「恋愛と仕事は両立できるか」上野千鶴子先生に聞きました【自立した女性は恋愛も有利なのか】

「仕事を優先すると恋愛がうまくいかなくなるのでは?」「今のカレと結婚するとなると、仕事を続けられるか迷う…」選択肢があるからこそ悩む、CLASSY.世代。フェミニズムの第一人者であり素敵な女性の、上野先生にモヤモヤを聞きました。

経済的自立は恋愛の資源、どんなときも収入源は手放さずにいてほしい

「自立した女性は恋愛も有利でしょうか?気を付けるべきことはありますか?」
最近読んだ石島亜由美さんの『妾と愛人のフェミニズム』(青弓社、2023年)に、戦前の妾が、戦後は愛人に変わったと書かれていて、面白い指摘だなと思いました。この変化の背景にあるのは、依存ではなく自立する女性が増えたということ。妾は囲うもの、養うもの、お金のかかるもので、いわば男の財力の証でしたが、愛人はお金がかからない。自立した女性は、自分で自分をメンテナンスしてくれるので、甲斐性のない男性でも愛人が持てるようになりました。経済的自立は恋愛の自由の基本のきですが、女性の自立は男性に都合のいいことなのかもしれません。自立した女性が、なんだか家父長制の補完物のような気もしますね(苦笑)。

それは妻の方でも注意すべきこと。妻に家庭の負担を一切押しつけて、愛人が美味しいところだけ持っていく、という事態も起こり得ます。恋愛は自由ですからいつでも止められるけれど、結婚したらそう簡単に妻という立場から降りることはできないですから。だからこそ、離婚を選べる自由を持っておくことが大切です。今や離婚は珍しいものではありませんが、離婚理由の3分の1はDVというデータもあります。若い夫たちもけっこうDVやモラハラをやっていますが、今の妻たちは昔の妻と違って、ガマンしなくなったということでしょう。離婚できる条件を確保するためにも、収入源は絶対に手放さずにいてほしいですね。

「仕事を優先していると、彼に浮気されたという話もよく聞きます」
あなたが仕事を優先してもしなくても、この彼はきっと浮気をしたでしょう(笑)。仕事が忙しいかどうかは関係ありません。よく、「忙しいので恋愛ができない」とか「出会う機会がない」という声を聞きますが、時間資源は恋愛の妨げにはなりません。ヒマな人が恋愛をするわけではないし、どんなに忙しい人でも恋愛する人はします。恋愛は寸暇を惜しんでするもの。育児となると時間資源が決定的なファクターになるので仕事と両立できないのは分かりますが、仕事と恋愛が両立できないなんてことはありません。

そもそも恋愛欲と結婚欲は別、というのが私の仮説。若い世代と接していると、恋愛と結婚は別物と考えている人も増えています。彼女たちは結婚しても恋愛欲を諦めません。恋愛と結婚では相手の選び方も違います。結婚相手には親に紹介できない人は選べないと彼女たちは言いますが、恋愛相手にはワルも選ぶ。恋愛と結婚は別なので、それでいいんです。だから、自分にあるのは、恋愛欲なのか結婚欲なのか、切り分けて考えてみてください。結婚欲だったら婚活するとか結婚する気がある相手を対象にするとか、それに相応しいふるまいをした方がよいでしょう。

教えてくれたのは...上野千鶴子先生

CHIZUKO UENO 19

CHIZUKO UENO
1948年富山県生まれ。社会学者。東京大学名誉教授。認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。女性学・ジェンダー研究の第一人者で、近年は東大祝辞でも話題になった。写真の著書は『上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!』(田房永子氏との共著/大和書房)『限界から始まる』(鈴木涼美氏との共著/幻冬舎)『女の子はどう生きるか教えて上野先生!』(岩波ジュニア新書)など。他著書多数。

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