コスパ最強説のLCC「ZIPAIR」は本当に快適なのか…トラベルライターが辛口レポ!【サービスや価格は?気になった点は?】

日本航空(JAL)の100%出資によって2018年7月に創業した日本初の中長距離国際線LCC「ZIPAIR」。格安でコスパ最強!と話題なのですが、本当に快適なのかを実際に搭乗してレビュー。トラベルライターとして世界各国を渡り歩き、LCCのヘビーユーザーであるSHIORIが辛口レポートさせて頂きます!

「ZIPAIR」ってどんなエアライン?

「ZIPAIR」は、LCCで

「ZIPAIR」は、LCCでもフルサービスキャリアでもない「NEW BASIC AIRLINE」を目指している航空会社。2020年10月にソウル仁川空港行きの初の旅客機が飛び(それまでは貨物便としての就航のみでした)、以降、世界各国に路線を拡大しています。

JALの完全子会社ということも

JALの完全子会社ということもあり、機体は世界の大手航空会社が導入しているBoeing社の787-8型機を使用しています。787-8型機は、座席数が200〜300席ほどの中型機でありながら、長距離運航が可能なのが特徴。また、従来の飛行機は機内の湿度がほぼゼロに近くなりますが、787-8型機は室内の湿度を20〜30%に維持!機内が乾燥しているイメージがある飛行機ですが、ある程度の湿度があるのでツラさが軽減されます。さらに、地上に近い気圧設定が可能なため、耳が痛くなる現象が起きにくく、快適な環境でフライトを楽しめるのも嬉しい。窓も従来のタイプに比べて大型化されているため、空の景色もよく眺められるのもポイントです。

ここがポイント!

・機体はBoeing社の787-8型機を採用!
・従来型よりも機内の湿度が一定に保たれている。
・耳が痛くなる現象も起きにくい。
・窓が大きく、景色がよく見える。

またZIPAIR は、LCCな

またZIPAIR は、LCCながらも180度のリクライニング機能があるフルフラットシート「ZIP Full-Flat」を18席用意しています。LCCなのにビシネスクラスのようなフルフラットシートがあるの!?と驚きますが、いわゆる一般的なビジネスクラスよりもお値段はかなりお手頃。例として、成田=シンガポール線では、「ZIP Full-Flat」は最低料金が¥62,810から用意があります!(※)深夜フライトなど、ゆったりと飛行機を楽しみたい方にはおすすめのシートです。(※参考:成田=シンガポール線の通常のスタンダードシート「Standard Value」は¥18,710から)

また、ZIPAIRは子連れに優しいLCCとしても有名。通常のフルサービスキャリアの国際線では、子供が座席を使用する場合、大人運賃の75%が料金として発生します。しかしZIPAIRでは、「U6 Standard」と言う0~6歳までの子供が利用できるシートを用意しており、普通席のStandard座席を利用できます。料金もかなりお手頃で、例として成田=シンガポール線では¥7,790(定額)。時期による変動が無く、定額というところがまた嬉しい…。子連れ旅のハードルがグッと下がります。

「ZIPAIR」の就航都市、各路線の参考価格

2023年11月現在、ZIPA

2023年11月現在、ZIPAIRが就航している都市はこちら。
東京-成田国際空港を拠点とし、世界各国の主要な都市へ就航しています。

▼ZIPAIR 就航都市

韓国 ソウル-仁川国際空港
フィリピン マニラ-ニノイ・アキノ国際空港
タイ バンコク-スワンナプーム国際空港
シンガポール シンガポール・チャンギ国際空港
アメリカ ハワイ・ホノルル-ダニエル・K・イノウエ国際空港
アメリカ サンフランシスコ国際空港
アメリカ サンノゼ国際空港
アメリカ ロサンゼルス国際空港

なんと成田=ホノルル線は、スタ

なんと成田=ホノルル線は、スタンダードで¥30,000〜!驚きの価格でハワイまで飛べてしまうんです。もちろん為替変動や燃油サーチャージなどによって、時期による価格の違いはありますが、最低金額が安いだけでもかなり嬉しい料金設定です。フルサービスキャリアほどの手厚いサービスは不要!シンプルにフライトだけでOK!という方にかなりおすすめです。

LCCだと気になる…「ZIPAIR」の安全性は?

