多くの漢字の中でも最も基本となるのが、小学校1年生で習う「漢数字」(一・二・三……)でしょう。その「漢数字」を含む読み間違えやすい言葉を紹介しています。今回は後編です。
1.「六」 六義園
「六」からは、「六義園」。例文は「六義園に観光で訪れる」です。さて、何と読みますか?
正解は「リクギエン」でした。常用漢字表の「六」の音読みは「ロク」のみですが、これは呉音(最も古く日本に伝わった中国南方系の音)です。この他に漢音(唐の都である長安の音)の「リク」があります。「六義園(リクギエン)」とは、東京都文京区にある回遊式庭園ですが、江戸元禄期に柳沢吉保(よしやす)がその別邸に造った名園です。
2.「七」 七五三飾
「七」からは、「七五三飾」。例文は「玄関の七五三飾を用意する」です。さて、何と読みますか?
正解は「しめかざり」でした。「七五三飾」とは、新年を祝って入口に張る「縄(=七五三縄)」のことです。「七五三」の字を当てたのは、横繩の部分に、「藁(わら)」の「茎(くき)」を、右から「七筋・五筋・三筋」と垂らすことに由来しているという説があります。同じ読み方で、「注連飾」と書く場合もあります。
3.「八」 八百万
「八」からは、「八百万」。例文は「八百万の神々をまつる」です。さて、何と読みますか?
この場合は、普通に「ハッピャクマン」と読むのではなく、「やおよろず」と読んでください。「具体的な数量ではなく、「数えることができないほど数の多いこと」を表します。「八百屋(やおや)」「八百長(やおちょう)」なら、簡単に読めたでしょうか。
4.「九」 九十九折
「九」からは、「九十九折」。例文は「九十九折の山道を歩く」です。さて、何と読みますか?
正解は「つづらおり」でした。「何回も折れ曲がった坂道」のことです。古典文学や近代の小説などではよく登場する言葉ですね。この「つづら」とは「つる草」の総称「葛(つづら)」のことですので、「葛折」とも書きます。こちらのほうが難しいかもしれませんね。
5.「十」 十把一絡げ
「十」からは、「十把一絡げ」。例文は「十把一絡げにして扱う」です。今回一番の難問かもしれません。意味は、「いろいろな種類のものを無差別にひとまとめにして扱うこと」。さて、何と読みますか?
「じゅっぱひとからげ」と読んだ方がいると思います。正解は「じっぱひとからげ」です。もともと常用漢字表に示される「十」の音読みは、「ジュウ・ジッ」のみであり、「ジュッ」はありません。ですから「十点」「十歳」も、それぞれ「じってん」「じっさい」と読みました。ところが、言葉は生き物ですから、時代とともに「じゅってん」「じゅっさい」と読む人が増えてくると、本来誤用であるものが認知され始めます(2010年改訂の常用漢字表でも「十」の備考欄に「ジュッとも」と書き加えられました)。現在は、むしろそう読む人のほうが多いことでしょう。今や時刻の「十分(10分)」も、「ジップン」ではなく「ジュップン」と読むアナウンサーもいるくらいですから。しかし「十中八九(ジッチュウハック)」とか、この「十把一絡げ」のように、古くから成語として使われてきたものは、本来の読み「ジッ」で読むべきだと考えます。
いかがでしたか? ではまた次回。
《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「難読漢字辞典」(三省堂)
・「新字源」(角川書店)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)
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