 スタイリング/坂上真一(白山事務所) 取材/池田鉄平 編集/越知恭子

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最新号 202603月号

1月28日発売/
表紙モデル:堀田 茜