数多くの映画や舞台で活躍し、日本映画界には欠かせない存在となりつつある役者・村上虹郎さん。多摩川沿いで日々を過ごす人々の2020年コロナ禍の春を描いたHuluオリジナルドラマ『息をひそめて』では、学歴や育ちにコンプレックスを抱え、癒えない失恋の傷と向き合う青年・宮下心平を熱演。ドラマの配信開始を記念して、撮影のウラ話やニューノーマルな日常での価値観の変化について、お話を伺いました。
失恋したら落ちるところまで落ち込む派
『息をひそめて』で村上さんが演じるのは、ゴミ収集業に従事する24歳の青年・宮下心平。約3年間交際した大学生の琴波(演・横田真悠さん)にフラれ、ゆきずりの恋愛で自分を満たそうとする心平…。村上さん自身は、失恋をどう乗り越えてきたのだろうか。
「変に強がっても仕方がないので、失恋したらとことん落ちるようにしています。自分にとって“素敵だ”と思える人に出会えることってなかなかないと思うので、その恋が壊れてしまったことをちゃんと引き摺って、落ちるところまで落ち込みます。それをいろいろ言ってくる人がいるかもしれないけど、人に何と言われようと、恥ずかしいと思わないです」
作中では、安達祐実さん演じる琴子とマッチングアプリで出会い、その場限りの関係に発展。いわゆるゆきずりの恋愛をどう捉えているのか聞いてみたところ、意外な答えが。
「恋愛のスタイルは色々あっていいと思っているので、心平と琴子のような関係もアリだと思っています。元々、太宰 治や吉行淳之介、中村文則が好きで、作品を通じて色んな恋愛の形に触れてきたことも影響しているのかも。僕にとってこの3名の作品は、“ゆきずり3部作”です(笑)」
役と同じく“コンプレックス”持ってます
本作で監督を務める中川龍太郎さんとは元々親交があった村上さん。お互いへの信頼関係が、心平というキャラクターにも影響しているという。
「中川監督と仕事をするのは初めてでしたが、舞台もよく観にきてくれたり、一時期めちゃくちゃ仲が良くて。最近はお互い忙しくてしばらく会えてなかったけれど、監督は僕のことをよくわかっている。だから、台本で心平のキャラクターを目の当たりにして『なんて皮肉な(笑)』と思いました。心平は、僕の内面を理解している上で生まれているキャラクターなんですよね」
家庭環境が悪く、傷害事件で高校を中退した心平。村上さん自身も、カナダで高校生活を1年送った後、俳優活動に精力を注ぐため、自主退学した過去がある。
「僕自身もいわゆる学歴という面ではドロップアウトしているので、“学術コンプレックス”があるんです。監督が撮影前に心平の詳細を書いた紙を僕にくれたのですが、それを読んで思わず笑ってしまって。わかりやすい勉学とか、5教科とか、そういうものにコンプレックスがある僕のキャラクターが、色濃く反映されていたんです。だから僕は心平と遠くないというか。そういう面では演じやすさもありました」
恋愛がテーマの作品には不慣れ!?
百戦錬磨の演技派俳優かと思いきや、失恋、そしてマッチングアプリでの出会いを求める役柄を演じるにあたっては気がかりもあったそう。
「いわゆる王道といわれる恋愛作品って、出演することも観ることも、あまりなかったんですよね。最近、恋愛系で観たのは『ラ・ラ・ランド』とか『シェイプ・オブ・ウォーター』くらい。なので、この作品に入る前に『きみに読む物語』や「ビフォア」シリーズを観て予習しました。この作品、実は全体の撮影スケジュールが3日で、恋人役を演じた横田さんとの撮影はたった1日。横田さんと僕の役は長年付き合ってきた2人だったので、監督が2人が積み上げてみたものをすり合わせられるよう打ち合わせの時間を設けてくれました。撮影前にもらったメモ書きもあり、短い撮影期間ではありましたが、監督の作品への思いの強さも受け取った上で演じることができたかなと思っています」
Huluで独占配信中の『息をひそめて』の魅力について、存分に語ってくれた村上さん。5月4日(火)公開予定のインタビュー後編では、コロナ禍での1年で変わったことや、今だから言える撮影エピソードなどをお届け予定です!
Huluオリジナル『息をひそめて』
2020年コロナ禍となった多摩川沿いの街を舞台にした、8話のオムニバスストーリー。私たちの日常で起こりうるリアルな物語を演じるのは、夏帆さん、村上虹郎さん、安達祐実さん、斎藤工さんら、実力派俳優陣。村上さんは第3話「君が去って、世界は様変わりした」に出演。4月23日より、Huluにて一挙独占配信中。
https://www.hulu.jp/static/ikiwohisomete/
ABOUT 村上虹郎
1997年3月17日生まれ。東京都出身。2014年公開の『2つ目の窓』で映画初出演&主演を果たし、デビュー。同作にて、第29回高崎映画祭・最優秀新人男優賞を受賞。以来、数多くの映画やドラマ、CMなどに出演。待機作に『るろうに剣心 最終章 The Beginning』(2021年6月公開予定)、『孤狼の血 LEVEL2』(2021年8月公開予定)、舞台『大パルコ人④マジロックオペラ「愛が世界を救います(ただし屁が出ます)」』、NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』などがある。
撮影/佐々木大輔(SIGNO) ヘアメーク/橋本孝裕(SHIMA) スタイリスト/オオシマリク 取材・文/坂本結香 編集/宮島彰子(CLASSY.ONLINE編集室)