【小泉進次郎環境大臣インタビュー】ファッションとSDGsについて知ってほしいこと

今、世界では地球温暖化、海洋汚染、大気汚染など、環境問題が大きく取り上げられ、“SDGs”という言葉も浸透してきました。実はファッション業界も、環境負荷が非常に多い産業だという指摘が。最近ファッション業界では“サステナブル”“3R”など、環境問題解決のための様々な取り組みが行われています。2019年から環境大臣としてリーダーシップを発揮されている小泉進次郎氏に、環境問題やファッションとSDGsに関するご自身の取り組み、そして私たちにできることについて、じっくりお話を伺いました。CLASSY.ONLINEオリジナルインタビューを2回に分けてお届けします。

−−SDGsという言葉も普及し

−−SDGsという言葉も普及して環境問題への意識は私たちの中でも高まってきているように感じます。環境問題に取り組まれている中で大臣が特にこだわりたいのはどんな点でしょうか?

SDGsについて特にこだわりたい点は2つあります。1つは、『クリーンなエネルギー』を普及させること。もう1つは、『作る責任、使う責任』をそれぞれが持つことです。環境省がカバーする環境問題は海や森など多岐に渡りますが、今回はCLASSY.読者という、ふだん政治とあまり関わりのない皆さんに声を届けられる貴重な機会なので、まずは皆さんの関心が高いファッションに関係する環境問題についてお話したいと思います。
ファッションの裏側には、世界の中でも最大規模に匹敵する環境問題が潜んでいます。ファッション産業は世界第2位の環境汚染産業とも言われていて、日本特有の課題で言えば、衣料品を98%輸入しながらその約50%近くは売れ残っているというデータも以前はあります。つまり、大量のエネルギーや資源を無駄に消費浪費しているということで、これが“ファッションロス”です。SDGsとファッションは繋がっているということ。読者の皆さんには、まずそれを知ってもらいたいですね」

−−ファッションに関わる環境問題で力を入れたいことや、実際に取り組んでいることはありますか?

「ファッションとSDGsの関係で言うと、“このままではいけない”と問題意識を持つファッション関係企業がたくさん出てきています。繊維業者、商社、ファッションブランドといったファッション業界の皆さんが環境省に集まって、意見交換が始まりました。そして、その動きが結びついて、8月3日にファッション業界のアライアンスが発足しました。最近の出来事の中で読者の方に知ってもらいたいことの一つです。企業の声を聞いて、環境省としてできることをする。課題は多いけれど、可能性があると感じているのは、変わらなきゃと考えているファッション業界の人がすごく多いことです。実際に不要になった服の回収ボックスなどを設置するお店や、回収した服を新しい服にリサイクルする取組みも増えてきました。資源の循環型システムのひとつです。“ファッションロス”という言葉の認知度も上がってきました」

−−今までは国や企業などの方針
小泉さんご自身も愛用している廃棄漁網をアップサイクルしてつくられたバッグ。

−−今までは国や企業などの方針があって、それに消費者が従う形が多かったように思いますが、私たち一人一人が自分で考えて行動できること、気軽に実践できることはありますか?

どんな小さなことでもいいから、このインタビューを読んだら、一つ“行動”を起こしてもらいたいです。例えばマイボトルの利用によって、ペットボトルやプラスチックの使用量の削減に繋がります。エコバッグだって同じですよね。“自分にできることを何か一つ行動する”、ということを意識してもらえたらと思います。あとは、『トゥルーコスト』というファッション業界の環境問題や人権問題についてのドキュメンタリー映画があるんですけど、そういうものを観ていただくのもわかりやすく、個人の行動が変わるきっかけになるかもしれませんね。まずは“何か一つ”始めてみてください」

−−大臣ご自身が日頃、実践しているのはどんな取り組みですか?

「ファッションアイテムで言うと、今まではゴミになっていた漁網をバッグに変えた、アップサイクルといわれる方法で作られたバッグを使っています。スニーカーはオールバーズというブランドを愛用しています。このブランドは、製造過程でどれだけCO2を排出したか表示、開示するという取り組みに加えて、再生材を活用しています。その他にも水平リサイクル(※編集部注)で作られた、BRINGというブランドのTシャツなども愛用しています。そういった取り組みを積極的に行っている企業やブランドは自分が使うことで協力、応援したいですね。あとは“本当にこれは必要なのか?”と考えて、今まで以上に慎重に買い物するようになりました
※水平リサイクル=使用済みの製品が一度資源となり、また同じ製品として生まれ変わるリサイクル。ここでは、服から服へのリサイクルのこと。

−−ファッションとSDGsの面

−−ファッションとSDGsの面で、読者に特に訴えたいことはなんでしょうか?

一緒にファッションロスをなくしていきましょう。ファッション業界では、エネルギーや食以上に海外依存度が極めて高いにも関わらず、売れ残ったり、数回の着用後に手放されてしまう服が毎年、大量廃棄されていると言われています。この状態は“サスティナビリティ(持続可能性)”からかけ離れていますよね。でもあまりに話が大きくて“何からできるの?“と、自分ごととしてとらえにくい。そこはまさに政治が考えるところで、今年の国会で使い捨てプラスチックを減らすための新しい法律を作りました。
ファッション業界全体でも大量のプラスチックが使われています。これからは環境に配慮して作られたものには特保マークのように国がマークをつけて、消費者の皆さんに環境負荷の低い商品を選んでもらいやすくするという内容も含まれている法律です。あとは繰り返しになりますが、やはり一人一人の行動が大切になります。服などが作られる過程で、その裏側では環境が破壊されていたり、劣悪な労働環境で働く人が健康を犠牲にしながら私たちが毎日着る服を作っていることを知ったら、ファッションに対する向き合い方が変わる。せっかく楽しいはずのファッションも買い物も今までのように楽しめなくなる。
ファッションや買い物をこれからも楽しめるようにすることと、SDGs、持続可能な社会を作ることはすべて繋がっています。ファッションロスという問題についてCLASSY.が環境大臣の私をインタビューしてくれること自体、ファッションと環境問題が繋がっている分かりやすい一例ですね」

小泉進次郎

環境大臣 気候変動担当、内閣府特命担当大臣(原子力防災)、衆議院議員 (4期)。1981年神奈川県横須賀市生まれ。関東学院大学経済学部卒業後、2006年米国コロンビア大学院政治学部修士号取得。米国戦略国際問題研究所 (CSIS)研究員を経て、衆議院議員小泉純一郎氏秘書を務めた後、2009年8月衆議院議員初当選し現在4期目。2019年9月、環境大臣 兼 内閣府特命担当大臣(原子力防災)に就任。翌年、環境大臣 兼 内閣府特命担当大臣(原子力防災)に再任。2021年3月より気候変動担当大臣を兼務。

環境省が制作した「サステナブルファッション」についてのサイトもぜひチェックしてみてください。

撮影/平井敬治 取材/中津悠希 構成/中畑有理(CLASSY.編集部)

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表紙モデル:山本美月

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