2月から上演される三谷幸喜さん作・演出の舞台『笑の大学』で、二人芝居に初挑戦する瀬戸康史さん。インタビュー後編では、忙しい毎日でも常に自然体でいられる秘訣など、パーソナルなお話を伺いました。
――舞台、ドラマと絶え間なく活躍されとても多忙な日々だと思いますが、瀬戸さんはいつも穏やかでニコニコ笑っているイメージがあります。仕事でもプライベートでも、焦ったり落ち込んだり、イラッとすることはあるのでしょうか?
ありますね、その瞬間、瞬間ではありますけど。すぐ忘れちゃうんです。あまり引きずらないですね。全部ポジティブ思考といいますか(笑)、性格的なものだと思います。親に感謝です。
――いつもにこやかで自然体でいられるコツを教えてください。
自分に嘘をつかないってことなのかな。僕、結構フラットな人間なんで、「この人ちょっと苦手だな」って思ったら話しづらくなってしまうし、すぐ表情に出ちゃったり笑えなくなったりするんです(苦笑)。たぶん自分に噓ついてないからなんですよね。それがコツなのかなあ。生きていくには嘘つかなきゃいけないこともあると思うんですけど、僕はあんまりそういう生き方は好きじゃないので。誰しも、合わない人っているじゃないですか。それよりも合う人のほうが多いと思うし、その人とは「この人生では合わなかったんだな」っていう考え方をしてます。
――たとえば作品が重なってハードスケジュールなときはどう乗り越えていますか?
そういうときこそ、自分のペースを極力くずさないようにするかな。忙しすぎるからって朝ご飯を抜いたりはしないし、ハードなときこそ自分のペースを守らないと、体調も含めて壊れちゃいそうな気がして。お風呂もシャワーだけのほうが圧倒的に早いんですけど、ちゃんと湯船につかります。睡眠時間が少し減ったとしてもそのほうがリフレッシュできるし、いい睡眠ができそう。
――今回の舞台『笑の大学』について「緊張は今のところないですね」とおっしゃっていましたが、プレッシャーを感じることはあるのでしょうか?
緊張はまだしてないですけど、プレッシャーは…三谷さんにあれだけのことを言っていただいているのでやっぱりありますよ。感じてないわけじゃないですけど、毎回感じてるとくたびれるので、プレッシャーも自分の糧にしてるというか。いい具合にかみくだいて変換して外に出していくように――。作品に入るときもそうだし、舞台挨拶のときも「伝えなきゃいけない」というプレッシャーがあります。こういう取材でもそう。プレッシャーってめちゃめちゃいろんなところにあるので、ちょっと楽に考えないと。それが防衛本能みたいになってます。
――「これがあると頑張れる!」というものや自分へのご褒美的なものはありますか?
まず、家族ですかね。自分のためだけには頑張れない。自分のためだけだと甘えちゃって「これでいっか」ってなっちゃうけど、家族のことを思うと頑張れる。あと…20代の頃は食べ物にあまり興味がなかったんです。全部、サプリメントだったらいいのになって思うくらい食べることに興味がなかったんだけど、どんどん興味が湧いてきて。美味しいご飯を食べるっていうのが自分のなかでのご褒美かな。ちょっといい中華とかお鮨とか、普段は食べないようなものを食べるのがご褒美になってますね。
――今作の全8都市公演が終わったら、プライベートでやりたいことや行きたいところはありますか?
たぶんすぐ次の仕事に入るのでそれが終わってからになりますが、温泉に行きたいです。ベタですけど。みんなが温泉、温泉って言う理由がわかりますね。やっぱり温泉って癒されます。20代の頃は「こんな熱いお湯にずっと浸かって何がいいんだろう」と思ってたけど(笑)。年とったんですかね(笑)。
瀬戸康史
‘88年5月18日生まれ 福岡県出身 血液型A型●’05年よりドラマや映画、舞台に出演。‘17年の舞台『関数ドミノ』で文化庁芸術祭演劇部門新人賞を受賞。最近の主な出演作はドラマ『私の家政夫ナギサさん』『霊媒探偵・城塚翡翠』、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』、映画『コンフィデンスマンJP -英雄編-』『愛なのに』、舞台『日本の歴史』『彼女を笑う人がいても』『世界は笑う』など。映画『愛なのに』で第44回ヨコハマ映画祭の主演男優賞を受賞。
PARCO劇場開場 50 周年記念シリーズ
『笑(わらい)の大学』
‘96 年の初演で読売演劇大賞「最優秀作品賞」を受賞、世界各国で翻訳上演され映画化もされた三谷幸喜の傑作二人芝居。三谷幸喜が演出するのは初となる。戦時色が濃厚になる昭和15年、登場人物は警視庁検閲係・向坂睦男(内野聖陽)と劇団「笑の大学」座付作家・椿 一(瀬戸康史)。非常時に喜劇など許さないとする向坂と、なんとか上演許可をもらいたい椿。相対する二人のドラマが始まる。作・演出/三谷幸喜 ●東京公演’23年2月8日(水)~3月5日(日)PARCO劇場。その後、新潟、長野、大阪、福岡、宮城、兵庫、沖縄の全8都市にて上演。https://stage.parco.jp/program/warai
撮影/木村 敦 ヘアメーク/須賀元子 スタイリング/小林洋治郎 取材・文/駿河良美 構成/中畑有理(CLASSY.編集室)