新年度もスタートし、これまで縁のなかった地名を目にする機会も増えると思います。そこで「日本難読市名に挑戦」というテーマで、地元の人なら難なく読めても、そうでない人にはちょっと読めない市名を、各都道府県から一つずつ選んで出題しています。ここまで5回にわたって特集してきました。今回は「四国」編です。
1.「小松島市」(徳島県)
徳島県からは、「小松島」です。地名や人名などの固有名詞では、この「島」のほか、「山」「川」などが後ろに付いた場合、「濁るか、濁らないか」を悩む時がありませんか。ここは「こまつ・しま」か「こまつ・じま」のどちらでしょうか?
正解は「こまつしま」でした。地名の由来は、平安時代、この地に京都の「仁和(にんな)寺」の荘園があり、仁和寺は京都の「小松郷」というところにあった関係で、この名が生まれたと考えられているそうです。
小松島市は、県庁所在地である徳島市の南に隣接し、紀伊水道に面した港湾都市です。
2.「観音寺市」(香川県)
香川県からは「観音寺」です。「観世音菩薩(カンゼオンボサツ)」の省略形である「観音」は、人々の苦しみを取り除いてくださる仏様ですが、普通は「カン・ノン」と読みますよね。これは、「カン・オン」の「連声(レンジョウ)=発音変化の一つ。因縁(インネン)などと同じ変化」ですが、そうすると、「カンノンジ」と読んでしまいませんか。
実は、正解は「カンオンジ」でした。この市名は、この地にある、空海ゆかりの「観音寺」に由来しているわけですが、この寺名の読みは「カンノンジ」なんです(お寺のHPで確認)。しかし、観音寺市の公式HPでは「カンオンジ」。うーん、謎です…「カンノンジ」のほうが読みやすい感じもしますが、地元の方はどう読んでいるのか興味があります。
3.「新居浜市」(愛媛県)
さて愛媛県です。冒頭の「書けないかもしれない県名」にも入れましたが、「愛媛」は「愛」も「媛」も常用漢字に入っているとは言え、「え・ひめ」の読みは示されていません。これかなり特殊な読みです。その愛媛県からは「新居浜」です。何と読みますか?まず「新」は常用漢字表にも訓読み「にい」の記載があります。地名でも「新潟」などで「にい」と読みますね。そうすると「にい・い・はま」になってしまいますが……。
正解は「にいはま」です。この地の古名が「新居(新しい居所)」という表記になったとすれば、それがつまったのでしょうか。新居浜市は、愛媛県の北東部に位置し、かつて繫栄した別子銅山によって発達しました。
4.「宿毛市」(高知県)
高知県からは「宿毛」です。「しゅくもう」「やどげ」などと読めそうですが…。
正解は「すくも」でした。かつてこの地は、満潮時になると海水が押し寄せる大湿原でしたが、古代の人々は枯れた葦(あし)のことを「すくも」と呼んだそうです。これに「宿毛」の字があてられたわけです(「宿」には「シュク」以外に「スク」という音があります)。
宿毛市は、高知県の南西部に位置し、宿毛湾に面していることから、魚類の養殖なども盛んなところです。
今回は4県と少ないこともあり、ちょっと寄り道をします。47都道府県名に使用されている漢字は、すべて現在の常用漢字表2,136字の中にあります(平成22年までは含まれない漢字が11字ありました)。しかし、常用漢字にあるというだけで、都道県名としての読み方(音や訓)が常用漢字表に示されていない漢字も、実は多く含まれているのが不思議なところです(たとえば、大阪府の「阪」は「ハン」の記載だけで「さか」の読みはない)。まあ、それにしても「読む」という点に関しては、多くの皆さんは問題ないと思われますが、「読めても書けない」ということはよくありますね。
そこで問題です。私が選ぶ「書けないかもしれない県名」です。
にいがた県・しが県・えひめ県・ぎふ県・とちぎ県
正解は、「新潟県・滋賀県・愛媛県・岐阜県・栃木県」でした。
「四国」編、いかがでしたでしょうか? 各問の解説文作成にあたり、今回も該当各市のHPも閲覧させていただきました。次回はいよいよ最終回「九州」編をやります。
《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「難読漢字の奥義書」(草思社)
・「旅に出たくなる地図 日本」(帝国書院)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)