「恋愛において男性はみんなどこかダサい(笑)」【麻布競馬場さん出演!アンソロジー『それでもまた誰かを好きになる』座談会③】

CLASSY.ONLINEで連載していた「うまくいかない恋」がテーマの短編が、アンソロジーとして文庫になります! 2026年2月10日の発売に先駆けて、著者のおひとりである麻布競馬場さん、読書インフルエンサー・マオさん、CLASSY.読者のNさんによる、ご自身のリアルな恋愛体験を絡めた座談会をしてもらいました。

デート先が健康ランドだった時「うまくいかない」と感じた

 じゃあ次の質問で、これは「うまくいかない恋」だなと思うのはどんな恋愛だと思いますか。

N 私は温度差がありすぎる恋愛に直面した時に、これはうまくいかないなっていつも思います。会いたいと思う頻度とか、そこの間隔が長すぎても、逆に3日後とか言われてもえっ、てなる。そこの温度差があるって難しいなといつも思っていて。あとありきたりですけど、男性が主体すぎる恋愛。男性が都合がいい時に連絡するのもそうですけど、こっちが会いたい時に会えないのも、なんか振り回されてるようで、気持ちの悪い恋愛をしてるなっていう気になります。

 居心地悪いですよね。イーブンじゃないっていう状況が。粗雑に扱われてる感って一番嫌じゃないですか。友達で、気になる子に「明日また会おう」って言ったらドン引きされたって人がいて(笑)。

――でも相性がいいとそれでトントン拍子でいく人もいるらしいですけど…。

 僕が前に付き合った子はそうでした(笑)。

マオ  それはすごい。

 レアケースだと思います。

N 行く場所の感覚って、意外と大事だなと思うことがあります。以前、まだ関係性が定まっていない方と健康ランドに行ったことがあって。付き合ってからなら好きな場所なんですけど、その時は「今じゃないかも」と感じちゃいました(笑)。同じ場所でも、関係性や距離感によって受け取り方が全然違うんだなと。そういう小さな違和感を無視しないことも、恋愛では大事だなと思います。

 デートの場所で健康ランドは上級者向きだな。かといってね、なんか30代になって水族館なんか行くのも結構しんどいです。

――私も前、大人になってから水族館デートに誘われて恥ずかしかった時に、この人とはうまくいかないんだろうなって思いました(笑)。

 「ダサいデートアンソロジー」とか作ってほしいです(笑)。

――今の麻布さんの話を聞いて思ったんですけど、ダサい恋愛とかダサいデートって思うのってどっちかというと男性側視点な気がします。

 男の方がダサいダサくないって気にしますね。かといってダサくない恋愛なんてないですから。

――なんかダサいってどちらかが思っちゃった時点で、もううまくいかないんでしょうね。

 今回もダサい男を書いてるのってカツセマサヒコさんと僕だけですもんね。

マオ  やっぱり魅力的な男性が出てくるなと思うのは、女性が書いてるのが圧倒的に多い。

 なんでなんですかね。ちゃんと理想を持てるからですか?それとも今ある現実を受け止められるからなんですか。

マオ  ここをくすぐられる、っていうのを女性の方が書けるんじゃないかなあ。

N  そうかもしれないですね。

 じゃあ、女性作家の恋愛小説を読んでるとデートが上手くなると。それはそうかも。

――マオさんの「うまくいかない恋」はどんなのですか。

マオ 私の話だと、結構カエル化することが多くて。付き合ってる途中で唐突に来る。きっかけっていうきっかけがないんですけど、飽きるってことだと思うんですよ。私がもう好きじゃなくなったっていうことだと思うんですけど、刺激というか、そういうのがなくなったなと思ったら、もうそこですっぱり。手も繋ぎたくないし、ちょっともう触らないでほしいみたいな…。そういうのがなんか続いてて、ちょっと怖いんです、自分が。なんでそうなっちゃうんだろうって…。

――そう考えると、顔で選ぶ理論は究極正しいのかもしれない(笑)。顔が好きである限り、生理的に気持ち悪いとかもなさそうな気が。麻布さんはどうですか。

 今回男性のダサさについては本当に考えました。カツセさんと2人で男性作家として参加してみて、みんなどこかダサいんだなっていうのを改めて感じました。なんでみんな密室の関係にすらダサいダサくないを持ち込んじゃうんだろうなとか。お互いにダサさを許容すれば別にいいわけじゃないですか。でもやっぱり男性って外の目とか気にして生きてるんだなって、すごいもやっとしましたね。そういうところがなんか恋愛をよりこんがらがらせている気もする。2人で飯作るのとか、彼氏ができた瞬間にもう友達と遊ばなくなる女の子とか、怖いんですよ僕。

――逃げ場がなくなる感じがするってことですか。

 そう。で、向こうの熱量は高いんですよ。私にとって人間関係は100パーセントあなただからって言われるけど、こっちは他にもあるんですよね。大学時代の友達と仲良かったり、職場の人間関係があったりとかで、世界を1個にする勇気がないんですよ。

――多分その子は友達もきっと他にもいるし、なんなら他の男性の知り合いもいるはずなんですけどね。

 俺の方が世界が広いって、なんか変な自負があるような気もしますね。

――なるほど、難しいですね。そこの感覚が合ってないと。この子は自分と同じぐらい他の世界を持ってるなって麻布さん的に思える子だったらいいけど、世界の数が違うって思っちゃうとうまくいかなそうです。

