新卒のタイミングでは一般的なのに、転職の際には機会の少ない、OG訪問。でも転職の大きな理由のひとつ“社内にロールモデルがいない”を解消するには実際に働く先輩の様子が知りたい!そんな気持ちに応えるべく、今回はHRBP(人事ビジネスパートナー)の明石さんに取材をしました。
変化が早い時代。
自分の軸を持ったキャリアの選択も手
今回のOGは...明石 真理恵さん
日本オラクル株式会社
Senior HR Manager Japan
明石 真理恵さん
大学を卒業後、HRマネージメントを学ぶため、オックスフォード・ブルックス大学院へ。現地でHRとしてのキャリアをスタート。仕事服は基本モノトーン。会社終わりに予定がある日はDeuxième ClasseのパンツにANNIKのシアーブラウスで華やかに。
明石さんHISTORY
・22歳 日本の大学を卒業後、オックスフォード・ブルックス大学院へ進学
・24歳 HRマネージメントの修士号を取得 現地のスタートアップでインターンを開始
・25歳 インターン先に正社員として就職
・27歳 日本食メーカー企業に転職
・30歳 帰国。PwC コンサルティング合同会社に入社
・33歳 WeWork japanに転職
・35歳 日本オラクル株式会社に転職
人の成長なくして企業の成長なし。
人事に携わることに誇りを感じています
私がHRに興味を持ったのは、大学3年のイギリス留学時に建設業の授業を受けたことがきっかけでした。建設業界にはホワイトカラーやブルーカラー、コントラクターなど複数の労働形態が存在しマネージメントが難しいため、1年生から“人的マネージメント”を学んでいました。より専門的に知識を深めたかったのですが、当時国内では、HRマネージメントの学位を取得できる大学院が見当たらず、イギリスの大学院へ進学。これまで5社経験していますが、職種は一貫してHR。帰国後は、より多くの日本の事例を見るために人事組織専門のコンサルティングに携わったり、人事周りの業務を網羅する目的でスタートアップに入社したり、と戦略的に転職をしてきました。現在在籍する日本オラクルは、企業・官公庁向けクラウドおよびAIに関し、販売からサポートまでの体制を自社で備える企業であり、そのぶん、たくさんの部門が存在します。それぞれの部門やその時々の戦略にあった関係者との円滑なコミュニケーションを学び、HRBPとしてのスキルを上げるべく、5年前に入社を決めました。
部門のリーダーと対峙する立場。経営目線も求められます
HRBP(Human Resources Business Partner)という仕事は会社によって内容が大きく変わることもあり、私が経験してきた中でのお話になりますが、部門ごとに専任の人事を配置し、リーダーと連携しながら事業計画や達成目標を理解し、人事戦略を提案、サポートするのが主な業務になります。例えば、「会社で長く働き続けてほしい」という経営課題に対して、「勤め続けるイメージを持ってもらうには、どんなキャリアを示すべきか」をリーダーと考えその上で人事視点での提案をしたり、部門のメンバーがキャリアの悩みを正直に話せるようにその上司をコーチングしたり。時にはリーダーのビジネスパートナーという役割も担うので、経営目線も必要です。また、リーダーとメンバーの間に立つ、橋渡し的な役割は、随所で求められます。従業員や経営者、いろんな立場で考える力も求められます。毎年実施している、社員満足度調査にもHRBPは深く関わっており、結果をそのまま利用するだけではなく、組織課題を念頭におきながらデータ分析を行います。また、リーダー以外のメンバーでより具体的に現場の声を聞くためのセッションを開き、その内容を踏まえてリーダーと職場環境の改善に取り組んだり、働きかけを行うのも私たちの仕事です。
コミュニケーションを丁寧に積み重ねて信頼を築いていく
この仕事で一番大事なのは、信頼関係。「この人なら話してもいい」と思ってもらえる信頼関係を築くことは、どのステークホルダーと関係を構築する上でも不可欠です。前出のセッションにおいて、ざっくばらんに話してもらえるのは、お互いの信頼があってこそ。そのために心掛けているのは、ひとつひとつのコミュニケーションを丁寧に取ること。頼まれたことをきちんと遂行する、機密情報は口外しない。当たり前のことを積み重ねることで、信頼は築かれていくもの。「人事は、白より白くなくてはいけない」という言葉があるほど、クリーンさが要求される職種でもあります。例えば、調査に関与したり、厳しい意見を相手に伝えなくてはいけない事態も起こり得る。また、会社が成功するための人事戦略の意思決定が、社員の望む形に着地しない場合もあり、必ずしも人に感謝される仕事ではありません。だから、こちらが疑われるようなことはしてはならないし、人との距離感の見極めも重要。明確な正解が見えない中で、組織を作り上げていく仕事でもあるので、その状況を楽しめるマインドが大切だと思います。
【Q&A】
意外と知らない人事業界&HRBPのリアルを聞いてみた!