なんとなくLCCは安いから危険

なんとなくLCCは安いから危険そう、と一部の意見を目にしますが、実は飛行機事故は年々減少傾向にあり、一概にLCCが危ないということはありません。古い機体を使いまわしていると勘違いする方がいるかもしれませんが、前述した通りZIPAIRは大手航空会社も導入しているBoeing社787-8型機を使用しています。安全性が確立されたしっかりとした機体で、安全なフライトを提供しているので安心。もちろんどの航空会社でも行っている、離陸前のセーフティアナウンスも丁寧に行ってくれます。

「ZIPAIR」とフルサービスキャリアとの違い

ではZIPAIRとフルサービス

ではZIPAIRとフルサービスキャリアとの違いはなんでしょうか?日本の代表的なエアライン、ANA・JALと比べてみると以下の点で違いがありました。

フルサービスキャリアのANA・
※国際線にて比較

フルサービスキャリアのANA・JALと比べると、ほとんどのサービスが有料オプションとなっていますが、国際線でWi-fiが無料なのはZIPAIRだけ!JALの場合、データ使用量は無制限ですが、時間制で料金が決まっており1時間/$10.15〜提供されています(ちなみにJALはシンガポールで開催された「FTE APEX Asia Expo 2023」にて、「Best Wi-Fi in Eastern Asia 2024」を受賞しており、6年連続でWi-fiの質が高評価されています)。実はフルサービスキャリアでWifiを無料で提供しているところは限られており、Wi-fiの速度などに違いはあるかもしれませんが、それでも国際線でWi-fiを無料で使用できるなんて素晴らしい!

ただ、預け入れ手荷物は有料。ZIPAIRは路線によって、預け入れ手荷物の金額が追加で¥4000〜¥7000がかかります。ちなみに、フルサービスキャリアでも預け入れ手荷物が有料の場合もあります。ご注意を!

ここがポイント!

・Wi-fiが無料で利用できるのは、ZIPAIRだけ!
・ZIPAIRは、預け入れ手荷物が有料。

なお、LCCは座席が狭いという印象がありますが、ZIPAIRは世界標準のシートピッチを採用しています。2023年6月に発表されたイギリスのスカイトラックス(SKYTRAX)社による「World Airline Awards2023(ワールド・エアライン・アワード2023)」の中で、エコノミークラスだけを比較し評価する「World’s Best Economy Class(ワールド・ベスト・エコノミークラス)」では、JALが3度1位を受賞しています。2位のカタール航空も入れて、シートピッチ、シート幅を比較してみました。

1位のJALほどは広くありませ

1位のJALほどは広くありませんが、2位のカタール航空とはほぼ同じシートピッチとシート幅です。これを見ると、LCCだから狭いということは無さそうです。

ここがポイント!

・座席の広さは、世界標準クラス!

「ZIPAIR」と他のLCCとの違い

では他のLCCとどの点で違いが

では他のLCCとどの点で違いがあるのでしょうか?日本で運行している大手LCCのPeach(ピーチ)航空、Jetstar(ジェットスター)航空と比較してみました。

預け入れ荷物に関しては、重さの
※国際線にて比較

預け入れ荷物に関しては、重さの部分で若干他社よりも厳しい部分がありました。機内持ち込み手荷物やミール・ドリンクは同じ条件だったものの、違いが出たのはWi-fiと子供運賃。PeachやJetstarでは、外部との通信が可能なWi-fiサービスは提供していません。さらに子供運賃が設定されておらず、基本、大人と同額の料金がかかります。ZIPAIRは子供運賃が設定されており、子供用に座席を確保できるのはもちろん、親子の席は無料で座席指定が可能です(通常は有料オプション)。子連れファミリーはZIPAIR一択かもしれません。

ここがポイント!

・外部通信が可能なWi-fiサービスを提供しているのは、ZIPAIRだけ!
・他のLCCは、子供運賃が大人の同額かかる。
・ZIPAIRは、子供用の座席を確保できる。
・ZIPAIRは、子供が同乗する場合、座席指定が無料になる。

実際に「ZIPAIR」へ搭乗してみました!

