竹内涼真さん(32)×町田啓太さん(35)「会わない日があると恋しくなることも」“攻めすぎ”共演で芽生えた絆【『10DANCE』インタビュー】

競技ダンスの熱狂と濃密な人間ドラマを描くNetflix映画『10DANCE』で8年ぶりの共演を果たした竹内涼真さんと町田啓太さん。ラテンとスタンダード、それぞれの日本王者を演じるために初めて競技ダンスに挑んだ2人は、支え合いながら互いに刺激を受け、関係性を深めていったと言います。対談前編では、出演を決めた理由や役づくり、ダンスを通じて抱いた印象、そして、高難度のダンスを習得するまでの秘話をたっぷり伺いました。

Netflixさん、攻めすぎだなと最初は思いましたね(笑)

――人気コミックを映像化した映画『10DANCE』。原作を読んだ際の印象や、オファーがきたときの率直な感想をお聞かせください。

町田:原作は、このお話をいただく前から読んでいて、本当に面白いと思っていました。ダンスシーンの描写がとても生々しくて、僕が演じる杉木と竹内くんが演じる鈴木、この2人の関係性やダンサー同士の駆け引きが魅力的で。「この熱量を映像化できるのかな?」という不安もありました。世界タイトル級のダンサーを演じるって、ハードルが高すぎるだろう、と。Netflixさん、攻めすぎだなと最初は思いましたね(笑)。

竹内:僕も似たような印象でした。とても攻めた作品だなと感じましたし、どう映像にするのか想像がつかなかった。でも、競技ダンスを知らない自分でも伝わってくる熱量があって、何より人間関係がすごく面白いと感じました。難しさや乗り越えなければならない部分はひとまず置いておいて、「これはやってみたい」という気持ちが強かったです。

――オファーを受けたとき、どちらを演じるかは決まっていたんですか?

竹内:オファーが来たときは、まだ役が決まっていなかったんです。でも、自分の感覚としてラテンダンサー側だなと思っていました。

町田:僕も自然と「自分はスタンダードだろう」と感じていましたね。

竹内:その感覚は結果的に合っていたんだと思います。

会わない日があると“最近大丈夫かな?”と恋しくなる瞬間も

――演じられた役とご自身との重なる部分、また異なると感じた部分についてはいかがでしょう。

竹内:僕自身、普段から“重なる、重ならない”という分け方をしていないんです。役を理解して、自分のなかにあるものと役をつなげていく感覚なので、距離のある部分は自然と排除しながら役との共通点を増やしていくようにしています。

町田:僕も、常日頃、どんな役を演じるときも、キャラクターのいちばんの理解者でいたいと思っているんです。理解が追いつかないなら追いつくまで掘り下げるし、それでも距離のあるところはアプローチを変えて、納得いくまで向き合いますね。

竹内:自分は鈴木だろう、杉木だろう、と感覚的に選んだ時点で、お互いすでに役づくりが始まっていたんでしょうね。

町田:確かに。そういう意味では、2人とも、もともと役との距離が近かったんだと思います。

――役づくりでいちばん重視したところは?

町田:何より2人の関係性です。

竹内:それですね。「この役は、何をいちばん欲しているのか」を決めることが、関係性を作るうえで軸になったと思います。鈴木として、杉木から一瞬も目を離さずに、常に彼のエネルギーを受信し続けることを意識していました。

町田:僕は全てにおいて「諦めないこと」を意識していました。キャラクターの理解も、ダンスの追求も、鈴木との関係性を見つけていくことも、諦めた瞬間に全部終わってしまうと思ったので。「探す」ことをやめず、「発見」を続けるという姿勢でいたいなと思っていました。

竹内:ダンスもビジュアルも、こだわりたい部分が多すぎて一つには絞れないというのが正直な気持ちですね。

町田:全部いちばんにしたいよね。

竹内:ダンスでつながるときも、離れているときも、どれだけ相手に仕掛けて、そこから何を得るか。そのエネルギー交換に集中していたと思います。

裏では僕がメソメソしていました(笑)。それほど土居さんに支えられた

――完成した映画を観て「ダンス映画だ!」と驚きました。それぞれのパートナーについての印象や練習中のエピソードなどを教えてください。

竹内:ラテンのパートナー・土居志央梨さんは、先生に言われた「体の重さを感じろ」という言葉を体現してくれる方でした。僕に全幅の信頼を寄せてぶつけてくれるんですよ。いい意味で、ものすごく鍛えられました(笑)。

町田:わかるなあ。スタンダードを土居さんと踊ったとき振り回されたから(笑)。

竹内:持っていかれる! って感じでしょう(笑)。パワフルでエネルギーに満ち溢れているんですよ。でも、だからこそ逆に、僕も彼女に身を預けることができました。キャラクターの設定上は、僕のほうが引っ張り回して、「ついて来いよ」っていう感じでしたけど、裏では僕がメソメソしていましたね(笑)。そうすると、土居さんが「やれるから! 大丈夫!」って言ってくれて、常に鼓舞してくれる存在でした。土居さんなしでは、あんなに何種類も踊りこなすことはできなかったと思います。

町田:僕のパートナーは石井杏奈さん。事務所が同じで顔なじみでしたが、8歳という年齢差や身長差もあり、正直、最初は距離感がありました。僕自身、“帝王”と称される杉木のキャラを確立するために必死でしたし、石井さんも、杉木のそういう部分を理解して、距離感を大切にしてくれていたんだと思います。本当に、常に気を遣いながら僕に合わせてくれて。陰で先生に「どうしたら、町田さんがやりやすくなりますか?」と質問してくれたり、とにかく支えてくれました。本当に頭が下がりました。

竹内:確かに、石井さんの優しさはすごかった。

町田:僕らは練習期間が短かったので、本当に会話する余裕がなくて。あの集中力に救われました。

竹内:うちのラテン組は対照的で、いつも賑やかでしたね。

町田:石井さんは、本当に大変だったと思いますが、それをおくびにも出さずに黙々と練習しているあの姿、僕自身、彼女からたくさんのことを学びました。石井さんじゃなかったら成立していなかったと思います。

町田くん、僕より男臭いです(笑)。独特の力強さがある

――竹内さんと町田さん、お2人のダンスパートナーとしての相性はいかがでしたか?

