「あのとき、この情報を知っておけば…」。そう思うことが人生ではいくつかあります。その筆頭が、カラダのこと・お金のこと。CLASSY.世代のうちに知っておきたい、パートナーと考えておきたいことを、今月から毎月識者に聞いてお届けしていきます。
子どもはいつかは欲しいけど…
「受精卵凍結は自己負担3割で済み、
妊娠成功率も高い。
パートナーとふたりで考えることが重要です」
卵子凍結=妊娠への保険、とは限りません
「東京都が助成金支給を開始したこともあり、注目を集めている卵子凍結。関心が高まっていますが、イギリスでは凍結卵子の9割が使用されず破棄されたというデータもあります。一方、そもそも妊娠に対する本気度の違いはありますが、凍結受精卵はかなりの割合で使用されています。
私たちのクリニックでは、35歳未満の妊孕性の高い女性が妊娠に至るには、凍結受精卵であれば2個以上、凍結卵子であれば20個以上が必要と考えています。その差は約10倍です。卵子凍結も受精卵凍結もまずは、卵巣から卵子を取り出す「採卵」が行われます。クリニックによって麻酔の有無は異なりますが、少なからず痛みを伴い、人によっては「出産より痛い」という人も。
費用面では、卵子凍結は助成金があるものの完全自費。1回の採卵には20〜50万円かかります。対して受精卵凍結は、22年4月からスタートした不妊治療の保険適用化(※1)により、負担額は治療費の3割。torch clinicで採卵から受精卵凍結、移植(※2)までを保険適用で行った場合、1回あたりの費用は約20万円〜です。そして、受精卵凍結は事実婚はOKですが、同棲中・婚約中はNGです。
また事実婚の場合、クリニックが提示する書類(torchであれば各々の独身証明書および住民票または戸籍抄本と、事実婚夫婦治療同意書)が必要となります。卵子凍結と受精卵凍結、どちらも身体的、金銭的負担がかかるもの。なので、パートナーが決まっていて、授かりたい気持ちがあるならば、妊娠成功率の高い受精卵凍結を選んだほうが近道になると思います。
また、不妊治療は卵子凍結と違って、パートナーとふたりで考えて決めること。そこが一番の違いであり、重要な点だと思っています。
産まない自由もある。でもまずは一度立ち止まって考えてみて
働き盛りのCLASSY.世代は、日々忙しく、子どもが欲しいかどうかを考える時間が持てないかもしれません。でも、卵子は有限。年齢を重ねるごとに減る一方の細胞です。不妊治療において年齢に勝るものはありません。35歳未満であれば、現代の先進医療で理想の家族計画は大体叶えられます。
さらに今は、4.4組に1組が不妊治療を受けている時代。患者の平均年齢も40歳から38歳に下がっています。子どもを望んだ時点で「時すでに遅し」という状況に陥らないために、正しい知識とリテラシーを持って、ふたりの未来計画になるべく早く向き合うことが大切です」
※1 年齢や治療内容により、保険が適用されないケースもある。
※2 凍結した受精卵を融解し、子宮に戻す処置。
教えてくれたのは…中井友紀子さん
ARCH代表取締役CEO/Founder
中井友紀子さん
1986年生まれ。ヤフー子会社「TRILL」の代表取締役を経て、2022年、自らの不妊治療経験から、恵比寿に「torch clinic」をプロデュースする形で開業/運営支援。DXを駆使した院内滞在時間の短縮化を実現し、働きながら続けられる不妊治療を提供。自身もtorch clinicを受診し、妊娠した経験を持つ。
撮影/杉本大希 取材/坂本結香 編集/小林麻衣子 画像/AC 再構成/Bravoworks,Inc.