【実態調査】コロナによるメンタル不安は約5割!緊急事態宣言後に「労働時間は増加」も

緊急事態宣言が解除されたものの、まだ新型コロナウイルスによる不安が残る現在、感染拡大による緊急事態宣言前後の働き方やメンタル・健康行動の変化を調査。株式会社リンクアンドコミュニケーションの調査によれば、なんと緊急事態宣言後に「仕事なし」「労働時間増加」でメンタル不安が約5割も増加していたんです!仕事時間・勤務形態の違いが健康格差を生み出している状況を、アンケート結果とともに解説します。

コロナうつ、になっていませんか?
<br>写真/CLASSY.2019年3月号
コロナうつ、になっていませんか?
写真/CLASSY.2019年3月号

【働き方の変化】「仕事なし」が増加傾向に

緊急事態宣言後「仕事なし」が9ポイント増の24%に

(図1)仕事の有無の変化 (n=6,302人)
(図1)仕事の有無の変化 (n=6,302人)

コロナ流行前と緊急事態宣言後の1日の時間の使い方をアンケートで調査しました。コロナ流行前には、仕事をしている人が85%、仕事をしていない人が15%でした。それに対し、緊急事態宣言後は、仕事をしている人が9ポイント減の76%、仕事をしていない人が9ポイント増の24%となりました。

※働き方の定義
●仕事時間
フルタイム :勤務時間が6時間以上の方
パート :勤務時間が6時間未満の方
仕事なし :仕事をされていない方(0時間)
●勤務形態
在宅:緊急事態宣言後、勤務時間の半分以上が在宅ワークになった方。
出社:緊急事態宣言後、勤務時間の半分以上を職場で過ごしている方。

コロナ流行後に11%が仕事なしに、フルタイム勤務は16%減

(図2)コロナ流行前に仕事をしていた人の働き方の変化 (n=5,356人)
(図2)コロナ流行前に仕事をしていた人の働き方の変化 (n=5,356人)

コロナ流行前にフルタイムもしくはパートタイムで仕事をしていた人のうち、緊急事態宣言後には11%の方が、なんらかの理由で仕事をしていない状態になっています。また、フルタイムで仕事をする人は、コロナ流行前の88%に対し、緊急事態宣言後は16ポイント減って72%となっています。

フルタイム勤務の3人に1人、パート勤務の2人に1人が在宅ワーク中心に!

(図3)緊急事態宣言後の勤務形態 (n=4,748人)
(図3)緊急事態宣言後の勤務形態 (n=4,748人)

緊急事態宣言後に在宅ワークが中心になった人は、「フルタイム」では36%(およそ3人に1人)、「パート」では54%(およそ2人に1人)となっています。

【メンタルの変化】全体の約45%が「メンタルに不安あり」

(図4)「メンタルに不安を感じる人」の割合 (n=6,302人)
(図4)「メンタルに不安を感じる人」の割合 (n=6,302人)

アンケートで、以下の設問に1つでも該当した方を「メンタルに不安を感じている」と定義しました。
・この1ヶ月間、気分が沈んだり、憂うつな気持ちになったりすることがよくある。
・この1ヶ月間、どうも物事に対して興味がわかない、あるいは心から楽しめない感じがよくある。
・孤独を感じている。
全体では、約45%の方が「メンタルに不安を感じている」ことが分かりました。

「仕事なし」の約5割がメンタルに不安を感じている

(図5)働き方の変化と「メンタルに不安を感じる人」の状況 (n=6,302人)
(図5)働き方の変化と「メンタルに不安を感じる人」の状況 (n=6,302人)

「労働時間が増加した人」のメンタル不安は5割超

(図6)勤務形態および労働時間の増減と「メンタルに不安を感じる人」の状況 (n=4,776人)
(図6)勤務形態および労働時間の増減と「メンタルに不安を感じる人」の状況 (n=4,776人)

全体の「メンタルに不安を感じる」割合(44.7%)よりも、3ポイント以上高いまたは3ポイント以上低いグループで、共通する特徴がみえてきました。その特徴は、以下の通りです。
●メンタルに不安を感じている人が多い(全体より3ポイント以上高い)
・緊急事態宣言後に仕事をしていない方
・緊急事態宣言後に労働時間が増加した方(フルタイム/パート、在宅中心/出社中心に限らず)
●メンタルに不安を感じている人が全体より少ない(全体より3ポイント以上低い)
・緊急事態宣言前後で労働時間が変わらない方(フルタイム/パート、在宅中心/出社中心に限らず)
このことから、コロナのような大きな社会変化の中でメンタルに不安を感じることが多いのは、「仕事をしていない」「社会変化の中で労働時間が増えた」人であると推察されます。

【飲酒の状況】メンタルに不安のある人の飲酒が増加

適量を超えて飲酒している方は、全体で約11%

(図7)飲酒量の分布 (n=4,366人)
(図7)飲酒量の分布 (n=4,366人)

飲酒量は、純アルコール量で0~2g/日の「ほぼ飲まない」、2~20g/日の「適正飲酒」、20g/日以上の「適量超え」(※)の3段階に区分しました。適量を超えて飲酒している方は、全体で約11%でした。
※1「健康日本21」では、「節度ある適度な飲酒」量を、1日平均純アルコールで約20g程度としています。

