今回は、意外と読めない漢字一文字の読みを紹介します。漢字そのものは、私たちが日常生活で主に使う漢字として定められている「常用漢字(2,136字)」の範囲内ではありますが、その音訓表にはない「表外読み」です。漢字一文字で送り仮名も必要ありません。ヒントがわりの例文を参考にして答えてください。
1.「薄」
最初は「薄」です。常用漢字表では、「ハク/うす(い・める・まる・らぐ・れる)」の音と訓がそれぞれ示されていますが、次の例文の「薄」は、何と読みますか?「草原の薄がさわやかな秋の風になびいている」
正解は「すすき」でした。
「薄(すすき)」は、イネ科の多年草で、「尾花(おばな)」と呼ばれる白い穂のような花穂を持ちます。「秋の七草」のひとつとして、特に十五夜のお供えには欠かせませんね。なお、「すすき」の名前の由来には諸説あるようですが、その名を当てた「薄」の字には、もともと「くさはら・くさむら」の意味はあります(特に「すすき」を指すものではないようです)。また、常用漢字外ですが、「芒」の字も同じく「すすき」と読みます。こちらは、もともとイネや麦など先端に細毛を持つ種類を指す漢字です。季節の節目を示す「二十四節気(立秋・秋分など)、」には「芒種(ボウシュ)※イネや麦などの穀物を植える時期のこと。今年は6月6日」というのがあります。
2.「欠」
次は「欠」です。常用漢字表では、「ケツ/か(ける・く)」の音・訓が示されていますが、次の例文の「欠」は、何と読みますか?
「出てしまいそうになった欠をかみ殺した」
正解は「あくび」でした。
眠い時や退屈した時に、自然に口が大きく開いて起こる「呼吸運動」です。この「あくび」は、「欠伸」と二字の漢字で表記されることもあります(こちらは口を開いてあくびをして、うーんと背「伸」びするポーズ)が、「欠」一文字でも「あくび」と読みます。
ところで、漢字の構成要素である「部首」の勉強を国語の時間に勉強したことがありますよね。「次・欲・歌」などの漢字の部首名は、この「あくび(かける・けんづくり とも言う)」です。
3.「項」
最後は「項」です。常用漢字表では、「コウ」の音読みのみが示されていますが、次の例文の「項」は、何と読みますか?
「着物姿の女性の美しい項に目を奪われる」
正解は「うなじ」でした。
「うなじ」とは、首の後ろの「首筋・襟首」と呼ばれる部分の古い言い方です。「うな」とは首や首の後ろを指す語で、「うなずく」や「うなだれる」の「うな」もこれです。「じ」は「尻(しり)」で「後ろ」を意味します。
いかがでしたか。たった一文字でも奥が深いですね。では、今回はこのへんで。
《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「新字源」(角川書店)
・「1秒で読む漢字」(青春出版社)
・「漢字なるほど雑学事件」(PHP文庫)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)
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