【漢字】「貼付=はりつけ、てんぷ」は間違い!実は意外に読めない漢字3選

前回に引き続き、CLASSY.

前回に引き続き、CLASSY.ONLINEでは、やさしそうではあるけれど、実は「読み間違いがちな漢字」を取り上げていきます。

1.「一人区」

まずは、やさしいところから。問

まずは、やさしいところから。問題文は「選挙戦の勝敗のカギを握るのが一人区だ」。この「一人区」は何と読むでしょうか?

春の統一地方選も一段落(イチダンラク)しましたが、その選挙で使われる言葉です。意味は分かりますね。「選挙において定数が1の選挙区」です。これ「ひとりく」と読んでいませんか。正しくは「いちにんく」です。実際、「一人」は「ひとり」と読む場合と、そのまま「いちにん」と読む場合があります。「一人」と単独では「ひとり」と読むのが一般的で、多くの熟語でも「一人娘(ひとりむすめ)」「一人芝居(ひとりしばい)」と読みます。それに対して、この「一人区」だけでなく、「一人前(いちにんまえ)」や「一人称(いちにんしょう)」のように「いちにん」と読むものも、少数派ではありますが存在します。
なお、「ひとり」の読みは、あくまでも漢字の「熟字訓(熟語に対する特別な訓読み)」です。したがって、「1人」と書いて「ひとり」と読ませるのは適切ではありません。そのような場合は「一人」と漢字で書くべきでしょう。

2.「凡例」

次は、辞書の最初のほうのページ

次は、辞書の最初のほうのページで目にするこの言葉です。「使用法については本書の凡例を参照してください」。この「凡例」は何と読むでしょうか?

これはもう、「ボンレイ」と読み間違う人が多いと思います。正しくは、「ハンレイ」です。
「凡例」とは、「書物の初めにあって、その編集方針・構成・使用法などを箇条書きにして示した部分」のことです。「凡」の音読みには「呉音」の「ボン」と「漢音」の「ハン」読みの二つがあるのですが、「平凡」「凡退」「非凡」など多くの熟語は「ボン」と読みますので、これにつられて「凡例」も「ボンレイ」と読んでしまいがちです。
なお、字そのものは違いますが、同じ構成部分を持つ「汎」という字があり、「汎用コンピュータ」などと使います。「ボンヨウ」ではなく「ハンヨウ」ですので注意しましょう。

3.「貼付」

最後は、一見すると難問らしくな

最後は、一見すると難問らしくないこの言葉です。「所定欄に領収書を貼付してください」。この「貼付」は何と読むでしょうか?

これを何の迷いもなく、「テンプ」とか「はりつけ」とか読んでいた方はいませんか。実はこれ、「チョウフ」と読むのが正解です。まず、常用漢字の「貼」には、「チョウ/はる」の読みがあります。「貼り付ける」と送りがなを伴えば、「はりつける」と読みますが、「貼付」なら熟語ですから音読みが原則となります。それなら「チョウフ」としか読めません
ところが、「添付」という目にすることが多い熟語があります。「(補足となるものを)そえること、つけくわえること」という意味も近く、また、同じ構成部分を持つ「店」という字の音読みに「テン」があることなど理由で、「貼付」を「テンプ」と誤読するようになったと想像できます。実際、私の周りでも「テンプ」と読む人がいます。
なお、多くの国語辞典でも、誤用のこの読みを見出し語に出し、「チョウフの慣用読み」と示しているものもあります。「慣用読み」とは誤読が一般化したものでから、まだまだ正しい読み「チョウフ」と読んで欲しいものです。

いかがでしたか。うっかり読み間違いしていたものはありませんでしたか?
そういえば先週、「サイゼリヤ警察」という言葉を初めて知りました。Twitter等で、イタリアンレストラン「サイゼリヤ」を誤って「サイゼリア」としてしまった人に対してダメ出しをする、あれです。私も実は「言葉警察」あるいは「漢字警察」です。授業中やテスト採点などは仕事ですから、まあご容赦いただくとして、日常生活においても、周囲の言い間違いや読み間違いが気になって、思わず指摘してしまうのです。皆様、本当にごめんなさい。では、今回はこのへんで。

《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「難読漢字辞典」(三省堂)
・「100ページでテッパンの漢字力」(青春出版社)

文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)

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