Q1.HRBPのやりがいって?
A.会社と個人の成長をwin-winで感じた瞬間
リーダーが決めた戦略に対して、「人と組織の観点でどう寄与していくか」を考えるのがHRBPの責務。なので、自分の提案やサポートでビジネスも人も成長できたのを目の当たりにすると、達成感があります。もちろん、仕事の相談に乗っていた社員のキャリアが上手く進んでいるのを見るとうれしく感じます。でも、私の場合は、「人に感謝されたい」よりも「会社と人の成長」の方がモチベーションに繋がります。また、社員の自立性を育てるのも私たちの役割。自ら手を挙げ、主体的にキャリアを切り拓いている社員の存在もやりがいになります。
Q2.ワークライフバランスは?
A.自分で仕事をやりくりし、勉強時間も確保できます
旅行を楽しむ社員も多く、業務や役割に応じて調整しながら、休暇を有効に活用する文化があります。40歳を迎える自分を盛大に祝いたくて、1月は2週間の休暇を取って、女友達とアフリカ旅行へ。勤務時間よりも仕事のアウトプットが重視されるので、繁忙期ではない時期は、原則9時〜17時でほぼ残業もないように調整も可能なため、仕事終わりで2年間講座に通い、社会保険労務士の資格を取得。振り返って計算すると、1年間で500時間も勉強に充てていました。アウトプットの質を落とさず効率的に働けるか考えた上で、自分で勤務時間を調整することで働きながらのリスキリングも可能だと思います。
Q3.一日のタイムスケジュールは?
働き方は職種や部門の裁量次第で様々。最も効率的にベストなパフォーマンスを発揮できるスタイルが、部門ごとに決められています。私は現在、兼務でアジアのインクルージョンチームにも所属しており海外とのwe b会議は自宅の方がディスカッションしやすいので、1日にまとめて在宅で対応。ビジネスリーダーや、人事内の定例会議があるときは基本出社しています。
Q4.お仕事での必需品は?
A.キレイめローファーを履くと自然とスイッチON
スマイソンの名刺入れは、イギリス時代に手に入れて10年以上愛用。毎日歩いて出社するため、きちんと見えて歩きやすいローファーが通勤の定番。最愛ブランドは、トッズとJ.M. WESTON。服装は自由ですが、マネージャークラスと会話する日は、ジャケットでキリッと整えます。
Q5.身につけた方がいいスキルは?
A.特に資格も留学経験も問われません
資格や留学経験はいりません。スキルとして備えたいのは、人事に関する経験とコミュニケーションテクニック。対面かリモートか、電話かメールか。ケースによってより効果的なコミュニケーションの方法を見抜く力は必須です。
Q6.他業種からの転職も可能?
A.20代後半はまだまだチャンスがあります
新卒や後輩育成を経て、育てる喜びを知って、エンジニアや営業から人事の世界に入ってくる人は多くいます。私のように人事だけを続けている方が珍しいかもしれません。ただ、キャリア採用は即戦力が求められるのも事実。職種を人事に変えたいのならば、一度社内でポジションを探って経験を積んだ方がベター。
ズバリ!
この業界に向いてるのはどんな人ですか?
①人に好かれようとしない人
上層部のビジネス視点を理解して人事戦略を進めていく中では、全員の期待通りに進まず、社員にとってはネガティブな話を伝える場面も。なので「人が好き」や「人に感謝されたい」という理由だけで人事を選ぶことは、留意が必要です。常に中立的な立場を求められますので、適度な距離感を保てると取り組みやすいです。
②変化への適応スピードが早い人
変化のスピードが早く、3年後を予想することが難しい今、自分の目標やキャリアを逆算して考えることが困難な時代に突入したと実感。一方で、そのスピードに乗って新たに必要とされる人材や求められるロールを提案できると強みになると思います。
③学ぶことが好きな人
複数の部門を担当することもあり、部門にまつわる学びは不可欠。学習欲が高かったり、知識のアップデートが好きな人は向いています。対人で仕事する中では、相手の機嫌に振り回されることもありますが、上手くいかないときこそ割り切って、俯瞰する姿勢も重要です。
撮影/杉本大希 取材/坂本結香 編集/小林麻衣子 再構成/Bravoworks,Inc.
※CLASSY.2026年2月号「次の扉をノック!大人のOG訪問」より。
※掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。
Magazine