人気のジャニーズJr.が顔を揃えた青春ドラマ第2弾
ジャニーズJr.が女子としゃべれないピュアな男子高校生を演じるドラマ『恋の病と野郎組 Season2』。2019年にBS日テレで放送された好評シリーズの第2弾で、月曜の深夜に日テレでオンエアされています。共学の高校に通いながらも、男子だけのクラスに割り振られた8人の友情ストーリー。彼女がほしい、青春したいと思いながらも男子クラス、通称「野郎組」でくすぶっているうちに自意識過剰になって、「女子と話せない病」になってしまいます。
現実的にジャニーズJr.の男子たちが高校生活でモテないとか女子と話せないとか、ありえないと思います。高校では別のクラスの女子たちが休み時間に列を作り、ファンが集まりすぎて結局女子と話せない、とかはあるかもしれませんが……。
「ザテレビジョン」2/18号でこのドラマが特集されていて、出演者の座談会も収録。実際モテるかモテないかという話題になっていました。中村嶺亜はみんなにモテると思われていて、本人は「モテるとかじゃなくて、心理学みたいなもんだからさ~。全てはバランスの綱引きだからね」と、上級者の余裕を漂わせていました。黒田光輝もコミュ力の高さを評価され、本人もモテると自認。作間龍斗は意外にもモテないとのこと。そうは言っても謙遜しているに違いない……と思ってしまいますが、このドラマを観ているぶんにはファンも安心です。野郎組は野郎組。女子を好きになってアプローチしてもなかなかうまくいかず、こんなに穏やかで温かい気持ちで見守っていられるジャニーズドラマはなかなかありません。
すあまの意味は「すきです あなたが まじで」
1話完結でどこから観ても楽しいドラマ。そのあらすじは……高校3年生になった「野郎組」の8人。2年生の「フレッシュ野郎組」の後輩たちに慕われ、彼らの手前、モテているふうを装います。純粋な後輩たちは、8人がモテモテだと勘違いして「激モテG8」と呼んで崇めます。でも、実際は「フレッシュ野郎組」のほうが女子に慣れていて普通に会話できるという現実が……。「女子と話せない病」が再発してしまった3年生の「野郎組」の悶々とした日常を追うドラマです。名字が数字ではじまっていて。話数と主役が対応しているのが親切でわかりやすいです。
たとえば第1話は、一条大地(高橋優斗)が後輩の十文字雄大(黒田光輝)の片思いの相手、茶道部の部長・シオリを好きになってしまう、というストーリー。十文字がシオリに渡してほしいと、一条に和菓子のすあまを託します。すまあの意味は「すきです あなたが まじで」だとか。後輩に頼まれてシオリにお菓子を渡しに行ったものの自分の思いを抑えきれず、後輩の告白を阻止しようとして、すあまを彼女の前で貪り食べてしまう一条。結果的に、十文字に「めっちゃ消費期限すぎてた」と感謝されるというオチでした。その後、十文字たちが女子と親しげに話している姿を見て「あいつら女子と普通に話してる」とショックを受け「うわぁぁぁぁぁ!!」と叫んで走り出す8人。毎回、絶叫して走るという金八先生へのオマージュのようなオチになっています。これはこれで青春です。
第2話は二葉桜太郎(川崎皇輝)が後輩とのやりとりで、2年生のリカが自分のファンらしいと聞いて、彼女に嫌われないためスマホ依存を断ち切ろうとします。そのスマホを十文字に拾われてピンチになったり、結局リカは担任の先生(濱田崇裕)のことが好きだったと知ったり、浮かばれません。また叫んで走り去る野郎組でした。ありあまるエネルギーが勉学や男女交際には使われず、最後叫んで走ることで発散されています。
第3話は三村蓮(中村嶺亜)が映画の脚本の執筆を頼まれる、というストーリー。三村は去年の演劇部の舞台で「刹那に光るカノープス」というタイトルの、中二病感みなぎる脚本を書いた実績がありました。映画の主演をやる予定のアンナにその時の脚本を評価され、やる気になる三村。「脚本は君へのラブレターだよ」とピュアな思いを込めて執筆するのですが、映画の相手役は後輩の十文字で、目の前でイチャつかれる羽目に。「リア充死すべし……」とつぶやいた三村は、オチをゾンビに襲われるストーリーに書き換えるのでした。