 ほんとに恋愛ってとんでもないなと思いまして。今はジェンダーを問わない恋愛もありますけど、考え方も来歴も違う人間が、なんかわからないけど1対1の関係をあと何十年も作っていかなくちゃいけない。

マオ 大学の友達と結婚した人とか、ほんとすごいなと思います。

 そこでよかったんか、ってなりますもんね。結局周り見てても、僕今2巡目って呼んでるんですけど、1回結婚してまた独身マーケットに帰ってきてくれた人たちを見てると、やっぱりみんなモテるんですよ。1回結婚する意思と能力があるから。

マオ 私も女の子の友達で、1回離婚した友達はめっちゃモテてます。なんか全部経験してきた感じで。

バレンタインのタイミングでぜひ愛について考えてほしい

 じゃあ最後に、この本をどんな人に読んでもらいたいと思いますか。

マオ やっぱり小説に出てくる年齢層の人。20代後半から30代ぐらいですね。

 多分一番リアルに読める年頃ですよね。

N 失恋をした方や、心に傷を負った経験のある方にはもちろん読んでいただきたいですし、結婚生活を送ってる人や、恋が実っている人にも手にしてもらいたいです。今そばにある穏やかな日常や幸せが、決して当たり前のものではないと感じるきっかけのひとつになるんじゃないかなと。大きな葛藤やドラマがなく今に至った関係であっても、その積み重ね自体が大切なものだと思うので。

 確かに…。友達からは教えてもらえない話がいっぱい書いてある。(恋愛の)マニュアル本にもないような。耳がじんと熱く痛くなりながら読む感じってなかなかなかったと思うので、今恋愛で悩んでる人でもいいし、結婚してる人でもいいし、結婚するかどうか悩んだ結果やめた僕みたいな人間でもいいんだろうし。

マオ  恋の場数がある人だとより楽しめますね。あとはやっぱりお仕事を頑張っている人に読んでほしいかな。

 もともとweb連載だったっていうところもあるんでしょうけど、今の空気が反映されてるなと思って。世代的にも近い人たちが多くて、そういう人が書いている小説なので、今ここで読むことの意味がすごくある。当たり前に働いてるけど、別にそれが楽しいわけでもないし、友達がたくさんいるかっていうとそんなこともなく、家で寝転がってNetflix見て、恋愛もうまくいかないし、アプリやる元気もない…。

マオ  ピカピカキラキラ充実な人は出てこないです。

 誰もいなかったですね。

――麻布さんは作家として参加してみて、どうでしたか。

 昔は割と職場結婚して寿退社して、みたいに人生の走るトラックがみんな同じだった気もしますけど、働き方とか出会い方も含めて、今一人一人が孤独に恋愛してるイメージがすごく強いんです。なので完全に寄り添う小説っていうのは、もう自分で書くしかないけど、みんなが共通して悩んでることとか、それでもなお苦しまなくちゃいけないことってまだ残ってる気もして。そういう時にこういう短編集を読むと、救われた気になるし、刺された気にもなる。自分が今直面してるモヤモヤしてるものとか、息苦しさが言葉になって輪郭を持つような、やっと言語化されたような感じがします。CLASSY.読者の方にも、それ以外の方にも、婚活疲れしている30代男性とかにも(笑)、読んでほしいです。

マオ  この8名全員の作家さんの本を読んでるっていう人が意外といなさそうなので、読んだことない方の作風に出合えるのがいいです。

 発売は奇しくもバレンタイン4日前という。大人になるともうバレンタインってそんなにありがたみがないというか、最近職場でももうチョコ配るのやめようってなってるじゃないですか。でもやっぱり改めて年に1回愛について考えるのって、バレンタインだと思うので。この本って今を書いた本なので、やっぱりそれを今この時代の空気で読んでくれたらいいなと思います。でも一方で、多分10年後読むとちょっと苦笑いしながら読める本でもあると思うんですよ。こんなことで悩んでたんだっていう、あるいはこの10年間何も変わってなかったんだなってなるところもあると思う。自分の恋愛の現在地点とかを確かめるいいきっかけになる気がするので、ちょっとトリッキーな人はこれバレンタインに贈っても面白いかもしれない(笑)。

N たしかに!

マオ いいですよね。おしゃれ(笑)。

 ちょっと苦めのチョコか何かと一緒に贈っていただいたら(笑)。だいぶ文化的なバレンタインです。

――ありがとうございます(笑)。

麻布競馬場(あざぶけいばじょう)
1991年生まれ。会社員。覆面作家としてXに投稿した小説が話題に。2022年9月に自らの投稿をまとめた短編集『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』で小説家デビュー。Amazonの文芸作品の売上ランキングで1位を取得する。2024年『令和元年の人生ゲーム』で第171回直木三十五賞候補に初ノミネート。

マオ
1997年生まれ。書店員として働きながら、アカウント名@maomao_bookでSNSで日々のリアルな読書記録を発信し、同世代の読者から厚い支持を得る。Instagramでは「書店員と書店に行く」同行ツアーを実施中。

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CLASSY.ONLINEで連載された短編が待望の文庫化! とびきり不幸でもないけれど、完璧な幸せでもない――そんな「30代」を切り取った、人気作家たちによる「うまくいかない恋」がテーマのアンソロジー。

(著者:一穂ミチ、麻布競馬場、砂村かいり、こざわたまこ、田中兆子、朝比奈あすか、千加野あい、カツセマサヒコ)

定価814円(税込)

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構成/前田章子

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最新号 202603月号

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表紙モデル:堀田 茜