旅館経営中のスザンヌさん(38)「みんな人のことなんてそんなに見ていない」気づいて楽に

今年2月1日、旅館「KAWACHI BASE-龍栄荘- 」をグランドオープン(本人提供)

タレントだけでなく、現在は2つの事業を手がける経営者としても活躍していスザンヌさん。超多忙な20代の頃や、熊本への移住を決断するまでのストーリーを語っていただいた前回に続き、今回は2つの事業を経営することになったいきさつや、自分らしく生きる秘訣を教えていただきました。

プロフィール

1986年10月28日生まれ。熊本県出身。バラエティー番組を中心に雑誌・広告など幅広く活躍。熊本県宣伝部長も務める。2014年1月に長男を出産。現在は熊本在住で、東京・大阪を行き来する。2023年に起業し、ブランド「Style Reborn」を発表。 2024年12月には熊本市河内に旅館「KAWACHI BASE -龍栄荘-」をオープン。タレント、経営者、一児の母として活躍中。

夢に向かって挑戦する私の背中を子どもに見せたかった

母校の高校に再入学・卒業した後、日本経済大学の福岡キャンパスの経営学部芸創プロデュース学科ファッションビジネスコースへ(本人提供)

――34歳で高校生になって、大学に進学し、起業もされました。お子さんもいて、タレントのお仕事もある中で、同時にこなすのは大変そうですが、一つずつ落ち着いたらやる、とかではなく、その時に全部「やりたい」と思われたのですか?

当時子どもは小学生。段々手が離れていって、自分の夢を持って頑張っていくようになるんだなと思っていました。そこで、目と心は離さないようにしつつも、「ママは一生懸命学んだり仕事しているから、あなたはあなたで輝ける場所を持って大丈夫なんだよ」ということを背中で見せたいと思って。そうすれば、子どもも安心して自分の夢に向かって頑張れるかな、と。子育てをしている私だけじゃなくて、新しい夢にチャレンジしている姿を子どもに見せたかったんです。

――ひとつめの起業はアパレルブランド。なぜこのビジネスを選ばれたのですか?

大学でファッションビジネスを学ぶ中で、「自分にできることって何だろう?」と考えたときに、思い浮かんだのが、自分や誰かにとって大切だった服をもう一度蘇らせるようなことでした。もともと古着が好きだったので、そのリメイクをビジネスにしようと決めたんです。
ちょっと高くても、お気に入りの服を長く大事に着続けるってことが、すごくサステナブルだなと思っていて。そんな服を作りたいなと思って起業しました。これが、私がいちばん最初に「やりたい」と思ったことでした。

熊本のために一肌脱ごうと始めた旅館。今が人生のターニングポイント

旅館「KAWACHI BASE -龍栄荘-」は自身で購入し、リノベーションも行った(本人提供)

――昨年から、旅館経営も始められましたね。

最初はまったく想像もしていなかったのですが、今は自分のため、というよりも熊本のために恩返ししたいし、喜んでもらいたいという気持ちでやっています。物件は「あ、なんか、ここ素敵だな」と思って一目惚れして購入することを決めました。海が見えて夕日が綺麗で山があって、リノベしてカフェやエステをやりたいなと思ったんです。その時、元は60年続いた旅館だったと不動産屋さんが教えてくれました。

そうこうしていると、田舎なので、私が買ったと噂が広まり、みなさんが「私はここで結婚式を挙げた」「結納した」「七五三をした」と教えてくれて、しまいには「ここで生まれた」という人まで現れて(笑)。思い出がある旅館をもう一度再建してほしいと言ってもらうことが多くなりました。さらに旅館のオーナーさんだった方が「本当はずっと続けていきたかったけれど、跡継ぎだった息子に先立たれて叶わなかった」と話してくださったんです。そこまで聞いて、この旅館をやらないわけにはいかないな、再建に向けて頑張ってみようかなと思ったんです。