視聴者が見たいものを見せてくれるありがたいドラマ
実際はモテまくっている彼らがオーラを隠して、モテない男子になりきっている演技力にも驚嘆させられます。そして第6話は2019年のSeason1と同じくBLっぽい流れに。視聴者が見たいものを見せてくれるありがたいドラマです。
いつの間にかサッカー部のマネージャー、アユミと交際をはじめた六反田(岩崎大昇)。「女子と話せない病」も自然と治り、手を振ってバイバイしたりチャラついていました。しかしサッカー部の七瀬(作間龍斗)も、内心アユミに片思いしていたのです。アユミとてんとう虫を眺めて楽しそうにしゃべる六反田。「六ちゃんが彼氏ならあきらめるから」と、七瀬は切ない表情で見守ります。そんな七瀬の悲しそうな顔を見て、何かにかられたように走り出す六反田。以前、七瀬が好きだった気持ちを思い出して腐女子の馬場に相談します。「僕、また七瀬のことが好きになりそうなんだ」「どえーっ」「落ち込んでる七瀬のこと見てたらまた急に胸がドキドキしてきて」「はぁ~、不憫萌えってやつ?」
六反田は、馬場に「腐女子としてはその展開はたまらんよ」と言われて、ますます七瀬のことを意識するように。付き合っている彼女がいながら……と悩む姿に、馬場は「それって浮気だよ。まじめクズだよ。ジャンルとしてはありだけど」と率直な言葉を投げかけます。つい感情移入したくなるキャラです。気まずくなった六反田と七瀬。そんな中、後輩の応援演説の出し物で六反田と七瀬は漫才コンビを組んで芸を披露することに。でも途中辛くなってしまった六反田は、教室を走り出てしまいます。そしてアユミを呼び出し「違うことばかり考えている自分に気付いて。こんな気持ちで付き合い続けるのは不誠実だ」と、別れを切り出します。突然の別れ話に「うんわかった、別れよう」と笑顔で受け入れるアユミ。普通こんなイケメンに急に別れを切り出されたら、天国から地獄でとても正気ではいられないところですが……。
フリーになった六反田が、七瀬といい感じになると腐女子目線で期待していたのですが……七瀬は六反田が腐女子の馬場と浮気していると勘違いして「二股かけてたなんて、最低だな!」と吐き捨てます。六反田は「おまえのせいだろうが!!」とかわいさ余って七瀬をビンタ。鼻血を流す七瀬を見て、また叫んで走り出すのでした……。Season1でも七瀬がふざけて鼻から牛乳を流す姿を見て六反田の気持ちが冷める、という展開が。今回もこんな些細なことで恋が終わるとは……男子高校生は繊細です。
7話の予告ではかなくかき消されたBLの夢
でも最も切なかったのは、直後に流れた次回の予告です。ドSで美人の女教師が臨時の副担任として野郎組を担当するのですが、なんと七瀬がその先生のことを好きになってしまい、「先生のことが好きです!」と真剣に告白するシーンが流れました。せっかく芽生えたBLの夢がはかなくも一瞬でかき消されました。というか七瀬は前回までアユミが好きだったのに、切り替えが早すぎます。第7話で先生にバラの花を渡してアプローチする七瀬を、六反田が少し切なげな表情で見つめていたように感じられたのは気のせいでしょうか……。成就することがない2人のすれ違いに心がうずきます。また次の展開があることを期待。
それにしても次々人を好きになったり、心変わりしたり、男子高校生の心はうつろいやすく、恋愛体質のようです。でも、毎回のように玉砕。簡単に恋が生まれて成就するドラマが多いですが、現実はそんなにうまくいきません。ジャニーズJr.級の男子も失恋する、というストーリーに励まされ、生きる原動力がわいてくるドラマです。ただ、もし推しのジャニーズJr.に現実世界で彼女ができたら……今度は視聴者が叫びながら川原を疾走したくなりそうです。
辛酸なめ子
イケメンや海外セレブから政治ネタ、スピリチュアル系まで、幅広いジャンルについてのユニークな批評とイラストが支持を集め、著書も多数。近著は「辛酸なめ子の世界恋愛文学全集」(祥伝社文庫)、「女子校礼賛」(中公新書ラクレ)、「電車のおじさん」(小学館)、「新・人間関係のルール」(光文社新書)など。