読書したい気持ちはあれど、なかなかじっくり本を読む時間がとれない…そんなときは、オーディオブックにトライしてみては? CLASSY.世代にもファンの多い吉本ばななさんによる『幸せへのセンサー』が、書籍の出版より前に音声で提供される「オーディオファースト作品」として、12月15日(金)よりAudibleで配信スタート。作家の吉本ばななさんと朗読を務める俳優の千葉雄大さんにお話を伺いました。
オーディオファースト作品に携わる上でこだわったポイントは?
-吉本さんにとって、ご自身の作品が文字よりも先に音声で世に出るのは初めての体験ですよね。朗読を務める千葉さんは、このお仕事に向き合う上で意識したことはありますか?
千葉さん:僕は結構活字を読むのが好きなんですけど、普段活字を読まない方には、オーディオだと入りやすいのかなと思うんです。吉本さんの文章を声で届ける役割をいただいて、どういう感じで読むのがいいのかは難しいなと感じましたね。「こう読んでください」みたいな演出的なことがほとんどなかったので、「これでいいのかな?」と探り探りなところがありました。感情的に読めば伝わるかというと、そういうことでもないなと思っていて、バランスが大事だなと。平坦に読むだけというのも人間がやる意味で違うかなと思うし、そのバランスみたいなものは難しかったです。
吉本さんからのオファーで実現したコラボレーション
-吉本さんはナレーション収録に立ち会われたそうですが、千葉さんの朗読を聞いていかがでしたか?
吉本さん:以前からナレーションのお仕事をされているのを何回かテレビで聞くことがあって、すごく上手いなって思っていたんです。激しい感情を込めて読むのでもなく、ただテキストを読みあげるということでもなく。解釈がすごいんだなって感じたんです。千葉さんは演技でもそうだけど、伝えることについての解釈が素晴らしいですよね。
千葉さん:そう言っていただけてうれしいです。
吉本さん:ご本人はあまりそういうふうに思っていないかもしれないけど、この役はこういう役だなって把握する力がすごいから。今回のオーディオファースト作品でも、私が希望していた感じ、つまり、大袈裟じゃないんだけど、柔らかく、そしてすごく性別を感じさせる感じではなく耳に入ってくる感じなんです。千葉さんならすごくニュートラルな世界を作ってくれるんじゃないかと思っていたけれど、本当にその通りだったので、すごく感動しました。
千葉さん:すごくうれしいです。ニュートラルさについて強く意識していたわけではないですが、カギカッコの部分はその人のセリフのように読んでみたり。(僕の表現、)大丈夫でしたか?
吉本さん:大丈夫でしたよ(笑)。
物事は一辺倒じゃないーー作品を通して伝えたいメッセージ
-吉本さんから「千葉さんは解釈がすごい!」とありましたが、吉本さんの作品『幸せへのセンサー』について、ひとつひとつ内容を解釈していくような作業をされたのですか?
千葉さん:解釈しよう!としてやったわけではないですけど、読んでいく中で、一つの物事について一辺倒じゃなく話してくれるところは素敵だなと思いました。一つの事柄について、ある面では肯定できるけど、一方でそれだけじゃダメなんだなと思わせてくれるところがあったり。物事って一辺倒じゃないって僕も思うので、そういう面で解釈が同じだなと思ったりしました。たとえば、僕って座右の銘を聞かれるのが得意じゃなくて。
吉本さん:あ〜なんかわかる気がします。
千葉さん:その一つで人生をまかなえたら難しくないよ、って思っちゃうんです。時と場合によっていろいろ違うじゃないですか。今回の作品の中に「街に出てお店の人と話をしなさい」ということがありますけど、それはお店の人と話すことが大事なんじゃなくて、お店の人と話して何を得るかが本質ですよね。相手はお店の人じゃなくてもいい。そういうふうに考えていくことが解釈だとしたら、解釈していたのかな、と思います。
自由度の高さ、受け取り手へ与える印象…二人が考える音声コンテンツの魅力
-音声コンテンツの魅力はどのようなところにあると思いますか?
吉本さん:あまり考えたことがなかったですけど、私が一番初めに思ったのは、今回の作品って特に私と年齢が近い女性には、かなり厳しい内容なんじゃないかと思ったんです。それも目で読むのと違って、耳から自分のペースとは違うペースで入ってくるとなると、受け取る方は怒られている気持ちになるんじゃないかなと。そういう思いもあって、この作品の朗読をダメ元で千葉さんにお願いしたんです。彼のニュートラルな雰囲気のおかげで、目で読むのとは違う、私の声とも違う、独特の柔らかさで入ってきてくれる形になった。読む人の声の印象によって受け取り手の気持ちも変わってくる、それは音声コンテンツの特別なところだと思いましたね。
千葉さん:読むとなると、電車の中とかでもそうですけど、“読む”という行為に特化してしまいますよね。でも、たとえばおうちのことしながら音声コンテンツを聴くのだと、同じ内容でも感じ方が変わってくるかもしれないですよね。外で聴く、お散歩しながら聴くでも違いそうだし、自由度が高いのかなって思います。文字で読む、音声で聴く、どちらにも良さがあるから、『幸せへのセンサー』も、オーディオを聞いたあと文章でも読んでいただけたらいいんじゃないかなと思いますね。
Audibleオーディオファースト作品『幸せへのセンサー』
2023年12月15日(金)配信スタート
著者:吉本ばなな
ナレーター:千葉雄大
構成:瀧晴巳
人生に悩み、少し、歩き疲れてしまったあなたに。吉本ばなながさんおくる、自分自身を取り戻すための珠玉の言葉たち。日常の中でただ、丸ごと自分を受け入れること。吉本さんが考える幸せへのヒントたちを綴った作品を、俳優・千葉雄大さんが朗読する。まず最初にAudibleより「音声」で提供され、そのあと書籍として出版される“オーディオファースト作品”。後日幻冬舎から出版予定。
Audibleオーディオファースト作品『幸せへのセンサー』はこちら
>https://www.audible.co.jp/pd/B0CNXCZJ53
撮影/木村 敦(Ajoite) 取材・構成/宮島彰子(CLASSY.ONLINE編集室)