今回は、漢字三文字の熟語について、読み方を紹介していきます。四字熟語は漢字問題の定番ですが、この三字熟語も読み間違いをしてしまうようなものがあります。使用されている漢字自体は、常用漢字2,136字の範囲内ですが、読み方はひと工夫が必要です。
1.「十八番」
最初は、「十八番」です。例文は「カラオケで、十八番の歌を披露する」。最初にお断りしておくと、そのまま「ジュウハチバン」と読んでもけっして間違いではないのですが、「熟字訓(いわゆる当て字)」として読む、一般的な読み方は分かりますか?
正解は、「おはこ」でした。「十八番(おはこ)」とは、「御箱」であり、「箱に入れて秘蔵するもの」のことです。もともと、歌舞伎の市川家がお家芸とする台本を箱に入れて大切に保管したことから出た語ですが、現在では「得意とする芸や物事」あるいは「興に乗るとすぐに出る口癖・動作」の意味でも使います。
2.「他人事」
次は、「他人事」です。実は、過去にCLASSY.ONLINEでは紹介したことがあるのですが、読み方がよく話題になる言葉で、つい最近も一部で世間を賑(にぎ)わせたようですので、あえて再登場させます。では、例文です。「彼はまるで他人事のように言った」さて、おわかりですか?
これは「たにんごと」でしょうと、そのまま読んだ方のほうが多いことでしょうが、正しくは「ひとごと」です。「人事(ひとごと)=他人事」なんですね。明治・大正期の文学で、「他人事」のようにふりがなつきで書かれたものが、後にふりがなが取られ、「たにんごと」と読まれるようになったそうです。また、「人事(ひとごと)」では、「人事異動」などの「人事(じんじ)」と紛らわしいので、「他人事」と書くようになったとも考えられます。
ですから、そのまま普通に読めば「たにんごと」となってしまうのですが、言葉として正しいのは「ひとごと」です。「たにんごと」と読んでしまうと、「誤読」と判断する方も多いと思われますので、「ひとごと」と読むことをお勧めします。テレビ・ラジオでも、そのように統一しているはずです。
なお、「自分とは関係がないこと」という意味で、「ひとごと」を表記する場合は、読みやすさを考えて「人ごと」「ひと事」「ひとごと」などの使い方が見られます。私もこれに賛成です。
3.「従三位」
最後は、「従三位」です。「位階(身分・階級のランク)」を表わす言葉の一つです。耳なじみのない言葉かもしれませんが、現在放映中の大河ドラマ「鎌倉殿の十三人」の中で、おもしろおかしく使われたことから、ネットでもまさかの話題ワードになりました。さて、何と読むでしょうか?
「ジュウサンイ」または「ジュサンイ」とか読んだ方はいませんか? 正解は「ジュサンミ」でした。「位階」は、一番高い「正一位(ショウイチイ)」に始まり、以下「従一位(ジュイチイ)」「正二位」「従二位」と「正(ショウ)」と「従(ジュ)」を組み合わせて「八位」まで続きますが、「三位」だけは「サンイ」ではなく、「サンミ」と読みます。これは、「連声(レンジョウ)」という発音変化によるもので、「因縁」を「インエン」でなく「インネン」と読むのもこれです。「従三位」と言ったら、上位高官です。
なお、四字熟語「三位一体(サンミイッタイ)=三つの異なるものが一つになること」でも、この「サンミ」の読み方をしますので、覚えておきましょう。
では、また次回。
《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「新字源」(角川書店)
・「1秒で読む漢字」(青春出版社)
・「なぜなに日本語もっと」(三省堂)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)