【草彅 剛】主演映画『碁盤斬り』公開!「代表作になりそうなものができたかな」

第44回日本アカデミー賞最優秀

第44回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞した『ミッドナイトスワン』など、数々の作品での唯一無二の存在感が評価されている草彅 剛さん。主演映画『碁盤斬り』が5月17日(金)に公開されるのを前に、2回にわたりインタビュー! 前編では復讐に燃える武士に挑んだ今回の映画のお話を伺いました。

――『孤狼の血』の白石和彌監督

――『孤狼の血』の白石和彌監督が初めて時代劇を手がけたという今作。オファーが来たときの率直な思いと、柳田格之進という役を演じたいと思った理由を教えてください。
面白そうだなと思って(笑)。僕は基本的に来る仕事は拒まずなのでオファーを断ったことはないし、白石(和彌)監督とお聞きしたので脚本を読まなくても「やります」って。(香取)慎吾ちゃんの主演した『凪待ち』も『孤狼の血』も観ていてすごい監督だなと思っていたし、格之進の役がどうっていうよりも白石監督だったので「やります」って言いましたね。監督とは歳も同じで同級生なので、そういうところにも興味がわきました。同じ時代で同じものを見てきていると思うと楽しさも倍増するというか。しかも初めての時代劇ということだったので「超ラッキーじゃん!」って思って「お願いします!」って気持ちでした。

――実際の現場ではいかがでしたか?
白石監督が本当にすごく気が利く方で、監督になる前にもいろんな現場を踏んできた方なので細部にわたって気を使ってくれて、自分の仕事じゃないのに物をどけたり照明を手伝ったりするところは感動しました。穏やかで、とてもあんなバイオレンスを撮ってる監督じゃないみたい。でも逆にそういう方だからこそ、ああいう作品を撮れるのかなとも思いました。

――草彅さんが演じた柳田格之進は囲碁の達人であり、武士の誇りを持って生真面目に生きる男。演じてみていかがでしたか?
なんかよくわかんないというか(笑)、最初はすごく嫌で。客観的に見ると、めんどくさい男じゃないですか。こだわっちゃって真っ直ぐすぎて。もうちょっと柔らかい頭を持ってくれよって思ってました。でもそのなかに現代にはない何か大事なものが隠されてるんじゃないかって思って――。古きよきもののなかにある魂というか、そういうのってみんな忘れちゃってるけど大事なんじゃないかなと思い始めて、役が入ってきたというか。毎日、演じているうちに格之進って素敵だなって思ってきました。

――豪華キャストも話題です。囲

――豪華キャストも話題です。囲碁の好敵手でもある萬屋源兵衛を演じた國村 隼さんとの印象的なエピソードはありますか?
いつも優しくて、京都のお店を教えてくれたりしました。生き方がお洒落というか粋でカッコいい先輩というか、役者さんとして憧れがすごくあって國村さんの芝居がすごく好きで…。失礼ながらそういうことを僕は本人に言っちゃうタイプなので、失礼な奴だなと思われてるかなと思いながら、國村さんの出演していた映画『ブラック・レイン』の話を興味津々に聞いたり。「松田優作さんってどんな人だったんですか?」とか(笑)。図々しくさせてもらってました。お芝居をすると、國村さんは流れるようなセリフで自然な感じに演じられるので、それに僕も感化されて格之進により入っていけたかな。

――敵役の柴田兵庫を演じたのは斎藤 工さん。今作の見どころでもある、兵庫と闘うクライマックスシーンは圧倒的でした。
工くんとは何度も共演したことがあるので安心していたんですけど、今作での工くんは、敵というか復讐の相手という重要な役どころ。今まで二人で築き上げてきた様々なお芝居やシーンがあるけれど、その集大成という気持ちで工くんにぶつかっていきました。ここまで激しくぶつかったことはなかったので結構、感動的でしたね。普段の工くんはいつも好青年だし落ち着いているから、僕のほうがだいぶ年上なのにお兄ちゃんみたいな感じ(笑)。いつも心を落ち着かせてくれるっていうか、なんであんな大人なのかな。どこか達観してるような気がして。監督もやってるからか、なんか見透かされてる気がして良くも悪くもすごくいい緊張感があるんですよ。今回、敵役だったこともあって僕も熱が入ったね。俺のこと、見透かされてたまるかって思ったら自然と格之進に入れて。工くんは背が高いから、俺は見上げるわけよ。見下されてるような気がして、すごいスイッチが入った。殺陣のシーンは2人で3日間くらいすごく練習したし、激しくぶつかり合うことができて特別なシーンになったなと思ってます。