【成田=シンガポール路線】

トータル的によさそうなZIPA

トータル的によさそうなZIPAIRですが、実際に搭乗してみないとわからない部分も多々あります。今回ZIPAIR協力のもと、LCCヘビーユーザーのトラベルライターSHIORIが実際に搭乗してみました!快適さやサービス、コスパ度合いなど辛口レポートしたいと思います。

ZIPAIR 成田=シンガポール線に搭乗

今回体験したZIPAIRのフラ

今回体験したZIPAIRのフライトは、成田空港からシンガポールのチャンギ空港までの直行便。ちなみに子連れ(2歳児)とのフライトです。行きのフライトは17:20発でした。まずは空港へ。出発は第1ターミナルでした!LCCの国際線のほとんどは第2・第3ターミナルからの出発が多い中、第1ターミナルを利用できるなんてなんだかLCCに乗る感じがしない…。以前、成田空港でLCCを利用した際は遠い第3ターミナルまで一生懸命歩いた記憶があります。第1ターミナルを利用できるだけでもちょっと嬉しいスタートでした。

チェックイン

私はチェックインカウンターの行

私はチェックインカウンターの行列に並ぶのが苦手なので、よく前日夜などにオンラインチェックインを利用します。今回は自動チェックイン機で手続きをしましたが、2023年11月20日〜オンラインチェックインができるようになりました。搭乗便の出発24時間前から、モバイル端末(スマートフォン・タブレット)よりチェックイン手続きが可能です。チェックイン手続きページからパスポートをカメラで読み取るだけ!

<チェックイン方法3つ>
①搭乗の3時間前から1時間前までにカウンターでチェックイン
②自動チェックイン機でチェックイン(成田空港発の一部のフライト)
③オンラインチェックイン(2023年11月20日〜サービス開始)
対象区間:ZG53(成田発 シンガポール着)、ZG41(成田発 仁川着)、ZG95(成田発 マニラ着)
※予約便の出発24時間前から出発90分前まで、モバイルチェックインが可能。
※その他区間については、順次開始予定。

今回は自動チェックイン機でチェックインした後、預け入れ手荷物を自動手荷物預入機で預け入れるという流れでした。カウンターはまったく混雑しておらず、待ち時間なしでスムーズに預け入れすることができました!

出国審査を経て、搭乗ゲートへ

出国審査を終えた後は、プライオ

出国審査を終えた後は、プライオリティパスを使ってラウンジで少し休憩し、フライト時刻の30分前にゲートへ。搭乗ゲートは24番。

LCCの搭乗ゲートって大体ター
※成田空港公式ホームページより

LCCの搭乗ゲートって大体ターミナルの端っことか、酷いと1度ゲートから外に出てバスに乗り換えて地上から搭乗というケースも多いのですが、今回の搭乗ゲートは北ウィング出国審査場を出てすぐの24番ゲート!近い!免税店でのショッピングに夢中になりすぎてゲートに行くのが遅れ、呼び出しアナウンスで怒られる…(過去経験あり)なんてことも、ゲートが近いと防げます。LCCなのに搭乗ゲートが近いなんて、ここもポイント高め。

いよいよ搭乗!

搭乗開始アナウンスがあり、いよ

搭乗開始アナウンスがあり、いよいよ機体に乗り込みます。ワクワクしながら搭乗。

総座席数は290席。シートは、

総座席数は290席。シートは、3=3=3の横9席です。前方にZIP Full-Flatシートが18席あり、後方にStandardシートが272席あります。クリスマスが近い11月の搭乗だったので、ヘッドがクリスマス仕様にデコレーションされていました。ZIPAIRのシートは前方から後方を眺めるとブラックの引き締まった印象に、後方から前方を見るとグレーの開放感ある印象になるようシートの配色が工夫されています。

座席に座った感想は?

