2回にわたりお届けしている、ムロツヨシさんのスペシャルインタビュー。前回は9月23日に公開される初主演映画『マイ・ダディ』やムロさんのパーソナリティーについて、そして今回では特別に読者からの相談におこたえいただきました!
【読者からの相談内容】「部下に話が通じません」
転職してきて部下になった男子はリモート勤務の影響もあるのか、報告・連絡・相談がまったくなく、上げてきた仕事が滅茶苦茶でいつもみんなで尻ぬぐいをしています。何度も注意しているのですが、まったく響かず同じミスの繰り返し。どうすればこちらの言っていることを理解してもらえるでしょうか…。(34歳・メーカー関連勤務)
部下は選べない。自分の価値観をゆるめる時期かもしれません。
根気よく何度でも言い続けるしかない。向き合うしかないと思います。自分が会社を興せば社員は選べると思いますが、どんな会社でも基本的に上司や同僚、部下は選べないんだから、結局、落としどころを見つけるしかないですね。僕がこの方の友人で近い距離にいる関係なら、厳しい言い方ですが「選べないんだからしょうがない。どんな部下とでもうまくやれよ」と言うと思います。「こんな部下じゃなければ」って思ってもしょうがないし、その部下を育てるしかないんだから何かやり方を見つけるしかない。今までと同じやり方じゃダメだろうから、嘘でも「これはあなたの責任だから」って言って、やりがいを持たせてみるとか。それでも伝わらなければ、また新しいやり方を探すしかないですね。報告・連絡・相談がまったくない方って、僕らの若い頃にもいたから世代の問題じゃないと思うんです。「何度注意してもまったく響かず」って言いますが、まったく響かないってことはない。10回言ってダメでも35回目に響くこともあると思うんで、言い続けるしかないですよね。「この人、ここまでしつこく言ってくるからやるしかねえな」ってなるまで言うしかない。部下を育てるのは根気がいると思います。でも自分も誰かに育ててもらったことを考えればね。こういう部下がめぐってきたのもこの方の引きですから、それは受け入れましょうよ、と。
うちの事務所も本当にくせ者揃いで(苦笑)、2、3年経っても「こいつ無理だな」って思う男もいましたけど3年目でわかることもありました。それまでは言語が違うのかと思うくらい、彼とは全然、話が通じないんですよ。4、5回喧嘩しましたが、喧嘩でなら出てくる言葉でわかることがあったんです。普段の話は通じないけど(苦笑)、僕の知らないところでやってくれてることもあったんだってわかって、良いところが見えてくる。向き合うしかないなあと思ったんです。彼とは3年かかりましたかね(笑)。その3年かけた信頼関係が今でも揺らぐ時ありますけど(笑)。ぶつかるしかないってことを彼から学びました。絶対に得意分野や良いところはあるのでね。
今は、自分の価値観をゆるめなきゃいけない時期でもあるとも思うんです。自分はこうやって教わったから、部下にもこう教えなきゃいけないっていうのも――。僕のような40代は、小学生の頃からネットで検索すれば答えが出てくるという世代とは、何かを考える順序や種類が違う。情報や知識を得ることに関する価値観が全然違うから、僕たちが先輩から教わった仕事のやり方がもう通じないんですよ。それは潔く諦めなきゃいけない。ある劇作家から教わったんですが、急に若い人たちに自分のルールを押し付けてもダメだけど、彼らのルールを教わろうとすると一気に良好な関係性が生まれるらしいんです。だから僕たちは損すればいい。損を受け入れると若いコたちから教わることが多い。悔しいと思うこともありますが、教わろうと思えばいい関係性も生まれるかもしれないですね。
ムロツヨシ
‘76年1月23日生まれ 神奈川県出身 血液型A型●‘99年、作・演出の舞台で活動を開始。ドラマ、映画、舞台とジャンルを問わず活躍中。’08年から始めた自身のプロデュース舞台『muro式.』では脚本・演出を手がけ、自らも出演している。最近の主な出演作は映画『最高の人生の見つけ方』『新解釈・三國志』、ドラマ『大恋愛〜僕を忘れる君と』『親バカ青春白書』『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』、舞台『恋のヴェネチア狂騒曲』など。映画『べイビー ファミリー・ミッション』が12月17日(金)公開。
『マイ・ダディ』
小さな教会の牧師・御堂一男(ムロツヨシ)は中学生の娘と二人暮らし。妻は8年前に他界した。決して裕福とはいえずとも穏やかで幸せな日々を過ごしていたが、ある日、娘が白血病で倒れる。突然の病に動揺する一男に追い打ちをかけるように、衝撃の事実が発覚する――。娘を救おうとひとり奔走する父を、本作が初主演映画となるムロツヨシが熱演。出演/ムロツヨシ 奈緒 毎熊克哉 中田乃愛 光石研 ほか。監督/金井純一 脚本/及川真実 金井純一●9月23日(木・祝)全国ロードショー
撮影/木村 敦 ヘアメーク/池田真希 スタイリング/森川 雅代(FACTORY1994) 取材・文/駿河良美 構成/中畑有理(CLASSY.編集室)