新年度もスタートし、これまで縁のなかった地名を目にする機会も増えると思います。そこで「日本難読市名に挑戦」というテーマで、地元の人なら難なく読めても、そうでない人にはちょっと読めない市名を、各都道府県から一つずつ選んで出題しています。今回は「中国地方」編です。
1.「米子市」(鳥取県)
鳥取県は、47都道府県のうち、市の数が最少で4市(最多は埼玉県の40)。四択なので悩みましたが、「米子」を選びました。「米」も「子」も常用漢字。特に「米」は「ベイ、マイ・こめ」の読みが示されていますが、市名「米子」は何と読みますか?
正解は「よなご」です。「米」を「よね」と読むのは、「米=稲(いな)→よな」の発音変化。さらに「よね」と変化すると、「山形県米沢(よねざわ)市」の読みになるわけです。米子市は、鳥取県の西部に位置し、島根県の県庁所在地である松江市とも接する山陰の中心都市です。
2.「大田市」(島根県)
かつて「島根は鳥取の左側です」というお役所の名コピーがありました。これで位置関係がよくわかりますね。その島根県からは「大田」です。東京23区なら「おおた区」ですが…。
正解は「おおだ」でした。この地の古くからの郡名の読み方に由来するようです。大田市は、島根県の東西の中央部に位置し、日本海に面していますが、歴史的には世界遺産「石見(いわみ)銀山」の影響を古くから受けてきました。
3.「美作市」(岡山県)
岡山県からは「美作」です。「ビサク」とかの読み間違いが多いと思いますが、高校時代の日本史の授業などで、日本の旧国名を学習した記憶はありませんか?
正解は「みまさか」でした。岡山県は、かつての「備中・備前・美作」と三つの国に分かれていました。現在の美作市は、もちろん「旧美作国」の一部ですが、その由来には諸説があるようです。美作市は、岡山県の北東部に位置し、東は兵庫県、北は鳥取県に接します。
4.「廿日市市」(広島県)
広島県からは「廿日市」です。「あまくちし」と読んだ人がいるという笑い話のような話を聞いたことがあります。漢字をよく見てください。横棒があったりなかったりで、「甘口」ではありません。特に「廿」は常用漢字外ですので、これをなんと読むかです。
正解は「はつかいち」でした。もう一つの注意点は「市」。「市町村」の「市」ではなく、「市(いち)」です。「廿」は「十」の字を横に並べて「ジュウ」と音読みし、「二十(にじゅう)」の意味を表わします。この地では、中世のころから毎月二十日(はつか)に市場が開かれていました。日本各地には、こうした「市場」由来の地名がいくつも残っており、「三重県四日市(よっかいち)市」などの例があげられます。廿日市市は、広島県の西部に位置し、広島市に隣接していますが、世界遺産「厳島神社」で知られます。
5.「美祢市」(山口県)
山口県からは「美祢」です。「美しい呼び方」という意味の「美称(ビショウ)」という言葉があります。これとよく似ていますが、「称」と「祢」は別の字です。さて、何と読みますか?
正解は「みね」でした。常用漢字外の「祢」は、これも常用漢字外の「禰」(某人気アニメのキャラクターでおなじみ)の「異体字(俗字)」ですが、実はこの「祢(禰)」は、ひらがなの「ね」の元になった漢字です(カタカナの「ネ」はこの字の「へん(左側)」から)。意味的には「みたまや(貴人が祖先の霊をまつっておく建物)」を表わします。地名の由来は、周囲に山が多いことから、「峰(みね)」との関係などが指摘されるようです。美祢市は、山口県ほぼ中央部に位置し、日本最大級のカルスト台地「秋吉台」で知られます。
「中国地方」編、いかがでしたでしょうか? 各問の解説文作成にあたり、今回も該当各市のHPも閲覧させていただきました。次回は「四国」編を配信予定です。
《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「難読漢字の奥義書」(草思社)
・「旅に出たくなる地図 日本」(帝国書院)
文/田舎教師 構成/CLASSY.ONLINE編集室