映画やドラマで活躍し、大河ドラマ『どうする家康』の信康役で大きな注目を集めている細田佳央太さんが、有観客では初めてとなる舞台出演でタイトルロールに挑戦! 今回の舞台にかける思い、そして細田さんが考える〝ウェルビーイング〟について2回に分けてインタビューをお届けします。
――今回の舞台、『メルセデス・アイス MERCEDES ICE』出演のお話がきた時のお気持ちを教えてください。
何より「嬉しい!」と思いました。ずっと抱いていた、舞台をやりたいという気持ちと演出家の白井晃さんとご一緒したいという気持ちが両方叶いましたから!
――舞台のお仕事に対する思いと、白井さんの作品のどんなところに惹かれるのかを伺えますでしょうか。
自分の芝居を高めたいという思いと、「舞台から見る景色はどんなものだろうか?」と思ったことが舞台に出演したいと思ったきっかけです。白井さんが作る舞台の、答えをすべて提示しないところに魅力を感じています。この後どうなったのか、観る側に考える余白を与えてくれるところが好きです。
――『メルセデス・アイス』は劇作家フィリップ・リドリー氏の児童小説ですが、台本を読まれてみていかがでしたか。
巨大なタワーを軸に描かれる三世代にわたる人物たちの奇妙で幻想的な物語です。この作品も白井さんらしく、答えを提示するのではなく観客に委ねているところが面白いなと思いました。また、内容に加えて気になっているのが、この作品は「せたがやこどもプロジェクト2023」の一つであるということです。18歳以下のお客様を無料でご招待するのですが(編集部注※各回限定150名)、高校生と小さいお子さんでは理解力に幅があるので、それぞれがどう感じるのだろうと思いました。大人も、お子さんがいるいないなどの立場によって感じ方は違ってくると思います。いろんな世代やさまざまな立場の方達に、この作品はどう届くのだろうと考えながら創り上げたいと思っています。
――細田さんが演じるメルセデス・アイスの役作りのプランなどはありますか?
映像と違って舞台はお稽古の時間がしっかりありますよね。演出家の白井さんやキャストの皆さんと創り上げていきたいので、自分だけで役を決めつけたりこだわりすぎたりするのはやめようと思っています。最終的に役をつかむことができて、それを皆さまに届けることができることを目指しています。
――メルセデス・アイスに共感するところや、逆に理解できないなと思うことを教えてください。
何よりも、僕が小さいときはメルセデス・アイスみたいなわがままな子供ではなかったです(笑)。あそこまで何でも欲しいと言いませんでしたし、親も求められたからと何でも与えたりはしませんでした。ですので、メルセデス・アイスのわがままさと、それに応じてしまう親をあまり理解することはできません。でも、わがままさは誰もが持っている部分だと思うんです。その共通点を膨らませてメルセデス・アイスに近づいて行こうと思っているので、理解できないところも共感できるところもわがままさということになりますね。
――細田さんの小さい頃のことを、もう少し詳しく教えていただけますか?
すごくシャイで、人前に出るのが苦手でした。今は一人カラオケが趣味なんですけど、昔は大きな音がイヤでカラオケも嫌いでした。母から「小さい頃は家と外の顔の違いがすごかった」と言われたことがあります。家ではいい子にしているけど、家で感じたストレスを外で発散していたようで、「外での評判はあまりよくなかった」とも言われました(笑)。
――4歳から芸能界にいらっしゃるので、積極的な性格で外ではよくほめられているお子さんだったのかと勝手に思っていました!
最近の子役達がすごいので僕も同じだったと思われているとしたら…まったく違いますね。笑顔の写真が必要な場合は、カメラの近くで音の出るオモチャを出してくれたら気になってカメラのほうを見て何となく笑う、みたいな普通の子でした(笑)。今の子役は大人に言われたことを理解して実行しているので、本当にすごいなと感心しています。この業界には小さい頃からいますが憧れて入ったわけではないので、子どもの頃は『ドラえもん』や『ポケットモンスター』などのアニメばかり観ていました。その頃は芝居が上手くなりたいという気持ちや俳優に対する執着がまったくなかったので、舞台やドラマはほとんど
観ませんでしたね。
――このお仕事でやっていこうと思ったきっかけを教えてください。
『町田くんの世界』という映画をやらせていただいたのがきっかけです。池松壮亮さんとのシーンがあったんですが、そのシーンの撮影があまりにも楽しかったんです。何をしていてもニヤニヤが止まらず、早く芝居がしたくてたまらない!という感じでした。あれは、今まで生きてきた中で感じたことのない高揚感でした。スポーツでいうところのゾーンに入ったという感じです。石井裕也監督にこのことをお話したら「なかなか味わうことのできない、奇跡のような体験だ」とおっしゃってくださいました。今は、どの現場でもゾーンに入る瞬間が一回でもあればいいなと思ってやっています。
――有観客の舞台出演が初めてとなるこの作品でゾーンを味わえたらいいですね。
舞台だからこそ、再び体験できるのでは?と思っているんです。舞台はスタートしたら最後までカットがかかることなく一回戦で演じきれるので、映像より明らかに感情を高めることができますから。その瞬間を会場の皆さまと一緒に体験することができたら、本当に幸せだろうなと思っています!
せたがやこどもプロジェクト2023≪ステージ編≫
『メルセデス・アイス MERCEDES ICE』
せたがやこどもプロジェクト2023≪ステージ編≫である本公演は、各回150名(合計1500名)限定で18歳以下のお客様を無料でご招待(先着順、要予約・発券手数料、当日要証明書)。リドリー作品ならではのどこか奇妙で不思議な世界へと子どもたちを誘いながら、この夏休みに子どもにも大人にも心に残る演劇体験をお届けします。【原作】フィリップ・リドリー【翻訳】小宮山智律子【演出】白井晃【出演】細田佳央太 豊原江理佳 東野絢香 篠原悠伸 名村辰 大場みなみ 斉藤悠 今泉舞 松尾諭【日程】8月11日(金・祝)~20日(日)【会場】世田谷パブリックシアター
細田佳央太
4歳で活動を始め、多数のドラマや映画に出演。‘19年には1000人超の応募者の中から抜擢され、映画『町田くんの世界』で主演を務める。最近の主な出演策は映画『花束みたいな恋をした』『子供はわかってあげない』『女子高生に殺されたい』『線は、僕を描く』『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』、ドラマ『もしも、イケメンだけの高校があったら』『クレッシェンドで進めなど』『ドロップ』など。NHK 大河ドラマ『どうする家康』での松平信康役も好評。
【細田さん着用衣装】ジャケット¥44,000シャツ¥24,200パンツ¥26,200 <すべてトゥモローランド>サンダル ¥46,200<パラブーツ × ランドオブトゥモロー>(すべてトゥモローランド 0120-983-522)
撮影/平井敬冶 ヘアメーク/菅野綾香 スタイリング/岡本健太郎 取材/よしだなお 構成/中畑有理(CLASSY.編集室)