2019年9月に30歳の誕生日を迎えた『CLASSY.』カバーでもおなじみのモデル、オードリー亜谷香さん。カリフォルニア州のオレンジカウンティ出身、東京に来てモデルの仕事をスタートして11年目。雑誌の表紙を飾るカバーガールとして華々しい活躍の影には、人一倍の努力と完璧主義な一面がありました。仕事と向き合いキャリアを積んだ20代を終えて、新たに迎えた30代のステージ。彼女の言葉の中には、同じアラサー世代として心に響くメッセージがありました。3回に分けてお届けする「オードリー亜谷香スペシャル」、今回は【仕事編】をお届けします。
来日してしばらくは東京の暮らしに馴染めずにいた…
中学生の頃から、日本の雑誌を見ることが好きでした。言葉は分からなかったけれど、モデルの登場するファッションページを隅から隅まで見ていました。そして母の故郷でもある日本への憧れが重なって、アメリカで行われた日本の事務所が開催するモデルオーディションを受け合格し、日本で仕事をすることを決めたのは19歳。母との会話も英語だったので、東京に住みはじめたときは今思うと日本語での日常会話もギリギリ理解できるレベル(笑)。慣れない環境で社会人としてはじめての仕事、言葉の勉強とプレッシャーと戦う毎日が続きました。『日本でモデルとして活躍する』という目標は自分で決めたことだし、何よりも夢に抱いていたことが実現し始めている中、泣き言は言いたくなかったけれど弱気になる日々…。何事も完璧主義な性格なので、人から「全然大丈夫だよ、話せているよ」、「写真、良かったよ」と言われても、自分が納得して気持ちを整えないと次へ向かえないタイプ。だからストレスを感じたときは、スカイプでアメリカの家族や友達と他愛もない話をしたり、一人で電車に乗って海を見に行きカリフォルニアのことを考えてリセット。その繰り返しの中で、日本で友達も出来てスタッフの人とも仲良くなり、仕事へ行くことが楽しくなっていきました。
3年目の苦悩とマインドチェンジで得たのは…
仕事を始めて3年目くらいのときに、「モデル」のポージングを根底から見直すきっかけが訪れます。それまでは雑誌の中のモデルは、明るい笑顔でいるべきと思い込み、どんな撮影でもとにかく「スマイル」を意識。ですが、ある雑誌の撮影でスタッフに「オーちゃん、As usual(普段のままで)」と言われたんです。その言葉に身を任せて素の表情をカメラに向けると、スタッフ全員からの「その表情だよ!」という言葉。そっか、無理に全て笑う必要はない、これからはもっと自然体で行こうと肩の力が抜けました。もちろん笑顔が必要な場面では「スマイル」を意識したけれど、「いつものまま」という言葉は私のポージングの振り幅を広げる結果に。肩の力が抜けると企画本数の登場回数も多くなり、どんな風に服を見せたら素敵なのか?今まで以上に深く前向きに考えるように。そして、それまでコンプレックスだった日本語も、詰め込むよりも現場で身につくことを少しずつ覚えようと考え方を変えたら、どんどん頭に入ってくるようになったんです。当たり前のことだけれど、目の前のことに全力投球する。その積み重ねこそ、夢を叶えるのに1番の近道。真面目にそして自分らしく仕事をした結果、待っていたのは当時、専属モデルを務めていた雑誌『JJ』のカバーガールという目標に到達できたんです。それは、それまでのご褒美と同時に新しい目標に向かう出発点でもありました。
大人への階段、「CLASSY.」のカバーという新しいチャレンジ
『JJ』を卒業後には『CLASSY.』で表紙のモデルを務めることが決まり、嬉しさと同時にプレッシャーも感じていました。憧れの先輩モデルの一人の小泉里子さん、彼女が飾っていた『CLASSY.』の表紙をずっと見ていたので、私も同じようにカバーモデルができるの? と。日に日に募るプレッシャーを破ったのは、昔もらった「As Usual」という普段のままでいいんだという言葉と、新しいチャレンジができることへの感謝。28歳でモデルとしての第2章を向かえた私は、新しい環境でのさらなる成長を求められました。19歳の新人モデルだった頃とは違い、初めから表紙のモデルとして起用される『CLASSY.』ではスタートから求められるものが違うのは当然。どんな要求でも「できて当然」の世界です。モデルの肩書きや仕事内容に変化はありませんでしたが、新しく築き上げる信頼関係や、雑誌のメインターゲット層が上がったことでの企画内容の変化は、それまでのキャリアで培ってきた自信を一時は見失うことに……。
そんな中、ハードスケジュールだった海外取材があり、実はその現場でスタッフと意見を衝突させてしまったんです。スタッフは私の気持ちをすぐにくみ取って対応してくれて本当に感謝しているのですが、私自身もっと広い視野で物事を考え、改めてモデルとしてきちんと「自立」しようと反省、考え直すきっかけになりました。
「すべてのことは必然」という言葉を信じています
ストレートにそのとき思ったことを言うことで、その場の雰囲気を壊してしまうのは自立した女性とは言えない。自分の軸がしっかりしていれば、表現力が磨かれて自信にも繋がるし、「どうしたい」と気持ちも伝えたときに相手も聞き入れてくれるはず。そう思うようになりました。アメリカでも日本と同じ「起こるすべてのことには意味がある」と言うことわざがありますが、これは事実だと思っています。この海外取材での出来事は改めて自分らしさを考えて、仕事や仕事を通して繋がれた人との関係を見直し、再び仕事に対しての心を安定させるきっかけになりました。
30歳の感想は?と聞かれたら、「はじめの1週間は最高!」(笑)
遊び感覚で星座占いなどは見ることがありますが、本格的な占い師やライフサイクルのガイド的アドバイスには頼ったことがありません。それには2つの理由があって、まずひとつは知るのが怖いから(笑)。あとは、人生は一瞬一瞬が大切で、その積み重ねで作り上げることだからと思っているからです。未来に待っているのは、自分が胸を張って頑張った結果。「Live in the moment」(今この瞬間を生きること)、どんなことが起こっても今を一生懸命生きることにこそ意味がある。そのときは腑に落ちないことがあったとしても、振り返るとそのときに起こったことで結果として成長できた、ということがあると思うのです。30歳を迎えた今年は、仕事としてのキャリアアップはもちろん、人間力も磨いていきたい。遠くない未来にあるかもしれない結婚や出産、そう思うときっと30代は20代よりももっと大きな選択が待ち受けている(はず)だから。そして、30歳を迎えてまだ1カ月しか経っていませんが、30歳の感想は?と聞かれたら「はじめの1週間は最高!」(笑)。毎日大好きな人たちにたくさんお祝いしてもらえるから!
Profile
オードリー亜谷香 1989年生まれの30歳。アメリカ人の父と日本人の母を持つ、カリフォルニア出身のL.A.ガール。20007年に来日し、モデルとして活動開始。2018年1月号よりCLASSY.のカバーモデルに。ハッピーな人柄でスタッフからも大人気。
衣裳(すべてスタイリスト私物)
撮影/SHARK ヘア・メーク/森野友香子(Perle Management) スタイリング・取材/井田理恵 構成/CLASSY.WEB編集室