CLASSY.ONLINEの漢字連載、前回の記事では、小学校1年生で習う「漢数字」(一・二・三……)の「部首名」を特集しました。簡単に読み書きできても、部首名となると難しかったとの声をいただきました。
今回は、その「漢数字」を含む「難しい読み」を紹介します。前半の「一から五」をピックアップします。
1.「一」 一寸出掛けてくる
「一」 からは、「一寸出掛けてくる」です。さて、何と読みますか?
正解は「ちょっと」です。この「一寸」は、普通「イッスン」と読んで、「一尺の十分の一(約3.03㎝)」を表します。「一寸先は闇」とか「一寸の虫にも五分(ゴブ)の魂」のことわざでもおなじみです。しかし、ここでは「程度がわずかであって、問題にするほどではない」というニュアンスで、「ちょっと」と読む「副詞」です。「一寸」全体で「ちょっと」と読むわけですから、「熟字訓」です。
2.「二」 二合半の酒
「二」からは、「二合半の酒」です。さて、何と読みますか? そのままの音読みではなく、これも「熟字訓」で読んでください。
そのまま読めば「ニゴウハン」ですよね。もちろん、それも正解なのですが、熟字訓として「こなから」と読むのが正解です。別の表記法として「小半」というのもありますが、これも「こなから」です。「二合半(小半)」とは「(半分の半分で)四分の一」のこと。お酒なら一升の四分の一ですから「約0.45ℓ」ということになります。
3.「三」 玄関の三和土
「三」からは、「玄関の三和土」です。さて、何と読みますか? これも「熟字訓」です。
正解は「たたき」でした。「たたき固めて仕上げた土」の意味ですが、現在では「コンクリートなどを用いて仕上げた土足のスペース」を多く指します。
4.「四」 庭園の四阿
「四」からは、「庭園の四阿」です。さて、何と読みますか? これも「熟字訓」です。
正解は「あずまや」でした。「四阿(あずまや)」とは、庭園や公園内の休憩所として使う「軒(のき)を
四方へふきおろした壁のない建物」のこと、「東屋」と書くこともあるので、「都から見て東国地方のひなび
た家」であることがわかります。漢字「阿」には「家の棟(むね)・軒(のき)」の意味があります。
5.「五」 騒音が五月蠅い
「五」からは、「騒音が五月蠅い」です。さて、何て読みますか? これも熟字訓です。
正解は「うるさい」でした。「うるさい」は「煩い」とも書きます(「煩わしい」と送り仮名が変われば「わずらわしい」)。本来は、「音が強かったりして不快に感じる」という場合に使いますが、「視覚的な不快感」の表現にも転用します。「五月(ただし、旧暦ですから梅雨時です)」になると、どこからともなく表れて、「うるさい」くらいに活動を開始するわけですから、この字を「当てた」のもわかる気がします。なお、「はえ」は「蠅」以外に「蝿」の字体をよく見かけますが、正式な字体は「蠅」のほうです(この字の筆順はパズルのようですから、興味のある方はぜひ調べてみてください)。
いかがでしたか? 次回は後半の(「六から十」)を配信予定です。
《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「難読漢字辞典」(三省堂)
・「新字源」(角川書店)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)
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