テレビドラマ「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」での俳優業にも注目が集まる、バンド[Alexandros]川上洋平さん。短期連載ラストとなる今回は“仕事”がキーワード。バンドのコンポーザーとしてチームを牽引する川上さんならではの仕事観が明らかに。
PROFILE
川上洋平(かわかみようへい)●昨年デビュー10周年を迎えたロックバンド[Alexandros]のギターボーカル、コンポーザー。シリア育ちで英語と日本語を使いこなすバイリンガル。攻撃的なロックナンバーから耳に残る甘いメロディまで自在に生み出す類稀なメロディメーカー。俳優業や映画のコラム連載など、音楽に留まらない多彩な活動にも注目が集まる。
どんな時もまずは動く。スタートは“対話”から
-楽曲の制作過程ではバンド内での共鳴を大切にしているとおっしゃっていました。リーダーとして心がけていることはありますか?
よく明確なビジョンがないとリーダー失格だという意見もありますが、俺は決まっていないことでもメンバーに投げかけていますね。作品を作り上げるためには、とにかくメンバーとの会話が大切だと思っていて「Aメロはできてるけど、Bメロはできてなくてさ」とか「なんとなく、こういう曲を作りたいんだけど」というラフな感じで始まることも多いです。「なんか叩いてみてよ」みたいなカジュアルなコミュニケーションから、全然作るはずじゃなかったものができたりもするんです。それはそれで面白いと思いますね。
でも、どんな時もスタートは対話というか「なんかこういうことしたくない?」という発案から。だから、“スターター”であることが、俺がやらなきゃならないことかなと思いますね。みんなに声かけをする役割。そこに明確なプランや道筋が必ずしもなくてもよくて、「100%のうちの0.1%しか出来てないんだけど、とりあえずスタジオに入ろう」とメンバーを誘って、そこからアイディアを吸収して5になって、10になって、と膨らませていったほうがうまくいくことが多いです。
物事のスターターであろうとする意識は、リーダーという立場でなくても大切だと思います。やっぱり物事って共鳴だと思うから。たとえば撮影の時でも、右向いたり左向いたりとカメラの前で動くから、フォトグラファーから反応が返ってくる。それが失敗だったとしても「もう少し右向いてみようか」とか、意見が生まれやすいじゃないですか。だからまずは自分が動くこと。そして会話することだと思いますね。会社で仕事をする場合には関わる人がもっともっと多いから、そういう意識がより大切なんじゃないかな。
意見の食い違いは“面白さ”のきっかけになる
-自分の思いを相手にぶつけるには緊張もありますが、心がけていることはありますか?
正直言って、いくらこちらの思いを投げかけても反応がない人もいますよね。こちらとしてはキャッチボールをしたくて思いをぶつけているので、どんなふうに投げたらいいのかなって考えたりはします。でも、やっぱり球を投げるからには投げ返してほしいから、返してくれる人に投げがちになるのは人間として仕方ないところ。なので、誰かが何かをしてくれるのを待つんじゃなくて、まずは自ら動くこと。誰かに意見をぶつけられたとしたら、それにしっかり反応していくのが重要だなって思います。
-お互いの信頼関係があった上での意見のぶつけ合い、ということですか?
意見を投げかける上で、信頼関係はなくてもいいかなと思います。信頼している・していないにかかわらず、意見を求めたい人にはどんどん意見を投げかけます。こちらの意見に対して期待していることと違ったものが返ってきたとして、最初は「違うな何言ってるんだよ」と思うこともあるけれど、次の日には自分の考えが変わっていることもあるし。相手が何も考えていないのは分かった上で、考えてもらうためにあえて思いを投げかけることもありますね。共鳴したい、対話したいっていう思いがあるからですかね。
なりたい未来は“くっきり・はっきり”思い描くべき
-自分がやりたいことがなかなか叶わない時には、どう対処しますか?
精神論っぽくなっちゃいますけど、想像しておくことって大事ですよね。妄想に近いかもしれないけれど、どんなふうになりたいかをしっかり思い描いておく。そうすると自ずと細かい言動もそっちへ導いてくれるようなものになっていく。言霊ってあると思っていて、考えを言語化することで周りの人たちも「洋平はこういうことがしたいんだな」「こういう風になりたいんだな」と感じ取ってくれて、自分の思いに働きかけてくれたりもするんですよね。それに自分自身も、口に出したからには行動しないと!と思えるし。
なので、思い描く未来の絵をくっきり描けるように、集中して頭の中に具体的な目標を映し出すということが大切だと思います。まあでも、ぼんやりしたまま進む楽しさもありますけどね(笑)。
-[Alexandros]としては、どんな未来を描いていますか?
この10年ぐらいは「何かしなきゃしなきゃ」と追いかけられている気持ちがあって、それはそれでありがたいし素敵だったんですけど、もう少し“本当に自分たちがやりたいことって何だろう”ということに向き合いたいです。やらなきゃならないことではなくて、やりたいことをもっと突き詰めていきたい。コロナ禍も影響しているんですけど、時間的な余裕ができたときに何にも囚われないで出す声や音って、本当に自分に宿っているものだったんです。それを表現していく大切さを悟ったし、それこそが我々アーティストが世に出すべきものなんじゃないかなと思いました。
AメロがあってBメロがあってとか、明るめの曲だとか、疾走感のあるサウンドでとか、そういう括りは気にせずに、自分たちがそのときに思ったもの、やりたものをやっていきたい。画用紙を渡されて描くのではなくて、画用紙の無い場所にも描いてみよう、という気持ちです。俳優業からも刺激をたくさんもらいましたが、ソロでやっていこうとかそういう気持ちは全くなくて。[Alexandros]=俺だから、個人の野望はないですね。自分の人生よりも[Alexandros]が大事です。それ以外に何もないです。
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全5回にわたってお届けした[Alexandros]川上洋平さんのスペシャルインタビュー。アーティストとして楽曲制作にかける思いから、プライベートでの恋愛観まで赤裸々に語っていただきました。このインタビュー収録の翌日からは、新たな作品の制作期間に入ると教えてくれた川上さん。次回のリリースが楽しみです!
新曲『閃光』、5月5日(水・祝)より好評発売中!
5月21日公開予定の映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の主題歌。ドラムのリアド偉武加入後初の作品となり、メンバー4人のみの音で構成されたロックナンバー。
初回限定盤 (CD+DVD)¥3,080、初回限定盤 (CD+Blu-ray)¥3,520、通常盤(CD)¥1,100
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『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』
5月21日(金)全国公開予定
http://gundam-hathaway.net/
フォトギャラリー(全画像を見る4枚)
撮影/マチェイ・クーチャ 取材・文/川端宏実 構成/宮島彰子(CLASSY.ONLINE編集室)