――撮影は京都撮影所で行われました。どんな思いがありましたか?
高倉 健さんを思い出したりしました。今も健さんの名札が下がった楽屋があるんですよ。僕は健さんによくしてもらったので、今作の寡黙なシーンでは健さんのことを考えながら撮影してましたね。つかこうへいさんにもお世話になっていて、『蒲田行進曲』の舞台で僕を開花させてくれた方で、つかさんが『蒲田行進曲』の脚本を書いたときは京都撮影所を取材したと聞いたことがあったので、こういう景色を見ながら書かれたのかなと思ったりしましたね。

――武士の誇りを賭けた復讐を描

――武士の誇りを賭けた復讐を描く、感動のリベンジ・エンタテイメントという今作。完成作を観たときの感想はいかがでしたか?
僕がカッコよかったね!(笑)。エンドロールが終わって一番最初に思った。今までの僕の作品で一番カッコいいなって。俺は生まれる時代を間違えたね(笑)。江戸時代に生まれたらもっと人気出たかも。俺、笠も似合うなって自分でもグッときましたね。撮影しているときは自分の顔を見ていないし、僕はチェックもあまりしなくて監督がOKだったらOKなので。それに撮ってるときは大変だったので余裕がなかったけど、完成作を観ると余裕がないくらいのほうがいいんだなって思えましたね。ちゃんと格之進に見えたので、すごく満足してます。

――作品全体としては、どう感じられましたか?
時代劇は初めてという白石監督もすごく挑戦されてたんじゃないかな。最初のほうは格之進も緩やかに囲碁を打ってるんだけど、復讐心が芽生え始めた頃から、白い布に血がにじんでいくようにじわじわとエンジンがかかってきて――。囲碁という〝静〟の闘いと殺陣の〝動〟のバランスがよかったなと思いました。月並みなコメントですが、あまり類を見ないいい映画だなって思いましたね。また、落語が原作なので話がわかりやすいのもよかったし、どこか〝可笑しみ〟みたいなものもある。いろんな作品に出させていただいてるけど、今作も自分にとって特別な作品になるんじゃないか、代表作になりそうなものができたかなと思います。

草彅 剛
’74年7月9日生まれ 埼玉県出身 血液型A型●‘91年CDデビュー。俳優として映画、ドラマ、舞台に多数出演。’17年「新しい地図」を立ち上げる。最近の主な出演作は、第44回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞に輝いた映画『ミッドナイトスワン』、『サバカンSABAKAN』、主演ドラマ『罠の戦争』、大河ドラマ『青天を衝け』、連続テレビ小説『ブギウギ』、主演舞台『アルトゥロ・ウイの興隆』『シラの恋文』など。

『碁盤斬り』
古典落語の名作を基に映画化。ある冤罪事件によって娘のお絹(清原果耶)と引き裂かれた浪人の柳田格之進(草彅 剛)。武士としての誇りをかけて復讐に向かい、囲碁を武器に鬼気迫る死闘を描く。数々の監督賞を受賞している白石和彌監督が手掛ける初の時代劇。出演/草彅 剛 清原果耶 中川大志 奥野瑛太 音尾琢真 / 市村正親 斎藤工 小泉今日子 / 國村 隼ほか。監督/白石和彌 脚本/加藤正人●5月17日(金)全国ロードショー

<草彅さん着用衣装>ジャケット¥195,800シャツ¥128,700パンツ¥168,300(すべてランバン/コロネット 03-5216-6518)
撮影/平井敬冶 ヘアメーク/荒川英亮 スタイリング/細見佳代(ZEN creative) 取材・文/駿河良美 構成/中畑有理

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表紙モデル:山本美月

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