CLASSY.ONLINEでは、前回に続いて「日本漢字能力検定(漢字検定)2級」の2020年度に実際に出題された過去問から「四字熟語」を紹介します。
今回は、その出題された四字熟語の中から、一文字を●で抜いて提示します。ヒントとなる四字熟語の意味を添えますので、●に入る漢字を答えてください。
1、「白●青松」
最初は「白●青松」です。「海岸の美しい景色」を表わす四字熟語ですが、上の二字と下の二字が、それぞれ、その象徴とも言えるものです。さて、「青松」に対する「白い」ものと言えば……わかりましたか?
正解は「砂」、つまり「白砂青松」となります。ところで、この「白砂」を何と読みましたか?「砂」の音読みは、「呉音(日本に最も古く伝わった音)」の「シャ」と「漢音(唐の時代の都の音)」の「サ」と二通りあります。「土砂(ドシャ)」などでは「シャ」と読みますが、「砂漠(サバク)」や「砂丘(サキュウ)」のように多くの熟語では「サ」の読みです。では、「白砂」はと言うと、実はどちらも正解(許容)なのですが、多くの辞書では、「白砂」の見出し語としては「ハクシャ」のほうを示します(語釈の中で「ハクサ」とも)。したがって、「白砂青松」も「ハクシャセイショウ」と読んでおいたほうが良いと思います。
2、「山●水明」
次は「山●水明」です。前問に続いて「美しい景色」を表わす四字熟語ですが、こちらは「海岸」ではなく、「山と川」の景色です。難しいでしょうか。では、ヒントを。●の中には「色」を表わす漢字が入ります。さて、わかりましたか?
正解は「紫」、つまり「山紫水明」となり、「サンシスイメイ」と読みます。「昼間の日の光を受けて、川面がキラキラ輝く」のは日中だとして、「日の光に映えて山が紫色にかすむ」という情景は、夜明けでしょうか、それとも夕暮れでしょうか。どちらにも解釈できるような気がします。
実は、この四字熟語は中国の古典では見られない言葉で、江戸時代の儒学者である頼山陽(らいさんよう)が京都の自身の屋敷の建物に「山紫水明處(サンシスイメイショ)」と名付けたことに由来すると言われています。ということは、現在は日本のあちらこちらの自然豊かな山河の形容に使われるこの言葉も、本来は京都の鴨川や東山の美しい景色を表わす言葉だったのですね。
3、「●目秀麗」
最後は「●目秀麗」です。先ほどの2問が自然の風景の美しさを表現した四字熟語であったのに対して、こちらは「顔立ちが美しく整っている様子」を表わす言葉です。「目」はすでに入っているから、●に入る「顔」の構成要素はわかりますか?
正解は「眉」、つまり「眉目秀麗」です。これは読み方も難しいかもしれません。「ビモクシュウレイ」と読みます。
さて、「眉目」は「眉」「目」のそれぞれを表わすだけでなく、転じて「顔全体」つまり「顔だち」意味する言葉になりますが、普通は「男性」について使う言葉だということを知っていましたか? では美しい「女性」に使うのは「容姿端麗(ヨウシタンレイ)」がその代表です。ただし、今の時代、そうした境目はなくなっていくことでしょう。
ちなみに、漢字検定での四字熟語の「書き取り」となる部分は、主催者発表のデータによると、全設問の中でも最も正答率の低い「難問」とも言えます。四字熟語をさりげなく使うことができれば、表現の幅が広がります。難しいものは知らなくても、漢字検定2級程度の四字熟語は、使いこなせるようにしておきたいですね。
では、今回はこのへんで。
《参考文献》
・「漢検過去問題集2級」(日本漢字能力検定協会)
・「四字熟語成句辞典」(講談社)
・「新明解国語辞典 第七版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「新字源」(角川書店)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)