相変わらずコロナに翻弄され続けている世界中に3月初旬、配信された「沈没する船から猫を救助した勇敢なタイ海兵隊員」のニュース。コロナと花粉症のWパンチで気が滅入りがちなここ日本でも話題になったグッドニュースでした。辛酸さんが今回注目したのは、心優しい行い自体がカッコいい「レスキュー・イケメン」です。
世界は優しさであふれているのかもしれません。この世も捨てたものではない、と思えるような博愛的なニュースが時々報じられます。今回ピックアップしたのは、動物や人間の命を救った勇敢なイケメンたち。もうその行いだけでも3000%くらいかっこよく見えます。まずは最近、心を打ったニュースから……。
心優しい、世界のレスキュー・イケメン3人
猫を救出したタイの海兵隊員
全世界が泣いた……タイ海軍の海兵隊員が沈みゆく船から猫たちを助け出したニュースが地球をかけめぐりました。3月2日、タイ・サトゥーン州のアダン島沖で航行中のトロール船が炎上しているという通報で駆けつけたタイ海軍。彼らが乗組員を救助し、再度、船から油が漏れていないかを確認しにいくと、船の上部構造に乗って不安げにこちらを見つめる4匹の猫たちが! なんとしても猫を救わなければということで、果敢にも水に飛び込んだ海兵隊員。泳いで船に行き、猫を肩に乗せ、袋に入れて泳いで戻って無事に救出。それからしばらくして船は沈んでしまったそうです。この、猫を肩に乗せて救助する写真を見ると猫のかわいさ、海兵隊員のかっこよさ、そして感動のハーモニーが押し寄せてきます。日焼けしたイケメンの真剣な表情とマッチョで頼りがいのあるボディが目を引きます。今年のピュリッツァー賞はこれで決定でいいのでは? と思えてきます。
その後、猫を助けた海兵隊員が船内で猫たちに囲まれている動画が公開されました。猫たちはすっかり海兵隊員に懐いて、そばから離れようとしません。精悍な海兵隊員が猫を優しく撫でるギャップ感にまた心をつかまれました。
アライグマをを救出したロシアの獣医
ロシアの動物病院に勤める獣医のアレクセイさんは、ある時弱ってふらふら歩いていた野良アライグマを見つけて保護。栄養失調で弱っていたアライグマは、アレクセイさんの適切なケアによって生命力を回復しました。そしてヤシャと名付けられ、家族の一員として迎えられました。獣医のアレクセイさんは見た目は若干コワモテですが、アライグマと一緒の写真を見ると瞳に優しさが漂っています。
アライグマのヤシャはそんなアレクセイさんに恩返しをしたくなったのか、病院でスタッフとして働き始めました。患者の犬や猫のケアをして、彼らの不安を軽減させたり、癒してくれています。動画を見ると、病院の患者である犬や猫に乗っかったり噛んだり、じゃれついているようでしたが……。ペットたちを不安から気をそらすことに成功しているのはまちがいありません。
動物病院のインスタによると、アレクセイさんは動物たちを治療する時には「小さい兄弟のように扱う」そうです。また、ペットたちは言葉では説明できないけれど、人間と同様に頭痛や歯痛、関節痛などに悩んでいるので、時には暴れたりするけれど、彼らの気持ちを理解してケアしてあげることが大切なようです。
2018年に保護されたアライグマのヤシャは、2020年末にはクリスマスツリーと一緒に幸せそうに写真に写っていました。健在で良かったです。かなりかわいいですが、アレクセイさんによると野性のアライグマなので飼育は大変だそうで(食べ物を盗んだり)、やはりプロだからこそ一緒に暮らせるのでしょう。もし日本にこんな獣医さんがいたら……と願わずにはいられない素敵な獣医さんです。
タイの洞窟で遭難した少年たちを救ったダイバー
2018年、世界が固唾を飲んで祈るように見守っていたのが、タイ洞窟の遭難事故。タイ北部チェンライ県で洪水が発生し、地元のサッカーチームの少年たち13人が17日間もタムルアン洞窟に閉じ込められてしまったのです。水位が上昇し酸素が減っていく中、世界中から集まったダイバーたちが命をかけて全員を救出した、というできごとはその後映画化もされました。
事件発生後しばらくして、世界中の洞窟ダイバーに救いを求める電話が。ITコンサルタントや元消防士、麻酔医などの様々な肩書きを持つ彼らは、少年たちを助けるためにタイに向かいました。ところどころ天井まで冠水している真っ暗闇の洞窟の中で、奇跡的に少年たちが生存しているのを発見。食料や衣料品を届けて、救助の準備を整えます。途中、タイの元特殊部隊員の男性が空気タンクを運ぶ途中で亡くなってしまうという痛ましい出来事も……。英国チームは、少年たちに鎮静剤を打って眠らせた状態で抱え、狭い洞窟内を泳ぐ方法を考案。洞窟でヴィパッサナー瞑想をしていたりした少年たちは落ち着いてその救助法を受け入れ、洞窟ダイバーたちによって無事に全員救出されました。現場には少年たちの命を救うため7000人ものボランティアが集まり、救助隊に食事を作ったり水を汲み出したりしていたそうで、タイ人の博愛精神にも感動させられます。
救助活動が成功裏に終わり、祖国で表彰されたりしても、英雄扱いを望まなかった奥ゆかしい洞窟ダイバーたち。その中でメディアによく取り上げられているスキンヘッドの英国人男性が、リチャード・スタントンさんです。1961年生まれの元消防士で洞窟ダイビングの世界記録も持ち、「ヨーロッパで最高の洞窟ダイバー」とも呼ばれるカリスマ的存在。2004年にも、メキシコのアルパザット洞窟に閉じ込められた人々を救助しています。時には洞窟救助に失敗したり、遺体を回収したことも……。タイの洞窟では生存者を全員救助できて、洞窟ドライバー冥利に尽きたことでしょう。
「私たちはヒーローではありません。ちょっと変わったスキルを持っているだけで、時にはそれを使って社会に還元することができます」というセリフに痺れました。自分が救助されるようなシチュエーションには絶対陥りたくないですが、これからも洞窟ダイバーの方々の素晴らしい活躍を応援したいです。
ほかにも亀を助けた男性、ガチョウを助けた男性、青い鳥を助けた男性など、世界には優しいイケメンがたくさんいます。収入や地位よりも、人徳こそが何よりの宝……。内面の魂の輝きがにじみ出るイケメンと仲良くなりたいものですが、きっと女性側も魂を成長させないと巡り会えないのでしょう……。
辛酸なめ子
イケメンや海外セレブから政治ネタ、スピリチュアル系まで、幅広いジャンルについてのユニークな批評とイラストが支持を集め、著書も多数。近著は「スピリチュアル系のトリセツ」(平凡社)、「辛酸なめ子の世界恋愛文学全集」(祥伝社文庫)、「女子校礼賛」(中公新書ラクレ)など
構成/CLASSY.編集部