映画にドラマにCMに…引っ張りだこの吉岡さん、この日の取材も分刻みスケジュール。そんな中、何パターンも撮影にトライしてくれたり、CLASSY.という媒体の説明に真摯に耳を傾けてくださったり。どんなに忙しくてもやるべきことをする。そんな姿勢が強さに繋がっている、ということを話してくれたインタビューです。
すごく悔しかったこと、悲しかったこと。忘れるほうがラクだけど、チャンスと捉えてその日のうちに向き合います
20代のときは、休みが取れなくてもいいから、いただいた仕事すべてに応える。時間が許す限り、全部受けるスタイルを貫いていました。それが自分の経験値を高めるし、可能性を広げることに繋がると思っていたんですよね。でも30代に入ってからは、自分の得意不得意が分かってきて、少しずつ仕事への向き合い方も変わりました。求められていることへの焦点が合ってきて、自分がやりたいこと、自分がするべきことが明確になりつつあります。
「私が受けた方が周りにも自分にも、よりプラスになるはずだ」と思えるものに力を注ぎたい、と考えられるようになったのも変化のひとつ。作品のお話をいただいたときに、自分以外の俳優さんが頭に思い浮かんだら出演しない方がいいし、きっとそれって作品のためにもならない。自分がそのジャンルやテイストに見合う人になってから参加した方がいいな、と。だから「自分が出ることで作品の役に立てるかも」とか「自分が一番真摯に取り組める」と確信した作品には、必ず出演したいと思っています。
『自分は何が好きで、何ができるか』
人の目が気になった時期もありました。でも最近は、周りを気にしたり、比べたりする時間がもったいないと思っています。私の仕事は特に、自分らしさとか個性みたいなものが評価してもらえる。だったら比べたところで意味がないんじゃないかなあと。周囲と比較してできていない部分にフォーカスせず、自分は何が好きで何が得意なのか。むしろ周りと違うところに注力していく方が、心の健康にもいい。なるべく比べない、人の目を気にしすぎないことは、意識しています。
周りの目よりも気にしているのは、10年後の自分が過去の自分を見たときにカッコいいと誇れるかどうか。振り返って、「あのときもっと頑張っておけば…」と思いたくないので、瞬間瞬間を灰になるくらいまで燃え尽きたい。そのくらい向き合うと、周りの評価って気にならなくなるんですよね。悪い評価だったとしても、「まぁ、そこまでだったな」って受け止められる。いい意味で自分に諦めがつくくらいはやり遂げよう、と決めています。
『失敗は学びのチャンス。忘れてしまうのはもったいない』
失敗することは多々ありますが、常に心に留めているのは、“ピンチはチャンス”という言葉。失敗=お告げだと思うようにしていて、次のステップアップに必要な出来事だったと捉えます。失敗はその日のうちに消化することも、癖づけていること。この経験がどうプラスに生きるのか、今後の自分にどう必要だったのか解釈して、失敗も無駄にはしません。あまりにもキツすぎるときは、いったん保留にしますが…(笑)。
すごく悔しかったことや悲しかったことって、人間うまく忘れるようになっていると思うんです。私自身も年々、忘れっぽくなっているなと感じていて。もっとセンシティブに感じ取っていたときの方が、自分がヒリヒリしていたから、できるだけ覚えているうちに向き合うようにしています。失敗は学びのチャンス。「ま、いっか」と忘れてしまうのはもったいないと思います。
『自分としては、「助け合える結婚」が理想です』
周りでは結婚する人たちが増えてきました。私は結婚を経験していないので、偉そうなことは言えないのですが、友人たちの結婚生活を目の当たりにして、助け合っている人たちが羨ましく見えることはあります。どちらも仕事が好きで働き続けることを認めた上で、一緒に頑張っていこう、というスタイルの夫婦はとても素敵に映るし、「大変なこともあるけど、楽しくやってるよ!」と聞くと希望も感じます。一方で、夫をサポートするために仕事をきっぱりやめた友人もいて、その選択もカッコいい。あんなにバリキャリだったコが、そこまで思える相手と出会えるってすごくいいなって。先日もその友人の家に遊びに行きましたが、女性としても魅力的だし、人間レベルも高いなって強く感じました。自分の仕事で精一杯の私よりも、一皮も二皮も剥けて成熟しているな、と。今の時代、結婚のスタイルも多様化していますが、自分としては、やっぱりお互い助け合える結婚が理想ですね。
『頑張っている実感があるから、自分の選択に自信が持てる』
11月29日公開の映画『正体』では、逃走中の死刑囚・鏑木慶一(演・横浜流星)の無実を信じ続ける安藤沙耶香を演じます。彼女は、自分が一度信じた相手には最後まで向き合って、信じ抜く性格の持ち主。沙耶香の精神的な部分は、自分と似ているかもしれない、と思いながら役に向き合っていました。自分を信じられる自分でいるためには、絶対的な自信が必要だと思っています。でも自信って一瞬で培われるものではないから、日々積み重ねる中で、腰が重たくなりがちな物事こそ、早く片付ける癖を心掛けています。例えば、帰宅したらメークを落とす、みたいなこともそうで。なんでやらなかったんだろうってストレスになるようなことを後回しにしない。そういう小さい後悔をしないように、できるだけ面倒くさがらずに、やるべきことをやるマインドを大事に。自分に自信を持つ方法って、それしかない。「私、あのとき頑張ったし!」って思いたいし、そんな自分が選ぶものならどんな選択も「きっとこれがベストだろう」と納得できる気がしています。
【衣装クレジット】カーディガン¥878,900シャツ¥281,600タイ¥70,400パンツ¥293,700ブーツ¥394,900(すべてブルネロ クチネリ/ブルネロ クチネリ ジャパン)
海外に長期滞在中はご当地グルメでパワーチャージ
とあるお仕事で台湾に長期滞在していました。台湾のご飯は何を食べても美味しかったですし、漢方やにんにく、生姜が効いていて体がどんどん元気になるのを感じました。このお店は台湾滞在中にキャストやスタッフやマネージャーと3回訪れた、お気に入りの台湾料理屋さん。ここの小籠包が最高でした。旅もリフレッシュのひとつ。今年の夏は女友達とメキシコ旅に行きました。
吉岡 里帆
1993年生まれ。京都府出身。2013年より俳優活動を始める。主な出演作に、NHK連続テレビ小説『あさが来た』、日本テレビ『ゆとりですがなにか』、TBS『カルテット』、映画『ハケンアニメ!』、『アイスクリームフィーバー』など。2019年には、映画『パラレルワールド・ラブストーリー』でヒロイン役、『見えない目撃者』で主演を務め、第43回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。11月29日公開の映画『正体』では、横浜流星さん演じる鏑木をサポートする安藤沙耶香を好演。
撮影/水野美隆 ヘアメーク/信沢Hitoshi スタイリング/後藤仁子 取材/坂本結香 編集/小林麻衣子 再構成/Bravoworks,Inc.
※CLASSY.2024年12月号「私たちの取捨選択」より。
※掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。