座ったシートは機体後方の54K

座ったシートは機体後方の54Kです。広さは充分!モニターはありませんが(※LCCでモニターがある機体は乗った経験はなし)、その代わり収納や充電ジャックなどが工夫されたつくりになっています。

機内食を事前にオーダー

ミール(機内食)はついていない

ミール(機内食)はついていないので、事前にオプションでオーダーが必要です。私は「スパイス香るZIPカレー ¥1,600」をオーダー。

その他サービス、アメニティなど…

機内でのアメニティ(アイマスク、枕、ブランケット等)の配布はありません。自身で持って行くor機内サービスで購入する必要があります。フライトマップは専用サイトで閲覧可能。今どのあたりを飛んでいるかチェックすると旅気分が高まります。また準備をして搭乗しても、長い時間のフライトで意外と喉が渇いたり、スナックが欲しくなったりするもの。そんな時は携帯から機内販売メニューを購入することができます。オンライン決済が済んだら、CAさんが持ってきてくれるので便利!

シンガポールに23:50に到着!

ZIPAIRを堪能しながら快適なフライトを楽しみ、23:50(現地時間)にシンガポールに到着。機内は湿度が一定量保たれているとのことでしたが、それでもマスクなしだと少し乾燥が気になったので、やはり機内はマスクを付けて過ごした方が良さそうです。約7時間半のフライトで長丁場でしたが、LCCとは思えないほど快適なフライトを楽しめました。

【余談】ちなみに帰国のフライトについて…

帰国便は、シンガポール=成田空港へ現地時間の夜中1:20発のフライトでした。同じくチャンギ空港からの出発です。チェックインはフライト3時間前の22:20から。夜中のフライトのため仕方ないのですが、カウンターは大行列でした。また帰りも機内サービスでミールを注文していたのですが、予約時は時間指定ができず。(時間指定ができるミールの注文数は1便あたり上限20食までだそう)何時に出てくるのかと思ったら、フライトから約1時間後の夜中2時過ぎ。翌朝9時着のフライトだったので、てっきり朝に提供されると勝手に思っていました…。衛生管理上、朝へ提供時間の変更はできないとのこと。深夜フライトの方はミールの注文時間にご注意頂ければ幸いです…。

【総評】メリット、デメリット

ZIPAIRを実際に利用してみて、事前情報だけでは分からなかったことがたくさんあったので、とても勉強になりました。LCCとは言え、フルサービスキャリアにひけを取らないスペックとサービスなので、お得に旅行を楽しみたい方には是非利用して欲しいと思います。ちなみに、フルサービスキャリアを利用する方はマイルを気にされると思いますが、ZIPAIRにもマイルのような制度があります。ZIPAIR Clubに入会するとZIPAIRポイントが付与され、JALのマイルとも相互交換が可能です。お得にポイントを貯めることができるので、こちらも活用してみてください。

最後に辛口評価でZIPAIRのメリット・デメリットを出したいと思います!

<メリット>

・何よりもお手頃価格!
・大手航空会社も採用しているハイスペックな機体
・シートのテーブルや収納ポケット、充電ジャックの充実度が◎
・無料Wifiでスムーズに頼める機内サービス
・機内食の種類が豊富で、カレーが特に美味しい
・子供運賃があり、座席指定も無料

<デメリット>

・深夜便のミールの提供時間の指定が難しい(1便上限20食)

個人的にはフルサービスキャリアの手厚いサービスはマストではないので、よりサービス内容を厳選し、不要なものを削ぎ落として価格に還元しているZIPAIRはかなり良いと思いました。これから海外旅行を考えている方は是非検討してみて!以上、トラベルライターSHIORIのレポートでした。

この記事を書いたのは…

トラベルライター SHIORI

トラベルライター SHIORI
伝統美容などを調査しながら、半年間アジアを放浪。帰国後、トラベルライターとして独立。WEBメディアや書籍、雑誌、TV等で旅のコンテンツの取材・執筆・PRを多数行っている。好きなエリアは東南アジア。観光業に特化したPRコンサル&WEBサイト制作事業「TROVATORE」も運営。
▶︎Instagram:@traveler_s23
▶︎Blog:トラベルライターSHIORIの旅ブログ|美TRIP

取材・撮影・執筆/SHIORI 取材協力・提供/株式会社ZIPAIR Tokyo

Magazine

最新号 202412月号

10月28日発売/
表紙モデル:山本美月

Pickup