そこから、この1年間は本当に目まぐるしく濃厚な時間で、いろいろな経験をさせてもらいながら旅館経営をしています。リノベーションも、物件自体は2400万円で購入したんですけれど、屋根を変えるだけで2000万円とか、床を変えるだけで700万円とか。でも面影も思い出も残したかったので、建て直さずにリフォームを選びました。古い建物なので、水が詰まったり大変なんですけれど(笑)、愛おしいなと思いながらやっています。

まったく新しいことを始めることになった今年は人生のターニングポイントでもあり、自分の人生の第3ステージが始まった感じ。自分のために仕事を頑張った第1ステージ、子育てに集中した第2ステージ、そして今。人のために何かをしたいなって思えた初めてのビジネスです。同時に、自分のためにできることって限られてるなと思います。日々勉強しています。

足踏みしても靴底は減る。だったら私は前に進みたい

アパレル事業は3年目。現在は3ブランドを展開している(本人提供)

――旅館を購入したり、離婚や移住など、大きな決断をしてきたスザンヌさん。一歩を踏み出す決断を後押ししてくれたものはありますか?

私の好きな言葉で「足踏みしても靴底は減る」という言葉があるんです。同じ場所で一歩も踏み出さず迷っていても、靴はすり減るし、足も疲れる。当然、心だって。それなら私は、選択に迷ったらまずどちらかを選びたいし、前に進みたいって思う。

私はどちらを選んでも結局は正解なんだと思っていて。その選択を正解にしていくために努力することは、自分にしかできない。自分で決めて自分で正解になるまで頑張ればいいんです。「これで良かったんだ」と思えるまでやりきる。そうしていくと、人から見たら失敗かもしれないけれど、自分の中では「これが正解だった」って思えるんじゃないかな。

「大失敗と大恋愛」は若いうちにたくさん経験して

――人生のお話が出ましたが、人生の先輩としてCLASSY.世代の女性にアドバイスしたいことはありますか?

20代の頃「20代のうちにしておいた方がいいことって何ですか?」と本当にいろいろな人に聞いて回っていました。みんな口を揃えて「大失敗と大恋愛はしておいた方がいい」と。私ももし同じことを聞かれたら「大恋愛と大失敗もじゃんじゃんした方がいいよ」と言うと思う。私自身も恋愛結婚をして、子どもも授かって、本当に良かったかなって思えるから。

失敗については、若いうちは謝れば許してもらえるからまずはやってみる。「若いし、しょうがない」と思われる時期に失敗して。私は今でも「申し訳ございません!」ってすぐ謝りますけどね(笑)。謝る力は絶対大事だと思う。どれだけ誠実になれるかで仕事での信頼も違ってくると思うから。

――もし、20代のスザンヌさんに何か声をかけられるとしたら、どんな言葉を伝えたいですか?

「誰も見てないよ!」ですかね。20代の頃ってけっこう自意識過剰で、本当に今思うと全然大したことないことでアップダウンしたり、人からどう見られるかに重きを置いてたと思う。実際は、誰も見てないじゃないですか?それをもっと教えてあげたいなって思いますね。例えば「同じバッグを持っているあの子と会うから違うのにしよう」とか「これは去年買ったやつだからやめておこう」とか。

熊本に帰ってからは、そういう意識が本当になくなって、本来の自分らしくナチュラルでいられるようになったので、自分の着心地がいい服を着てすっぴんで歩く心地よさを思い出しました。好きな服だったら毎日着てもいいんですよね。そういうことに喜びを感じます。このメンタルが20代の頃からあったら良かったなって思いますね。

自分の着た服は覚えていたとしても、相手が何を着ていたかなんて誰も覚えていない。だったら、自分の「好き」を優先して、お気に入りをたくさん着た方がいい。同じ服を避けるために安い服を何枚も買うより、特別な一着を大切に着る方が私には合っているなって思います。
今は SNS の時代だけれど、自分が想像してるより見られてないと思って生活して大丈夫!と私は伝えたいですね。

取材/加藤みれい 構成/越知恭子

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