「仕事をしなくなった」人で、適量を超える飲酒が1.4倍に増加

(図8)働き方と適量を超えて飲酒している割合の変化(1月を「1」をしたときの変化)
(図8)働き方と適量を超えて飲酒している割合の変化(1月を「1」をしたときの変化)

全体を見ると、適量を超えて飲酒している人の割合は1月~5月にかけてほぼ変化しませんでした。ただ、「コロナ流行前は仕事をしていたが、緊急事態宣言後に仕事をしなくなった」と回答した方では、適量を超えた飲酒は約1.4倍に。「フルタイムで在宅ワークになり、労働時間が増加」と回答した方は約1.2倍となりました。因果関係までは分かりませんが、特にメンタルに不安を感じている層と、適量を超えて飲酒している層が同じであるという結果になりました。反対に、パートで「労働時間に変化がない」方は約0.8倍と減少しています。

【歩数の状況】運動不足が引き続き増えている!

4~5月で「3,000歩未満」が3割に迫る!平均歩数の半分以下

(図9)歩数の分布の変化 (n=4,676人)
(図9)歩数の分布の変化 (n=4,676人)

歩数を、日本人の平均歩数(※)の半分未満となる「3,000歩未満」、「3,000~6,000歩」、「6,000~9,000歩」、「9,000歩以上」の4段階に区分し、期間による変化を分析しました。「3,000歩未満」の方は、コロナの影響がさほど大きくなかった1月では約9%だったのに対し、2~3月で増え始め、4月には約25%、5月には約29%と急増しています。
※ 平成29年度「国民健康・栄養調査」の結果では、日本人の平均歩数は6,322歩です。(20~64歳の平均歩数は7,121歩)

「仕事なし」の人の約4割が3,000歩未満

(図10)働き方と歩数の状況 (n=4,675人)
(図10)働き方と歩数の状況 (n=4,675人)

パートの「在宅ワーク」では、3,000歩未満が圧倒的に多い!

(図11)勤務形態および労働時間の増減と歩数の状況 (n=3,847人)
(図11)勤務形態および労働時間の増減と歩数の状況 (n=3,847人)

働き方の違いによる歩数を分析したところ、以下の特徴がみられました。
●全体よりもさらに歩かなくなった(3,000歩未満の割合が全体より3ポイント以上高い)
・緊急事態宣言後に仕事をしていない方
・パート勤務で、緊急事態宣言後に在宅ワークが中心になった方
・フルタイム勤務で、緊急事態宣言後に在宅ワークとなり、労働時間が増加した方
在宅ワークが中心になった方は、全体に比べて歩数が減る傾向にあります。ただし、在宅ワーク中心であっても、フルタイムで、労働時間が以前と比べて変わらない、もしくは減少した人では、3,000歩未満の割合が全体と同程度であり、ウォーキングなどの歩数を増やすための行動がとれていた可能性があります。一方、同じ在宅ワークでも、パートの方では、3,000歩未満の割合が圧倒的に高くなっています。

■専門家からの意見

東京大学大学院 准教授 近藤 尚己先生

フルタイム・パート勤務や緊急事態宣言期間の在宅ワークの有無など、働き方の違いと健康行動との関係が詳細に分析されている貴重なデータです。歩数が4月、5月と徐々に減っており、不安がある人は半数に上る心配なデータです。特に、緊急事態宣言後にパート就労になったり、仕事をされていない方の不安や歩数のデータがよくありません。また、在宅ワークでは通勤時間が減る分、運動に費やす時間を確保できそうですが、実際は歩数が減っています。適量以上のお酒を飲む人に仕事がない方が多いのも気になります。
仕事は生活の糧を得る手段、というだけでなく、生きがいや将来への安心、ステータスなど、人生にとって大切な物事と関係しています。運動しようと思うのも、将来への希望や安心があってこそ。企業の経営者や健康管理担当者には、まず労働時間が増えている方々の不安が強まっている可能性がありますので、ご配慮いただきたいです。さらに、フルタイムの職員だけでなく、パート勤務の方々の心身の健康へも、特段の気遣いをお願いしたいと思います。勤務の負担を減らす、個別の面談を強化する、在宅ワークで孤立させないなどの対策をしていただきたいと思います。

◆近藤 尚己 先生(医師・医学博士)
・社会疫学者 ・公衆衛生学研究者
・東京大学大学院医学系研究科准教授(保健社会行動学分野、健康教育・社会学分野主任)
・日本老年学的評価研究機構理事
・日本疫学会代議員
・日本プライマリケア連合学会代議員
・健康の社会的決定要因検討委員会副委員長

調査を行った、株式会社リンクアンドコミュニケーションとは?

「社会の健康課題を解決し、自然に健康になる世界を創る」をミッションとし、IT×専門家ネットワークで「専門家がもっと身近にいて健康をサポートするシステムの構築」を目指しているヘルステック企業。全国で約1万人の管理栄養士・栄養士のネットワークをもとに、食と健康、栄養分野のリーディングカンパニーとして、食を中心とした健康アドバイス事業、健康情報の発信事業に取り組んでいます。<提供サービス>健康アプリ「カロリーママ」、健康経営支援アプリ「カラダかわるNavi」など。

構成/CLASSY.ONLINE編集室

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