名作映画に学ぶ「アラサー世代の働き方」極意5選【映画ソムリエ東「大人女子のための映画塾」】
人気映画からアラサー女性の生き方のヒントを学ぶ連載、今回は大注目のNetflixドラマ『エミリー、パリへ行く』をご紹介します。これは、現代女性のための『ロッキー』とか『あしたのジョー』だと思う。アドレナリンが出て、元気がみなぎってくる。仕事に恋にオシャレ、全部を頑張りたくなる、まさしくそんな女性に向けた観るタイプの魔法と言っても、過言ではありません。
SATCのクリエイターであるダーレン・スターが手がけたことから、パリ版SATCと配信当初から話題をさらい、世界中で人気を博しました。公式SNSのフォロワーも間もなく100万人に到達しそうな、今最も勢いのある作品。おしゃれが好きな女性ならば、確実にハマれるはずの現代女性に向けられた応援歌です。1話30分、合計10話で、サクッと観れてしまうのも嬉しいです。
物語はシンプルで、流行に敏感な今ドキなアメリカ人女子が、異国の地フランスへの転勤をきっかけに、恋も仕事も友達関係も、持ち前の明るさで何もかも乗り越えていく様子を描いたもの。そして衣装は『セックス・アンド・ザ・シティ』や映画『プラダを着た悪魔』でも衣装デザインを担当したパトリシア・フィールドが担当。(話題すぎて衣装は現在売り切れ続出!)
プラダとSATCとパリが融合した本作を見ないなんて、誕生日にケーキを食べずにスムージーで終わらすのと同じくらい勿体無い!今回はパリのマーケティング会社で働く彼女の「インスタ世代のニューアイコンに学ぶ働き方の極意5選」を紹介します。
インスタ世代のニューアイコンに学ぶ!働き方の極意5選
1.究極のポジティブ思考
エミリー女史に驚かされたのは、根っからの明るさ。おそらくここ日本で、張り合えるのは松岡修造さんくらいしかいないと錯覚させるほど、いつもポジティブなんです。だからこそ、物怖じせず、人に「どう思われるか?」を気にせず飛び込んで、仕事のコマをどんどん進められる様子が描かれます。ましてや、一度無視されても、お構いなしに話しかけ、相手を呆れさせるほど。でも、それができたら勝ちです。印象に残っているのですから。自分に自信を持つことは、なかなか難しいですが、せめても、自信のあるフリをして生きて、チャンスをものにしたいものです。
2.「やらない後悔より、やった後悔」を選択する思考
「あなた、何か良いアイディアはあるの?」という上司からの問いに対して、何も考えてなくても「あります!」と答えて後から考えるのがエミリー流。これ、ドラマの中で何度も出てきました。「何も考えてないのに…なんだこの女!」と当初は驚いたのですが、これが未来をどんどん切り開くんです。大人になればなるほど「できますか?」と問われる仕事に対して、条件提示をしてから返答したり、場合によってはお断りすることも増えていましたが、エミリー女史を鏡にチャンスを逃している自分にも気づけるはず。なにごとも挙手したことから歯車は周りはじめます。
3.ピンチの時こそ発想の転換をする思考
有名ホストのローランド氏が、かつてドライブデートで大渋滞に巻き込まれた際に彼女に言ったセリフ「これ全員、俺が雇ったエキストラ。君と長く一緒にいたいからさ」が彷彿とされる発想の転換の嵐で、失敗した時こそ距離をちぢめるチャンスだと奮闘しまくるエミリー。異国の土地パリで働くことになったピンチの多いエミリーだからこそ、物事は捉えようだと勇気づけられます。エミリーは大事なクライアントとの食事会でレストランの予約が取れていなかったことに当日、お店に行ってから気づきます。まるでそのお店は下見だったかのように堂々とした姿勢で、別の店に連れていくのですが、その彼女の切り替え方にはとくに注目です。
4.どんな場所にも爪痕を残すぞ的な思考
インフルエンサー女子でもあるエミリーならではの思考法なのかもしれませんが、パーティーに行っても、出会いの場に行っても、収穫を得ないで帰ってくることがほぼありません。必ず誰かに話しかけたり、友達を作ったり。行く先々で何か相手の印象に残ることをします。自分の1日を決して無駄にしないという姿勢は、人生において重要であると気づきます。普段行かない場所に行ったら、買い物でも、近くにいそうな人に連絡するのでもいいので、爪痕を残す姿勢で自分の人生を充実させていきましょう。
5.女としての魅力には頼らない思考
エミリーは、正直かなりの可愛らしさを持った女性。ですが、その事実に一切頼っていないということが本作の魅力をさらに引き立てています。可愛い、キレイといった外見的魅力では、本当の意味で人を繋ぎとめることが難しいという事実に気づいているようです。だからこそ、エミリーの場合は仕事においてのクライアントになりますが、相手の立場に立った企画や、ユーモアのあるアイディアで人を魅了します。
最後に作品の見所を、映画ソムリエのライターがさらに熱く解説!
SNSでなんだか気になる女性を見つけた。彼女の存在が気になって、1年前まで遡って投稿を覗いていた。インスタ女子ならきっとわかる「あのコ、誰?」の高揚感をそのまま真空パックにしたような世界観が漂うのがこのドラマ。まるで深夜にSNSを無限スクロールしている時のような楽しさがあります。1話に1カ所トラブルが起きてるんじゃないか?と言うくらい、事件が起きまくり…なんですが、全部笑顔で吹き飛ばすとにかく明るいエミリーさん。
幾多のエンタメに触れている私ですが、正直ここまで“主人公の葛藤”がない作品は久々です。勿論、ディスってないです。持ち前の愛嬌と頭の回転のはやさで解決に向かうエミリーを見ていると、コロナ疲れも一気にどこかに吹き飛びます。
そして、話題のカラフルな衣装を眺めているだけでモノクロばかりじゃなく鮮やかなお洋服をまとって、出かけたくなります。誰に見せるのでもなく、自分のためにオシャレでありたいと提唱するファッションが今年は話題になっておりますが、自分が幸せになれる服の意義も考えます。
今はなかなか現地に足を運ぶことが難しい状況ですが、全編フランスロケで撮影された作品でパリの空気を感じることができるので、夜のお楽しみにいかがでしょうか。
Netflixオリジナルシリーズ『エミリー、パリへ行く』独占配信中
この記事を執筆したのは
東 紗友美(ひがし さゆみ)
’86年、東京都生まれ。映画ソムリエ。元広告代理店勤務。日経新聞電子版他連載多数。映画コラムの執筆他、テレビやラジオに出演。また不定期でTSUTAYAのコーナー展開。映画関連イベントにゲスト登壇するなど多岐に活躍。
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Instagram:@higashisayumi