食欲の秋ですね。いろいろなものが美味しい季節です。そこで、今回は「食」にまつわる漢字の中から、もしかしたら読めないかもしれない漢字を集めてみました。ただし、漢字そのものは普段目にする常用漢字のみです。では、紹介していきます。
1、「木耳」
最初は「木耳」です。中華料理の素材として多く使われます。さて、何と読みますか?
もちろん、「きみみ」とか「モクジ」ではありません。正解は、「きくらげ」でした。広辞苑によれば、「担子菌類のきのこ。山中の朽木、琴に広葉樹に群生。形は人の耳に似、濃い茶褐色で寒天質。白色のシロキクラゲもある。干して食用とし、特に中国料理で常用」とあります。その名の通り、食感はクラゲ(こちらは「水母」「海月」などと漢字表記します)に似ていますが、「耳」の字を使うのは、その形状が人間の「耳」から来ているのですね。
2、「滑子」
次は「滑子」です。筆者の嗜好からか、またまた「きのこ」の仲間です。さて、何と読みますか?
「カッシ」ではありませんが、「滑」の字の訓読みは「すべ・る」以外の「なめ・らか」の読みが常用漢字表にありますから、「きのこ」とのヒントがあれば、正解「なめこ」が読めた人も多いのではないのでしょうか。
広辞苑によれば、「担子菌類の食用きのこ。主に冬、朽木に叢生(ソウセイ)し、黄褐色。湿ると著しく粘る。食用として栽培もされ、缶詰などにもされる」とあります。ところで、「滑子」と言えば、独特のぬめりが美味しさに一役買っていますが、「滑」には表外読み(常用漢字表にない読み)として、「ぬめ・る」の読みがあります。「ぬめりのあるきのこ」、「滑子」の名は「ぬめらっこ」が変化したものとも言われています。
3、「心太」
最後は「心太」です。シーズンを過ぎましたが、夏の涼味の一つです。さて、何と読みますか?
「シンタ」ではありませんが、でも、「こころぶと」と読んだ人はちょっと惜しい。理由は後ほど説明します。正解は、「ところてん」でした。広辞苑によれば「テングサを洗ってさらし、似てかすを去った汁に型に流しこんで冷却・凝固させた食品。心太突きで突き出して細い糸状とし、芥子(からし)醤油・酢・黒蜜などをかけて食べる」とありますが、ここには「心太(こころぶと)をココロテイと読んだものの転か」とも注記されています。「心太(こころぶと)」とは、もともと原料の「テングサ」の異称、ここからさらに「ところてん」の異称にもなるようです。したがって、冒頭にも書いたように「心太(こころぶと)」という読み自体は正解とも言えますが、注文で「こころぶと」と言っても通じないかもしれません。
では、今回はこのへんで。
《参考文献》
・「読めそうでギリギリ読めない漢字」(河出書房新社)
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「新明解国語辞典 第七版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「新字源」(角川書店)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)