9月3日より上演される舞台『友達』に出演する林遣都さんは、CLASSY.読者と同世代の30歳。インタビュー後編では20代を振り返っていただきながら、30代になって変わったことや30代をどのように過ごしたいかなど、これからのこともじっくり伺いました。
――‘07年、10代で俳優デビューした林さん。振り返ると、どんな20代でしたか?
「まったくもって満足はしてなくて、できることであればいつでも10代からやり直したいです。あのときこうしておけばよかったと思うことばかりで(苦笑)。そんななかでも自分でも思いもよらなかった生活というか、この仕事に出会い東京に出てきたことを自分の運命として振り返ったとき、辛いこともいいこともいろんな経験ができて幸せだったなとも思います。当時は“自分の理想とするところに居ない自分”に悩むことが多かったけれど、自分らしく、それなりに刺激的な10代20代を過ごせたかなと自負もしているので、悔いはないです。ただ反省することはいっぱいあるので、これからの30代で10代20代に足りてなかった部分をしっかり補っていきつつ、日々成長して行けたらと感じています」
――30代になって、自分が変わったなと思うことはありましたか?
「穏やかになったかな。30歳になった頃から人の影響で心境や考え方が変わったり、偶然なのかもしれないけど新しい出会いがあったり、結構めまぐるしくもあり。ただ、そういう時期なのかなとも感じますし、コロナ禍もあるかもしれないです。生活がかなり変わったので。以前もめまぐるしく日々を過ごしていたんですけど、外出が減ったり人と会う機会が減ったりしたなかでも違う生活があって、視野も広がった気がします」
――お仕事に関する考え方で変わってきたことはありましたか?
「30歳になった頃からいろいろ考えることが日々ありました。外出がとにかく減ったので映画館や劇場に行く回数もおのずと減りましたが、久々に足を運ぶと『やっぱり特別な空間なんだな』と深く感じられてーー。今年1~2月に出演した舞台『フェードル』では、どうしても見たいけどあきらめざるを得ないという方もたくさんいらっしゃったと思いますし、そんな中でリスクを負ってでもエンタテインメントに何かを求めて観にきてくださった方もいて。近い距離でそのお客さんの思いを感じることができて、自分がその舞台に立てていることに誇りや幸せを感じました。
10代20代はどこか『評価されたい、いい作品に出たい』という思いでずっとやってきて、もちろん今もこの先もその思いはずっとありますが、自分の躍進とは別に、誰か一人でも喜んでくれて、一人でも生活にいい影響を与えられるとしたらこんなに幸せなことはないなと感じるようになりました。ちょっときれいごとになっちゃうのかもしれませんが、これからはそういうことにも目を向けて、見てくれる人に元気を与えられるような作品に出ていきたいなと思いました」
――今思う、目標や課題はありますか?
「SNSなどで自分を応援してくださってる人の言葉や声がより届く時代になってきましたが、本当にそれに救われ続けてきています。それがあるから続けられていると思います。出演した作品について『コロナ禍という状況で、生きる活力になった』と言っていただくこともありました。喜んでくださる人がひとりでもいれば幸せですし、将来的にはもっともっと多くの人に喜んでもらえるようになりたいと素直に思います。
特に舞台に関しては、『フェードル』で共演した(大竹)しのぶさん、(キムラ)緑子さんのように舞台に立てるようになりたい。カーテンコールで袖から役者たちがでていったとき、お客さんたちが物語とはいったん離れて、そことは違った感動で拍手をくれたり、泣いてる方もいらしゃったり。しのぶさんと並んで立っているとき、自分が志そうとしているもの、自分が就いている仕事は人にそういう喜びを与えられる可能性をたくさん秘めた職業なんだなと強く感じて。そういう存在になっていきたい、向上あるのみだと思いました」
――30代にやっておきたいことはありますか?
「10代の頃、スポーツが題材の作品にたくさん出させていただいて、専門の方々との出会いがありました。今、そういう出会いをすごく大事にしています。この仕事はいろんな職業の役を演じるので、普段は出会えないような人に会えるのもラッキーなところです。スポーツは10代でやり過ぎてやめてしまいましたが、これから年齢を重ねていくうえで体は資本ですし、もう一回体作りをしなければと思ってます。それこそ舞台や映像で活躍し続けている役者さんたちは、体も心も体幹が違うというか。自分がこの先輩の年齢になったとき、こんな元気でいられるかなとめちゃくちゃ思うので(苦笑)、健康第一で過ごしていかなければと思います。でも生活力は向上しました。ホントにだらしなかったんですけど(苦笑)。今は走ったり、たまには筋トレもしたり。作品という目標があればもっと気合が入るんですけど、いつでも対応できるようにはしておきたいと思います」
――今後はどんな30代にしたいと思っていますか?
「求められる人でありたいです。今もいつまでも、役者として人や世間に求められる人でありたい。また、30代だけでなくその先も『年とらないね』と言われたいです。10代20代は容姿とかどうでもよかったんですけど。苦手分野ではあるのですが、この仕事をやっていくうえで大事なことなのかなと。今は、昭和の役者さんのように破天荒だからいいという時代ではないですし、誠実さを求められる仕事でもあるなと感じていてーー。顔も私生活の過ごし方で変わってくると思うので、自分で言うのも変ですけど、役以外のところでは男らしく精悍な顔つきで居たいと思います」
PROFILE
‘90年12月6日生まれ 滋賀県出身 血液型O型●‘07年、映画『バッテリー』の主演で俳優デビュー。同作品で第31回日本アカデミー賞新人俳優賞、第81回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞など多くの新人賞を受賞。最近の主な出演作は、ドラマ「世界は3で出来ている」「姉ちゃんの恋人」「ドラゴン桜」、映画『私をくいとめて』、舞台『熱帯樹』『風博士』『フェードル』など。主演映画『犬部!』が現在公開中。公開待機作に映画『護られなかった者たちへ』、『恋する寄生虫』がある。
舞台『友達』
小説、戯曲、映像作品と幅広い分野で活躍した安部公房の戯曲『友達』を、気鋭の若手演劇人・加藤拓也が大胆に切り込む。ある夜、ひとりの男の日常に忍び寄る、見知らぬ“9人家族”の足音。彼ら家族はあっという間に男の部屋を占拠してしまう……。特異で不思議な人間関係を、ベテランから勢いある若手まで多彩なキャスト陣が演じる。
作/安部公房
演出・上演台本/加藤拓也
出演/鈴木浩介 浅野和之 山崎一 キムラ緑子 林遣都 岩男海史 大窪人衛 富山えり子 有村架純 伊原六花 西尾まり 内藤裕志 長友郁真 手塚祐介 鷲尾真知子
企画・製作/シス・カンパニー
[東京]2021年9月3日(金)~26日(日)新国立劇場 小劇場
[大阪]2021年10月2日(土)~10日(日)サンケイホールブリーゼ
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衣装:
ブラウンジャケット¥89,100、ブラウンパンツ¥42,900(ともにアンバー/スタジオ ファブワーク tel.03-6438-9575)サックスブルーストライプシャツ¥39,600(ヨーク/エンケル tel.03-6812-9897)
撮影/イマキイレカオリ ヘアメーク/竹井 温(&’s management) スタイリング/菊池陽之介 取材・文/駿河良美 編集/宮島彰子(CLASSY.ONLINE編集室)