山崎怜奈さん(28)「父の言葉通り、20代は忍耐と辛抱だった」確立した不安との向き合い方

20代は楽しいだけじゃない。焦りも迷いも、泣きたくなる夜だってある。

山崎怜奈さんの20代も、そんな揺れの連続だったと言います。挑戦、責任、肌との奮闘、そして“自分らしさ”を探す日々。30代を前にした今、彼女は「未来の自分のために、今日できること」 を静かに積み重ねています。その等身大の言葉には、読者の背中をそっと押してくれるヒントが詰まっていました。

Profile

1997年東京都生まれ。慶應義塾大学卒。2013年に乃木坂46の2期生として加入し、2022年7月に卒業。在籍中から知性と語り口の巧みさで注目を集める。TOKYO FM「山崎怜奈の誰かに話したかったこと。」のパーソナリティを務めるほか、報道・教育番組への出演、エッセイやコラム執筆など多方面で活躍。新しい時代の“語り手”として注目を集めている。

20代は長かった。でも、その“積み重ね”が今の私をつくった

――CLASSY.の読者も山崎さんと同じ20代後半です。山崎さんご自身がこれまでの20代を振り返ったとき、「あの時頑張ってよかった」と思える瞬間はどんなときでしょうか?

20代って本当に長くて(笑)、濃い時間がぎゅっと詰まっていたなと思います。大学と仕事の両立、卒論、グループ卒業、ラジオの帯番組、エッセイの連載…さらに初めての海外や一人旅もすべて20代でした。

その中でも、自分の名前を冠したラジオ番組を担当したことは大きかったですね。21歳くらいから「座長」として現場に立つ経験をさせていただいて、自分の発言や判断が番組全体に影響する責任を初めて強く感じました。それが今の基盤になっている気がします。

――責任やプレッシャーとは、どう向き合ってきたのでしょうか?

不安になることはもちろんあります。でも私は、考え続けているだけだと不安が増幅してしまうタイプなんです。だからこそ、頭の中で曖昧に抱えずに、いったん“見える形”に落とし込むようにしています。

たとえば新しく始まった番組では、オンエアのあとに自分で採点していました。「ここは良かった」「ここは反省点」「次はこう直す」と書き出し、ノートに丸やバツをつけて次の収録前に必ず見返す。忘れっぽくても改善できるように、自分なりの仕組みをつくっていました。指摘されたことも、自分が気づいた違和感も、そのままにしないでメモに残す。私は心配性なので、今できる準備を全部することで安心したいタイプなんです。プレッシャーに押されそうな時も、その積み重ねが私を支えてくれた気がします。

流行より“ずっと好き”。私を支えてきた服たちの話

――今日も素敵な衣装とメークですが、“自分らしく”あるために、ファッションやメークで意識していることはありますか?

私はもともと、“長く着られるもの”が好きなんです。流行よりも、「これを何年後も好きでいられるか」を基準にしています。食べ物や香りの好みがあまり変わらないのと同じで、服も一度しっくりくると、自然と長く付き合うタイプですね。

少し前に、ニットブランド「ODAKHA」と(作家・画家の)大宮エリーさんのコラボレーションで作られたカーディガンがあって。発売されたのは、大宮さんが亡くなられた後だったんですが、「あのときの思いや空気が残っている服」だと感じて、手元に置いておきたいと思いました。誰かの時間や、自分の記憶が重なっていくものって、簡単に手放せない。だから昔から愛用しているデニムや帽子も、今も変わらず大切にしています。

――若いころからファッションが好きだったんですね。

小学生から中学生の頃、ティーン誌を読むのが好きで、誌面に載っているファッションに憧れていました。背が高かったこともあって、「どうせなら服をかっこよく着たいな」と思うようになったんです。

当時買ってもらったスキニーデニムは、本当に自信をくれた1本でした。今はサイズが合わなくて手放しましたが、「それを着ているときの自分」が好きだった感覚は忘れられません。だからこそ“自分を支えてくれた服”は、できるだけ手元に残したいと思うんです。

――頑張った日の“自分へのご褒美”として、ファッションアイテムを買うことはありますか?

