目上の人と話す時や取引先の人に電話で対応する際に、正しい言葉を知っていると、コミュニケーションをスムーズにとることができます。
しかし誤った言葉の使い方をしていると、一般常識に欠ける人だと思われたり、「この人で大丈夫かな」と不信感を与えてしまったりすることも。ひとりの大人として、社会人として、最低限正しい言葉遣いは覚えておきたいものです。
そこで今回は、意外と見落としがちな“使い方を間違っている日本語”をご紹介します。
1.「被害をこうむる」
ニュースなどで「被害をこうむる」と耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。よく使われているフレーズなだけに、「被害をこうむる」が正しいと思われがちですが、実は誤った日本語のひとつです。
というのも、そもそも「被害」という熟語に、すでに「害を被る」
「被害をこうむる」ではなく、「害を被る」あるいは「
2.「とんでもありません」
主にビジネスシーンなどで、謙遜の気持ちを込めて「とんでもございません」という人は少なくありません。よく耳にするフレーズではありますが、「とんでもありません」は文法としては間違った表現なのです。
「とんでもない」という言葉は、「とんでも」+「ない」が組み合わされているのではありません。「とんでもない」でひとつの形容詞なので、「ない」の部分だけを「ありません」と変化させることができないのです。
そのため「とんでもありません」は誤りで、「とんでもない」を丁寧語で表現した「とんでもないことです」あるいは「とんでもないことでございます」が正しい使い方です。
3.「お休みをいただいております」
休みを取っている社員宛の電話がかかってきた時、どういった言葉で対応しているでしょうか。電話だと、メールのように時間をかけて考えることができず、その場ですみやかに答えなくてはならないせいか、つい誤った言葉を使いがちです。
たとえば「○○は本日お休みをいただいております」という言葉。自社の社員に対して「お休み」と敬語を敬語を使ってしまうのは違和感があります。しかし、「休みをいただいております」と言うのも、ぶっきらぼうな印象に聞こえてしまう可能性が。
そこで「休み」を「休暇」とし、「休暇をいただいております」とするのが良いでしょう。または「休み」を動詞にして「休ませていただいております」と言うこともできます。
4.「厚くおわび申し上げます」
相手に対する不手際があって詫びを入れる場合、つい「厚くおわび申し上げます」と使ってはいないでしょうか。謝るという行為は大切なことですが、そんな時に言葉の使い方が誤っていると、失敗に失敗を重ねてしまうということになりかねません。
「厚く」という言葉は「厚く御礼申し上げます」などのように、良いことの時にのみ使うことができます。マイナスの時には使えない表現なので注意しましょう。ちなみにこの場合「
いかがでしたか? 普段当たり前のように使っていたり、耳にしたりする言葉でも、実は使い方を間違っているケースが少なくありません。まずは今回ご紹介した言葉から、正しい使い方をしっかりと覚えておきましょう。
そして他にもあいまいなまま使っている言葉があれば、言葉遣いやマナーについて書かれた本などを参考に、正しい意味と使い方を調べてみてくださいね。
参考文献
監修:宇野義方 著:日本語倶楽部 『使ってはいけない日本語』(河出書房新社)
文/大内千明文 画像/Shutterstock(Pablo Calvog、g-stockstudio、Olena Yakobchuk、Antonio Guillem)