竹内:スタンダードでは、僕が受けをやっていたので、町田くんに完全に身を委ねるような感じだったんですけど、とにかく、町田くんのホールドが正確で、この大きな体を1ミリの狂いもなく運んでくれるんですよ。回を増すごとに彼の世界に侵食されていく感覚があり、しかも、それがすごく心地よかった。タンゴなど、僕の苦手な部分に近づくとサポートを強めにしてくれますし、本当に些細なところまで気づいてくれる方でした。僕らは、陰で「ホールドロボ」と呼んでいたほどです(笑)。

町田:土居さんの命名でしょう。「悲しきホールドロボ」って(笑)。でも本当に、鏡があると、ついホールドのポーズを取っちゃうほどでした。家の風呂場でもやっていましたから(笑)。

竹内:僕からしたら、その姿がすごく愛おしかったし、やっぱり抱えられるとわかるんですよ、その努力の積み重ねが。だからこそ、信頼して身を任せられました。

町田:逆に、身を委ねるというのも、実はすごく勇気がいることだと思うんですよね、僕は。それを軽々とやってのける竹内さんの覚悟と精神力はすごいと感じていました。

竹内:うれしいなあ。町田くんから発信されるものを全部受け取って反応しようと思ってやっていたのが、結果的によかったのかもしれないですね。

町田:そのおかげで、すごくいいバランスでスタンダードダンスをやらせてもらえました。一方のラテンは、僕自身、フルパワーでいけたんですよ。同じような体格とパワーだから遠慮なくやれる感覚がありましたし、竹内くんがリードして、フォローもしてくれたので、すごく気持ちよく踊ることができました。

竹内: ラテンを一緒に踊っているとき、杉木を演じるうえで閉じ込めてきたエネルギーみたいなものが爆発する瞬間がありましたね。表現が合っているかわからないですけど、町田くん、僕より男臭いです(笑)。独特の力強さがあるんですよ。

町田:それで言うと、竹内くんはすごく優しいですね。陽気で自由気ままにやっている雰囲気とは裏腹に、ダンスを通して「すごい紳士だな」と感じたときはちょっとビックリしました。「俺のやりたいようにやるんだ!」っていう感じなのかなと思っていたら、全くそういうところがなくて。

竹内:お互い感じていたんでしょうね。 町田くんも紳士的ですよ。でも、そのなかに堅い男の顔が現れる瞬間がある。自分もそういうふうになりたいと思ったほど。やっぱり、本人の性質もあるかもしれませんが、ダンスって素が隠せないんですよ。町田くんとは、お互いにそこを受け入れ合えたのが大きかったです。今期の邦画の中でも抜群のバランスだと思いますよ。

Profile

竹内涼真
1993年4月26日生まれ、東京都出身。2013年にモデルとしてデビュー後、『仮面ライダードライブ』で俳優デビュー。『ひよっこ』(NHK)、『下町ロケット』(TBS系)、『過保護のカホコ』(日本テレビ系)、『陸王』(TBS系)など数多くのドラマや映画に出演。今冬放送されたドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』も話題を呼んだ。2026年4月、主演ミュージカル『奇跡を呼ぶ男』上演予定。

町田啓太
1990年7月4日生まれ、群馬県出身。2010年、第3回劇団EXILEオーディションに合格し、俳優として活動開始。『花子とアン』(NHK)、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系)、『テッパチ!』(フジテレビ系)、『光る君へ』(NHK)など話題作に出演。ドラマ『かばん屋の相続』(WOWOW)の第1話「十年目のクリスマス」が12月27日より放送・配信される。

Information

Netflix映画「10DANCE」12月18日(木)配信開始
竹内涼真と町田啓太主演で、井上佐藤の大ヒット漫画を実写化。ラテンダンス日本チャンピオン・鈴木信也と、スタンダードダンス日本チャンピオンで世界2位の杉木信也が、互いの領域を越えて10種目全てで競い合う“10ダンス”に挑む。性格も気質も正反対の2人の“信也”は、激しく反発しながらも、ともにダンスを極めていく過程で次第に惹かれ合っていく。躍動的な肉体と視線の火花が交錯する、激しくも美しい関係性を描いた本格ダンスロマンス。

[竹内さん分]ジャケット¥319,000ニット¥132,000パンツ¥165,000シューズ¥198,000(すべてFerragamo/フェラガモ・ジャパン)[町田さん分]ジャケット¥206,800シャツ¥129,800パンツ¥217,800シューズ¥113,300(すべてエンポリオアルマーニ/ジョルジオ アルマーニ ジャパン)

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フェラガモ・ジャパン 0120-202-170 / ジョルジオ アルマーニ ジャパン 03-6274-7070

撮影/木村敦(Ajoite) スタイリング/徳永貴士[竹内さん分]、石川英治[町田さん分] ヘアメーク/佐藤友勝(Rond)[竹内さん分]、Kohey[町田さん分] 取材/服部広子 編集/越知恭子

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表紙モデル:山本 美月