実はあまり“モノをご褒美にする”タイプではないんです。どちらかというと旅行に行って、その旅先で気に入ったものを買うことが多いですね。最近も長谷川あかりさん、三宅香帆さん、梶真梨子さんと4人で弾丸で金沢に行って、みんなに選んでもらった九谷焼のピアスを買いました。思い出とリンクしているアイテムが好きなんです。

――日常で使っているものにも、そうした背景があるんですね。

今使っているキーケースは、母とお揃いで。「キーケースと財布だけは、きちんとしたものを使いなさい」と言われて、一緒にルイ・ヴィトンに行って選びました。たまたま同じ色に惹かれて、色まで一緒。中のイニシャルだけ違うんです(笑)。日常的に使うものほど、そういう小さな背景があると大切にしたくなりますね。

肌は努力の結果じゃなくて“向き合い方”。そう気づけた8軒目の皮膚科

――今日お会いして、お肌が本当にみずみずしくて。忙しい日々の中で、どんなスキンケアをされているんですか?

ありがとうございます。夜遅くまで起きていることも多いので、とにかく「乾燥させないこと」だけは徹底しています。韓国ブランドのミスト状化粧水をデスクに置いて、眠いときや気分転換したいときにシュッとひと吹き。続けやすいケアが好きなんです。

でも実は、10代の頃から肌荒れにかなり悩まされていて…市販のスキンケアを試しては合わず、を繰り返してきました。今通っている皮膚科は8軒目で、やっと自分に合う先生に出会えたんです。ホルモンバランスの治療を始めてから、肌が見違えるように落ち着きました。「ニキビはただの肌トラブルじゃない。専門家に診てもらうのがいちばんの近道」だと身に沁みて実感しましたね。

――そんな積み重ねがあったとは驚きました。

仕事柄“肌がきれいで当たり前”と思われがちですが、10代の私は寝不足・栄養不足・ストレスで本当にボロボロでした。だからこそ今は、サプリで栄養を補ったり、外からは加湿・内側からは水分補給を意識して、自分の肌に無理をさせないようにしています。…とはいえ、忙しすぎる日はメークを落とさず寝ちゃうこともあります(笑)。

でも一番の敵はストレス。忙しさで帰宅が遅くなり、正直メークを落とすのも億劫な日は、「まあいっか」と無理をしない。その代わり、翌朝はきちんとケアしてリセットします。肌が整うと気持ちも整うので、自分のコンディションを立て直すための習慣ですね。

30代はきっと“解放の年代”。だからこそ、未来の自分のために整えておきたい

――山崎さんも数年後には30代を迎えられますが、今「30代」にどんなイメージを持っていますか?

あと2年くらいで30代ですが、父に冗談半分で「20代は忍耐と辛抱だ」と言われていて…ふたを開けてみたら、本当にその通りだなと感じていて(笑)。やりたいことは増えていく一方で、乗り越えるべきハードルや “20代だから”という見られ方もまだまだあるなと。

でも、周りの少し年上の友人たちが30代を楽しそうに過ごしているのを見ると、自分もそうなれたらいいなと思います。そのためにも、健康を過信しない意識はこれからも大切にしたいですね。

――健康面で気をつけていることはありますか?

定期的に病院に行くようにしています。婦人科や皮膚科はもちろん、人間ドックも受けています。同世代でも婦人科系のトラブル、たとえば卵巣嚢腫などを経験している友人が増えていて、もう他人事ではないと感じることが多くなりました。

自分がこれから結婚するのか、誰かと家族になるのか──どんなライフステージを選ぶのかは、まだはっきりとは見えていません。でも、将来「こう生きたい」と思えた時に、なるべく多くの選択肢を持っていたい。そのためにも、今の自分の身体を信じすぎず、変化をきちんと見つけてあげることが大切だと思っています。“未来の自分のために今できること”は、これからも積み重ねていきたいです。

Information

山崎怜奈 エッセイ集『まっすぐ生きてきましたが』
マガジンハウスより発売中
定価:1,800円(税込)
雑誌Hanakoウェブ連載「山崎怜奈の『言葉のおすそわけ』」が、待望の書籍化第2弾。
2023年1月〜2025年5月までのエッセイを再編集し、仕事や旅、日々の気持ちを等身大の言葉で綴ります。太田光さんとの特別対談や書き下ろしエッセイ、愛猫との秘蔵カットなど、書籍だけの企画も収録。
購入はこちら https://magazineworld.jp/books/paper/3359/

プルオーバー¥30,800スカート¥36,300(ともにIN-PROCESS Tokyo)ベスト※参考価格(BELPER)パールピアス¥4,400クロワッサンリング¥3,300スウェルリング¥3,080(すべてDanae∴)

撮影/上村透生 ヘアメーク/久保フユミ スタイリング/マルコマキ 取材/池田鉄平 編集/越知恭子

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